生まれて初めて食べた食用ほおずきと夕食の目玉焼きと。
縁あってやって来た野菜? あるいはフルーツ? という存在と生まれて初めて対面した。
それは一見知っているもので、目の前にあるのは小ぶりの枯れた「ほおずき」なのだ。けれどこれまで知っているものと違っているのは、綺麗にトレーの中にずらりと並べられていたこと。そして枯れているみたいな皮から透けて見える果実らしきもの。
「へぇーっ」と初めて見るものに興味津々で、ではでは早速と、ほおずきの皮のとがったところをで両手の親指と人差し指でつまんで、引っ張ってぴりぴりって乾ききったそのほおずきの皮をむいていくと、中には鮮やかなオレンジ色が!
そこには張りのあるプリッとしたミニトマトのサイズの実があった。
途端にふわっと広がる、なんとも言えない初めて嗅ぐ濃くて甘い香り。例えるならそれは、イチゴと桃が一緒になったような香り。さくらんぼもいるような気がする。部屋中に広がっていくような気がした。
どうも「食用ほおずき」という名前があるらしい。が、私はこれまで縁が無かった。これ本当に食べられるの? 口に入れた途端にうぇっとなっちゃう感じの渋くなっちゃったりするような味ではないの? と少々迷いつつ。
確かに実だけを見ていると本当にミニトマトに見えてくる。
ということで、皮の方をつまんで。なんか可愛い。羽子板の羽根みたい。
ぱくりと口に入れたら根元からころんと取れた。
噛む。
おおっ、果汁が溢れる。
一気に口の中に広がったのは、やっぱりフルーツ? っていう甘さ。いろんな果実の味と匂いがして、初めての味に一瞬フリーズ。脳がビックリしている。
うーん、不思議だ。
トマトのようでもあるけど桃やさくらんぼのようでもあって、なおかつイチゴ感もあるという、濃厚な香りと共に口の中で飲み込む最後まで存在感が強く。まるで濃厚なミックス果汁を飲んでいるみたいで、この味や香りは私の中に初めてのものとして刻まれた。鼻の奥に余韻が残っている。指先にもしばらく続く残り香。
ああ、びっくりした。
残った皮をタコさんウィンナー風に。
この日、私はそれまで知らなかったものをまた知ってしまった。出逢いに感謝。これは二度と忘れない味。
その日の晩ご飯は、ハムとエッグ。「と」というのは、玉子とハムが一緒に一度に焼かれているのではなく別々に焼かれているからハムエッグではないということで。勝手に用意して出してくれるのは助手のY。いつもの白身の外側がぱりぱりになるまで焼かれてるやつ。
あ、ここにも艶々したオレンジ色を発見。
丸くて、黄色味の濃いオレンジと、ぎゅっと詰まった果実の香りと。
用意されたそれを食する、いただく。
私の今日はそんな日。
写真と文 sanae mizuno
https://twitter.com/SanaeMizuno