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[有機農業]橋本力男さんの完熟発酵堆肥

有機農業をやっている僕の従兄弟は橋本力男さんという方に、 堆肥の作り方を住み込みで教えてもらった後に有機農業を始めたそうです。(無農薬野菜と普通の野菜の違いの話↓)


橋本力男さんが有機農業で使っている完熟発酵堆肥とは、堆肥作りの材料を(腐らせて土にする)のではなく、 土を (腐敗)の反対である (発酵)した 状態にするという橋本さんの土作りのコンセプトです。

(出展:[橋本力男]畑でおいしい水を作る↓)

橋本力男さん

橋本力男さんは、 堆肥の技術を学ぼうとして本を読んだけどわからなかったので 、
県の農業センターに行ったら「臭い堆肥が良い堆肥」だと言っていて、
農水省の研究機関に行ったら「堆肥作りなんて何年もかかることを研究しても予算がつかないからやってません」と言われ、

それで何年も自分なりに取り組んで、 結果

堆肥・育土研究所代表
三重大学非常勤講師
三重県農業大学講師
ボリビアに堆肥化技術指導で派遣
フィリピンに堆肥化技術指導で派遣
公益財団法人 ICETT からパラオ共和国に派遣
 (その他、多数の顧問を兼任)

上記のような業務をしている人です。

(堆肥の技術を誰から学んだのか?)

と言うと、橋本さんは

堆肥から教わり・ 堆肥の匂い、温度、色、手触りで得た(五感が教えてくれた)とご自分の著書に書いております。

日本の農業者が 明治時代から延々と続いている勘違い

橋本力男さんは、 日本では明治時代から延々と続いている 「強烈に臭い対比= 肥料としてよく効く?」 という日本の農業者が 明治時代から延々と続いている勘違いを正そうと考えているそうです。

橋本力男さんが2008年ごろに、ある団体に講演を頼まれて 出かけて行った時に、 その公演の前日に「堆肥舎を見て欲しい」と頼まれ、 見に行ったところ、 堆肥舎には牛糞が大量に積んであったそうです。 そして水分の管理がされておらず、 前日が大雨だったので 中に水が入っており腐っていました。

「先生どうですか?」と尋ねられたので(これは[堆肥作り]ではなく[ただのフン処理]ですねー)( いやー腐ってますねー)と直線的にも言えず「あー、ちょっと問題がありすぎますね」という表現に変えて相手に伝えたそうです。

その団体では牛糞を集めて山積みにしておくことが[堆肥作り]だと 勘違いしており 、それでは[ただの糞処理]です。

大量の水分を含んで、腐ってアンモニアの強烈な悪臭がする。 その団体が作っている堆肥のことを、 その団体の方に 「これどう思われますか?」と聞いてみた

「いい匂いがしますね、 なかなか効きそうですね」と 言っていたそうです。

[腐っていてアンモニアの強烈な悪臭がする=肥料としてよく効く]
という、この認識が日本では明治時代から延々と続いています。

本当はアンモニアなんて毒です。

そこで作業している人は、そういう有害なものを扱いつつ、「良い肥料を作っているんだ」という勘違いをしていたということなのだそうです。

きちんと堆肥化せずに鶏糞・牛糞を使うと、 そのうち40%から60%は流出して環境を汚染します。 中途半端なものを作って畑にばらまいていると、 それが地下水を汚染し河川の水や海水を汚染します。

橋本力男さんの土作りというのは、

「有機農業で、その地域の風土・生態系に、あわせた耕作地の土壌生物の保全や保護、 共生、創造的利用など、本来あるべき土壌生態系を作物生産しながら、いかに抑制せず、声なき土壌生命体と共存し交流を深められるか」 が橋本さんの土作りのコンセプトです。

そのために堆肥作りの材料を(腐らせて土にする)のではなく、 土を (腐敗)の反対である (発酵)した 状態にする。

しかし日本の農業の現場において、この(発酵)(腐敗)という二つの言葉は正確に捉えられておらず、区別されていないというのが現状です。
この二つは全く別物なのです。

例えば[大根を米ぬかと塩につけたら、タクワンができます] これは微生物を利用して大根を発酵させたものです。乳酸菌や酵母などを微生物によって大根が漬物へと変化したものです。

もし、塩が足りず、重石が軽すぎて水が上がってこなかったりすると腐敗が起こります。

腐敗したら臭いし、 食べてもおいしくありません。 腐った魚が好きな人・ 腐った漬物が好きな人はほとんどいません。 しかし農家は腐った糞をどんどん畑に撒いているのです。 これは[(腐敗)と(発酵)の区別がついていないから]なのです。
橋本さんは、この農業の現場レベルでの勘違いを正したいという思いで活動しているそうです。

橋本さんの堆肥の作り方

橋本さんの堆肥の作り方は、 

・堆肥の材料の水分管理を丁寧に行い

・腐らせず 発酵させ

・発酵熱を使って90度くらいに土の温度を上げ、土の中にいる病害虫や 雑草の種子などを 発酵熱で熱消毒し、死滅させる方法です。

(出展:[橋本力男]畑でおいしい水を作る↑)

従兄弟の農場で見てきた堆肥作りをざっくり説明すると、

まず、 農業をしていると無限に出てくる [雑草][落ち葉][出荷しない野菜の茎や根の部分]、 B 級品以下で 固かったりして 従業員も持って帰って食べないような [廃棄する野菜] などの[腐ってない新鮮な堆肥の材料] を山積みにしておく、

(腐ってない)というところが重要です。

山積みにしておくと (微生物)や(目に見えないマイクロサイズの虫)や (目に見えるサイズの大型の昆虫) などが分解して、
山積みにしてあった堆肥の材料が分解され、 材料であった 硬い草や 硬い野菜は 分解され 、顆粒状になり堆肥の材料が 小さくなります。

そして、これをそのまま使うと、まだ堆肥の材料の中に病害虫や病害虫の卵、病原菌や雑草の種子などが存在するので、 オカラや米ぬか、籾殻を混ぜて 重機で撹拌し、 温度管理と水分管理をして4ヶ月ほど 発酵熟成させ発酵熱で殺菌する。 というやり方です。

たんぱく質やアミノ酸が豊富な土

この土の作り方を見ていて思ったことは、 草や廃棄する野菜 の分解に 虫や微生物を積極的に取り入れることで、 タンパク質の多い虫や微生物が土に大量に入っており、 それすら[発酵]して発酵分解され発酵熱で殺菌消毒されることにより、さらに善玉菌などが増え土の中のアミノ酸含有量が非常に多いのではないのかっていうのを思いました。

牛の飼料にする草も、 ただの草ではなく 植物を乳酸発酵させて タンパク質やアミノ酸含有量を多くした サイレージという飼料だから、

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(出展:ジャパンクオリティ)

[サイレージ]とは、植物を乳酸発酵させて作る、漬け物のような飼料のことです。青刈りした牧草やトウモロコシ、飼料用稲などをサイロ(発酵用の容器)に詰め、1~3カ月ほど発酵させると繊維質と栄養価たっぷりのサイレージ飼料ができあがります。発酵させることで長期保存ができるうえ、発酵で生じる乳酸や酢酸は牛にとって貴重な栄養素。

堆肥作りも発酵をうまく利用することにより、 土の中のアミノ酸含有量が高くなり、 その栄養が野菜にも良い影響を与えているのであろうということを思いました。

野菜の味や栄養を決めているのは、土の味と栄養なんだと思った農業体験でした。

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(出展:[荒川弘]百姓貴族1巻)


無農薬栽培の話のあとは、コチラもぜひ(化学肥料へ対する正しい理解)↓を


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