大学教授になって英語を教えよう!:セカンドキャリアとして大学教員を目指す
セカンドキャリアとして大学教員を目指すには
実業界や公務員の世界からセカンドキャリアとして(あるいはサードキャリアなどとして)大学専任教員への転向を目指すというキャリアパスは、実際のところこうすればおそらく行けるという正統的なパスというか道筋がありません。それぞれの人に応じたキャリアパスを考えなければなりません。この意味では、英語、あるいは英語教育関係の大学院から進む純粋アカデミアでのキャリアパスから比較すると、転向組のパスは一見して極めて厳しいように見えるかもしれません。
ただし、そこは考えもので、転向組の人には、大学院経由のアカデミア正統派のキャリアパスから上がってくる人が身に付けることができない能力を持っているケースが結構多いのも事実です。例えば、アメリカやヨーロッパの有名なMBAコースを修了し、ビジネス界で日々英語を使ってバリバリ仕事をしてきた人を考える場合、単に英語圏の大学院に行って、英語そのもの、あるいは英語教育の研究をした人に比べれば、はるかにレベルの高い英語力を持っているケースも多いと思われます。
増加する実務家教員の採用
そして、大学によっては、公募の際に、そのような実業界で働いた経験のある人材を、初めから意図的に募集するというケースもあります。実は文部科学省も、政策としてしきりに実務家教員の採用をするようにと大学に働きかけています。この傾向は今後も続くと考えられます。
これは私の過去の経験に基づいての話になりますが、英語関係の組織内でビジネス英語や、実際にビジネス界で働いた経験のある方という条件で募集したことがあります。実はこのような人事の場合、なかなかいい人材が応募してきてくれません。英語そのものや英語教育を専門とする応募者の方で、たまたま研究対象にビジネス英語を選んだことがあるというような方が応募されることが多いのですが、実際の国際ビジネスの実務はほとんど経験がなく、また知識もないという方が大半でした。過去に国際機関で英語を使って働いていたという触れ込みの方などもいたのですが、専任職ではなく職務上の業績の記録もほとんどないというケースがありました。
ですので、現役で第一線に立って国際的なビジネスに関わっておられた方にセカンドキャリア、あるいはサードキャリアとして大学教員になっていただくことは、日本の大学での英語教育にとっても大きなプラスになると考えています。
学位について:修士号レベルは必須
世界的に有名なMBAコースに在学してMBAを取得した場合には、いわば大学院修士課程同等の学歴になりますので、もしも募集条件に博士号の取得までの条件がなければ応募できるかもしれません。応募条件に、「博士の学位を有する者、またはこれに準ずる業績を有する者」という記載があるかもしれませんが、ここで「ああ、自分には博士号がないから応募は無理だ」と考える必要はありません。たとえば、修士号やMBA取得後にかなりの研究業績をあげた、あるいは職務上の業績を十分にあげた場合には「博士号に準ずる業績」を有していると見なされる可能性があります。この場合には応募してみる価値はあると思います。
それでは、大学側で応募の条件に「博士の学位を有する者」としか記載しなかった場合、どういうことになるでしょうか。応募する方々からすれば、博士号はもっていないもののそこそこの研究業績があるとしても、この文言で応募を諦めるでしょう。そうすると、本来は博士号はもっていないもののキラリと光る人材があったとしても、そういった人は応募しません。大学側としては募集の結果、ほとんど応募がなかった、あるいは博士号はもってはいるもののあまり研究業績もなく模擬授業をさせてもパッとしない人ばかりだったということになってしまいます。ですので、ある種の安全弁として「またはこれ(博士の学位)に準ずる業績を有する者」という文言を入れているのです。
ベターなのは後期博士課程に行くこと
やはり、ベターなやり方としては、後期博士課程のある大学院に進学して博士号を取得するのがベストでしょう。なお、今日では社会人が在学できる大学院も増えています。授業が夜間に実施されたり、土曜日などに実施されたりで、実社会で働く社会人にとっても通いやすくなっています。また、授業料についても優遇があるケースがあります。たとえば標準的な修学年限を3年とし、たとえ修学が4年や5年かかっても授業料は3年分でよいとするようなシステムをとっている大学もあります。このような社会人優遇情報も含めてしっかりと大学院情報をサーチしてみてください。
大学院にとって日本人応募者は優良顧客
実は正直な話、日本の大学の大学院は学生の応募が少なく、大変苦労しているのが実情です。国立大学でさえ、大都市の大学院は定員を充足しているかもしれませんが、少し大都市圏から離れれば定員を満たしていない大学がほとんどです。私立大学についても同様でしょう。一見大学院生が多いように見える場合でも、ほとんどがアジアなどからの留学生というケースも多いと思います。しかも留学生は、必ずしも日本語能力が充分ではありませんので、大学院の担当教員は大変苦労をします。日本語での論文の書き方から指導しなければならない、また英語で論文を書いてもらうにしても、日本語以上に英語能力が問題であって、英語論文の指導で「日本語で」説明しても要領を得ないし、一体どのように指導すればいいのだろうと困っている先生方も多いと思います。そういうところに日本人が進学すれば、おそらく丁寧に指導してくれるのではないかと思われます。
ここだけの話…
なお、国公立の大学ですら都心から少しはずれると、大学院での日本人学生の獲得に苦労しています。この意味では広き門です。皮肉なことですが、給与などの点から職を得るのは私立大学がいいと思いますが、逆に学位を取得するために学生として大学院に進学するとすれば、国公立大学がいいでしょう。ただ、社会人学生に対する優遇措置があるかどうかはよく調べる必要があります。
それではまた次回の記事で。