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【読んだ本の話】「まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書」から学ぶ。

新聞の書評欄でおすすめされていたので、購入してみた論文ライティングの指南本。

「人文系の学部生、修士、博士過程の学生はもちろん、文章を書く仕事をしている人は全員読む方がいい」と書かれていたので。

買いましたが。
横書きの本って読めないかも。

ーという杞憂を吹き飛ばす面白さでした。何これ。20年前に読みたかったです(いや嘘もっと昔です私の大学生期間)。

ライターとしても、「調べて書く系」のコラム記事、ブログ記事、エッセイを書く前に、このメソッドを知っておくといいと思いました。

例えば、「アーギュメント」という論文の主張について。

その主張が「アカデミックな世界で価値がある」ことを表現するために、「たくさんの先行論文を引用する」というやり方が記されています。つまり、「今話題になってるあれ」「みんなが論文にして発表してるそれ」に関する話題であることを示すのです。

「アカデミックな会話に入り込むために」、他者の論文を引用する。しかも、「すでに世に出ている論文を批判しながら、自分の主張の方が新しいし正しい」ことを伝えることが目的。

そしてアカデミックな領域では、引用され、批判されてこそ「その論文に価値がある」と認められるわけで。

誰かに主張を伝える姿勢

この論文を書く姿勢は、「書く」ことのすべてに共通していると感じます。

例えば、引用と批判、導入。

「今巷で話題の」
「今年に入ってから○○店舗目となる」
「ここ数ヶ月で一気に利用者が増えた」

などなど、私たちは「話題性があるネタ」だと導入分に使うことも多いです(批判はしないこともありますが)。

さらに、自分のアーギュメント(主張)が正しいことを論証するために、その主張をした後に懇切丁寧に説明をするのですが。

その説明文の作り方が、大変わかりやすく真似しやすい。


主張は、現時点の「一般論」から飛躍させると驚きが生まれます。えっそんなことを考えるの? ちょっと普通じゃないね! と。
その飛躍の幅が高いほど注目を集めますが、その後ろに「飛躍を納得させる論証」が必要になります。

その論証は、ただの事実からスタートし、だんだん抽象度をあげて、一般論化しつつ最後はアーギュメントの説明になるように書いていく。

色々とすごい!

仕事と人生をつなぐ

そして、p141からの「研究と人生をつなぐ」というタイトルの後に続く文章は、人生を彷徨う私のようなふんわりライターの心に突き刺さるものがありました。

まず自分の人生を棚卸しして、いつ何にハマったかを年表にしてみようという提案の後ろに、

年表をネタにして現在の研究内容と自分の人生とのリンクを人工的につくることにある。それはつまり、研究者として生きつつある自分についての物語を創作することで、そこに一種の必然性を見出す作業にほかならない。なんとなく選んでやってきたものに、あとから必然性を与えるのだ。

「まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書」阿部幸大 /光文社 p147

つまり、その作業を通して「研究への内的なモチベーション」(p143)を手に入れることで、その研究を続ける強い動機と自信を持てるようになると。

これは全部ライターに置き換えて読めるな。

そう思いました。

でも実は、もう一周くらい読まないと「理解が中途半端」なところがたくさん。アカデミックな本なのにすごく読みやすくて良かったのですが、それでも難解な場所がありました。

精進!






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