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「苦手意識を持たずに、導かれるように仕事を受けることで道が拓けることがあります|倫総合法律事務所 弁護士 宮川 倫子先生へのインタビュー」

弁護士の業務は「依頼者の人生の局面」を支えるために緊張感が続くことが多く、ストレスも抱えやすいものです。しかし、依頼内容によっては問題解決までにじっくりと時間をかけることが許されないため、猛スピードで打ち合わせや起案などを進めていく必要があります。こんな時、ベテラン弁護士はどのようにストレスに向き合っているのでしょうか。

今回のインタビューは、Amiの臨床心理士スタッフとの交流も深い弁護士 宮川 倫子 先生です。犯罪被害やハラスメント対応、相続、宗教法人に関するご相談など、一般民事分野を中心に幅広く対応している宮川弁護士にストレスの向き合い方についてお聞きしました。ぜひご一読ください。

(聞き手:岩田いく実)


「先生のご経歴を教えてください。」

1994年に早稲田大学法学部を卒業後、1996年に司法試験に合格しました。2006年に倫法律事務所を設立し、2010年に今の事務所名である倫総合法律事務所へ変更しました。

私には司法修習の途中、試験に集中してきた反動があって疲れが出てしまった経験があります。今でこそ司法修習の途中に、空白期間がある人は多いですが、私の頃は大騒ぎになってしまいました。体調管理の大切さを感じたので、3年間きっちり休んでその後復帰しました。この時の経験は今に活きていて、仕事と休暇のバランスをとても大切にしています。

現在は相続などの一般民事を中心に広くご相談をいただいております。犯罪被害者に関することは以前から積極的に受けてきましたが、最近は顧問を務めている企業側からの人事に関係するご相談なども多いですね。

「依頼者をご紹介いただくことで、自分にあった業務に注力できるようになりました。」

■普段の業務の中で、どのようなときにストレスを感じますか

この仕事は常にストレスがありますね。タイミングを見ながら一気に進めなければいけない業務も多いですし。時間に限りがある業務が複数重なると、集中力を維持し続ける必要があります。

たとえば、高額の相続財産がある遺産分割協議や、労務問題が重なったことがあるのですが、相続税は納付期限があるし、労務問題は時間がかかり過ぎると会社内の士気が下がってしまいます。

どの業務も「最優先」にこなす必要があるので、緊張感もあるしストレスも抱えますね。特に相続では、弁護士1人では問題の解決ができないため、司法書士や税理士などの専門家のお力も借りる必要があります。迅速に問題の解決に向けてチームのように動いてもラうときは、業務量も増えるので大変です。

でも、休む時は休むと決めているので、営業時間外はスパッと気持ちを切り替えて帰宅します。

■犯罪被害者支援に携わる上では、依頼者とのかかわり方にどのような工夫を行っていますか。

依頼者とのかかわり方では、まずは「事前にしっかり準備すること」を大切にしています。資料も準備し、簡潔に伝えられるように工夫していますね。

被害の直後なのか、少し時間が経過しているのかによっても依頼者の心理状態は異なりますが、いずれにせよパニックの渦中にいらっしゃるので、「どうしてもこれだけは伝えたい」という部分のみを説明し、読みやすいように紙でもお渡ししています。

犯罪被害者の方々は刑事事件の流れに沿って回答を出していく必要があります。できる限り丁寧に思っていることなどをヒアリングしますが、どうしても時間の制約があります。しかも、被害のご内容によっては家族や友人にも話せません。

示談や刑事裁判への参加をどうするかなど、短期間で考えていただく必要があるため、民事とは違う知識や経験を活かして丁寧に業務にあたるように注意していますね。

■どのようなきっかけで犯罪被害者支援に携わるようになったのでしょうか。

犯罪被害者支援とは、一体どのように行うべきなのか何も確立されていない時から携わってきました。

女性弁護士が重宝される分野でもありますから、協力しやすかったこともきっかけの1つです。女性って多かれ少なかれ、性的に嫌な目に遭うことってありますよね。

だから弁護士という資格を生かしつつ、寄り添えるような業務をやりたいと感じて積極的にかかわってきました。

元々私は「おせっかい」な性格なんですよ。小学生の頃から、教師に頼まれて友人の喧嘩を仲裁していました。弁護士に向いていたんでしょうね。困った方々の役に立ちたいと思う性格が、この犯罪被害者支援にも活かされていると思います。

■仕事が続く日々の中で、ストレスを抱えない工夫はどのようにしていますか。

弁護士歴も長くなり、過去の依頼者や協力してくださった他士業の方などから、「こんな相談を希望する方がいるんだけど…」とご紹介をいただくようになりました。今依頼の多くはご縁からいただくことが多いんです。

私の性格や業務内容を把握した上で紹介してくださるので、スムーズに法律相談から受任まで進めることができています。自分に合った仕事がたくさん来るようになったので、ストレスは駆け出しの頃よりも随分減りました。

弁護士といっても「接客業」ですよね。今弁護士数も多いですから、なるべく依頼者と私とのミスマッチは起きないようにしたいので、ご紹介という方法はとてもありがたいです。

「DVの相談をきっかけに、弁護士として大きく成長しました。がむしゃらに頑張っていると、さまざまな専門家とともに乗り越えることができます。」

■これまでの事件の中で、印象に残っているものがあればお聞かせください。

独立したばかりの時に、身体中に酷いアザがある状態のDV事件を受任しました。女性側からのご相談です。被害者参加や犯罪被害者向けの支援もあまりまったく整っていない頃でした。

すでに依頼者の女性は末期ガンで、自分が入院してしまったらお子さんが被害に遭ってしまうと考え、きちんと通院できていませんでした。依頼者の母がご相談に来てくれたんですね。

当時は警察もまだ民事不介入としてDV問題に積極的に関与してくれず、シェルターにも入れなかったんです。そこで、DVの実務本を執筆されていた弁護士に直接連絡したんですね。アドバイスをもらいたかったんですが、「根性でしっかりやりなさい!警察を押し切りなさい!」と檄をもらいました。

また、児童相談所に子どものことをどうするか相談したら、児童相談所の課長や、福祉関係者が当事務所に来てくれたんですね。そこで、「誰かが中心になって解決に向けて動けないか」と掛け合ったところ、児童福祉士の方に「先生弁護士なんだから、中心になってやってください」と言われたんです。

こうした出来事があって、「そうだ!私がやんなきゃ!」と開眼したんです。

警察を押し切り、まだ支援体制ができていない中で福祉機関と情報を共有し、提訴準備を進めました。残念ながらこうした動きの途中で依頼者は亡くなられたんですが、「私が中心になってやる!」というきっかけになりました。

警察や福祉機関の動きを待つのではなく、自分から働きかけると、さまざまな方が協力してくれて道が拓けたんです。

■DV問題などを扱っていると、脅迫や暴言を受けるなどもあるとお聞きしたことがあります。こうした場面は経験されましたか。また、ストレスは抱えませんでしたか。

暴言はほとんど経験が無いのですが、脅迫はありますね。当事務所は1階にあるのですが、男性弁護士からも「怖くないの?」と聞かれたことも。でも、怖いと感じたことはないですね。

■女性弁護士だからこそ感じた恐怖はありますか。

ないですね。男性弁護士も女性弁護士も、依頼者対応で感じるストレスは同じのように感じます。ストーカーされたり、依存されたりといったことは、男性弁護士・女性弁護士のいずれからお聞きしたことがあります。依頼者とは適度に距離を保つことは、性別問わず多くの弁護士が悩んでいる課題なのではないでしょうか。

■宗教法人に関する業務もお受けされています。一般民事とは異なる業務のように感じますが、業務にあたる上で心がけていることがありますか。

独立前に勤務していた事務所が宗教法人の業務を扱っていたこともあり、実務がある程度わかっている状態で独立したので、今も顧問として携わることができています。ただ、ご依頼の内容としては宗教法人独自のお悩みに限ったものではありません。不動産に関するお悩みなども多く、一般民事分野と同じような問題もあります。

心がけていることとしては、仏教については元々関心もあったんですが、立正大学の科目を新型コロナウィルスで時間があったときに履修したんですね。仏教は奥深くて本当に面白い世界だなと思って学びを深めました。この時のご縁があって、今夏仏教を学ぶ方々と一緒に海外旅行をすることになりました。

宗教法人の業務に限った話ではなく、依頼者についてより深く理解するためには、やっぱり業務外で独自に勉強を続けることが大切ですね。そこから縁が深まり、広がることも多いです。

「理想も大切ですが、求められることで成長することもあります。前向きにチャレンジを続けていきましょう。」

弁護士になる時は、知的財産をやったり英語を生かした業務をやりたい…と理想を掲げていたんですが、振り返ってみると昔の理想像とは違う業務をやっています。仏教に深い関心を持つとも思っていませんでしたしね。

依頼者から求められる業務を一生懸命こなしてきたことで、今の自分があります。悩むことも多いですが、アドバイスが欲しい時は、色んな人に自分から直接声掛けをして、教えてもらうことも多かったんです。苦手意識を持たず何でも受けて前向きにチャレンジしていると、成長できると思います。

特に弁護士は教えることを楽しんでいる人が多いですから、思いきって何でも聞いてみることがおすすめです。私も過去に本を執筆しているのですが、面識のない弁護士から質問を受けることがありますよ。悩んだり、困っていたらまずは遠慮なく聞いてください。

また、もしもストレスを感じたらよく休んでください。休まないまま無理を続けると、倒れてしまって依頼者にも大きな負担を強いてしまいます。休むことは勇気が必要ですが、ぜひ日頃の働き方を見直すなどの工夫をして、プライベートの時間も大切にしてくださいね。

終わりに

今回は、被害者支援をはじめ幅広い分野で活躍されている宮川 倫子先生へのインタビューでした。弁護士は様々な分野で活躍できる一方で、いずれの分野で活躍するのかは常に悩ましい課題です。宮川先生のお話には、このような課題を解決するヒントになるお話があったのではないでしょうか。

Amiではストレスや悩みを抱えた先生方向けにカウンセリングを提供しております。国家資格を有するだけでなく、日弁連や各弁護士会にてメンタルヘルス研修経験があるカウンセラーや弁護士業務に精通したカウンセラーがお話を伺いますので、お悩みの方は是非ご検討ください。

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