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カカシの行く末

 歳を重ねていけば、言葉に深みが増していくものだと思っていた。そして、説得力のある言葉を紡ぐ大人になることが小さい頃からの憧れだった。
 最近気づいたことがある。場に合わせて心にもないこと口にすれば言霊が失われていくといくことに。その言葉ことばには説得力が微塵も宿らないことを。
 空っぽな人間性とそれと同じく空っぽな言葉のみが残ってしまった。
 自分を偽るための言葉は灰のようなもので熱を失いひと息で消え去ってしまう。相手も自分をも騙し、円滑な関係を築くための礎としてはひどくもろく、いくら言葉を重ねたとて固まらずいつか崩れてしまう。そんな言葉に頼ってきたばかりに醸成されるべき人間性を失い、いま存在するのはただのカカシ。
 理解してもらえないことを恐れ、自分の話を避けてきた。特別だと思っていた感性が人にとってはただのガラクタだと認められるのが恐くて月並みな表現しかできなかった。灰を固めてできた関係性だとしてもそれを失うのが恐かった。平気なふりは得意だ。きっとなんとかなる。身につけた楽観的思考。そのさきにあるのは単なる諦観でしかない。死ぬ気で掴み取りたいと思っていた夢ゆめも、笑われるのを恐れているうちに冷たくなってしまった。生命を失ってしまった。
 薄っぺらい言葉を吐くのはもうやめたい。それが役に立つとしても。心から思ったことを伝えていきたい。理解されずに空に漂うだけだとしても。嘘も方便だと教えるような、正直者が揶揄されるような世界でも、たったひとつ、自分にしかない言霊を信じてこれから生きていきたい。
 私は嘘をつくのをやめた。

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岩上魁星(IwagamiKaisei)
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