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小説

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かいたものたち
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#短編小説

さようならという言葉に

さようならという言葉に

あなたにはもうすでにバレているかもしれない。私があなたに話しかけている時は、うまくいってない時だ。人は鬱屈している時の方が創造力が高まるという。売れっ子の小説家はどうか知らないが、私が書くということはそういうことだ。
 人生に飽き飽きし、斜に構えたままで、数十年。気づけば仕事のできない人間になっていた。根は真面目なのか知らないがそんな自分で開き直ることもできず、また、変わろうとする気力を持つことも

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透明なかし

透明なかし

 

「雪が降る魔法って知ってる?」
「知らない。」
「てるてる坊主を逆さにすると、雨が降るっていうじゃない?そのてるてる坊主の中に、金平糖を入れておけば、雪が降るんだって!」

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家を出て5分と経たないうちに、背中からじわっと汗が出てくるのを感じる。自転車のペダルを漕ぐたびに、汗の出るスピードも加速していくように感じた。
両脇に大木が並ぶ道を駆ける。セミが地を揺るがすくらい

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