【総論】M&AにおけるFA方式とM&A仲介方式の違いとメリット・デメリット
第1章:M&Aを取り巻く時代背景
日本では、少子高齢化や地方経済の停滞、さらには産業構造の変化などが重なり、中小企業の後継者不足が深刻化しています。その結果、事業を承継できずにやむを得ず廃業に至る企業も少なくありません。こうした社会的な課題を解消する有効な手段として、近年大きな注目を集めているのがM&A(企業の合併・買収)です。
M&Aと聞くと、テレビや新聞で報じられるような「大企業同士の巨額買収」のイメージが先行しがちですが、実際には企業の規模を問わず、多様な目的で活用されています。たとえば、中小企業同士の統合や海外企業とのクロスボーダーM&Aなど、一方向の「大企業による小企業の吸収」とは異なるさまざまな形態が存在します。
こうしたM&Aを成功に導くためには、高度な専門知識を備えたサポートの存在が欠かせません。そのサポートとして代表的なものがFA(フィナンシャルアドバイザー)方式と仲介方式の2種類です。どちらも「M&Aの成約を目指す」という同じゴールを持っていますが、そのアプローチや交渉のスタンスには大きな違いがあります。本稿では、それぞれの仕組みと特性を詳しくご説明し、双方のメリットや留意点を整理してまいります。
第2章:FA方式と仲介方式の概要
2-1-1. FA(フィナンシャルアドバイザー)方式とは
FA(フィナンシャルアドバイザー)とは、M&Aの場面で「売り手側」あるいは「買い手側」のどちらか一方に深くコミットし、依頼主の利益最大化を主なミッションとする専門家です。
売り手側FA
企業価値を高めるために尽力し、できる限り高い譲渡価格を引き出すことを目指します。具体的には、バリュエーション(企業価値評価)を有利に導く資料の作成や、買い手企業との価格交渉、最終的な契約締結までのプロセスをサポートします。買い手側FA
過度に高額な買収金額を提示しないように企業の状態を適切に評価し、将来リスクを加味しながら交渉を進めます。買い手側の意向に沿ったシナジー分析やデューデリジェンス(DD)も行い、合理的な買収条件を組み立てる役割を担います。
2-1-2. FA方式の根本的特徴
FA方式では、依頼主(売り手か買い手)の側に立ち、その利益を追求することを最優先します。このため、交渉の相手方とは利害が対立しやすく、価格や条件面で複雑な駆け引きが生じることが少なくありません。
特に、
売り手側FA:可能な限り高い金額での譲渡を目指す
買い手側FA:可能な限り安く買収することを重視する
こうした構図から、対立的な交渉が長期化する場合もあります。
2-2. 仲介方式とは
2-2-1. 仲介の基本機能
仲介方式とは、売り手企業と買い手企業の間に仲介会社が入り、両者の意見を聞きながら中立的な立場でM&Aの成約をサポートする手法です。仲介会社は一方のみの代理人ではなく、双方の要望をヒアリングし、win-winの合意点を模索する「マッチメーカー」のような役割を果たします。
2-2-2. M&A仲介方式の根本的特徴
仲介会社は、売り手・買い手双方から報酬を受け取ることが多く、「売り手と買い手の双方が納得のいく取引条件を実現する」ことを第一の目標としています。価格の調整にも注力しますが、それだけでなく、
雇用の維持
企業文化の継承
地域社会との関係
といった非財務的な項目にも目を向けやすいのが特徴です。特に中小企業の事業承継や地域密着型のM&Aで、価格以外の条件が重要視される場合には、この仲介方式がより一般的となります。
第3章:FA方式と仲介方式の交渉構造の違い
3-1. 交渉の起点と主導権
M&Aの全体的な流れにおいては、「どのような譲渡条件を設定し、どのように交渉を進めるか」が最終結果に大きな影響を与えます。ここで特に注目したいのが、FA方式と仲介方式で異なる「交渉の起点と主導権の所在」です。
FA方式:買い手主導の交渉
売り手企業がFAを付けていても、現場では買い手企業が積極的に要求を出してくる場面が多い傾向があります。
大手企業や投資ファンドが相手の場合、売り手は「守りの立場」に回りがちです。
価格や契約条件、従業員の処遇など、買い手の意向が優先されやすく、売り手には交渉面で大きなプレッシャーがかかります。
仲介方式:売り手が条件を先に提示
仲介会社はまず、売り手が希望する条件(希望価格・譲渡時期・ロックアップ期間など)を詳細にヒアリングし、その条件を受け入れてもらえそうな買い手を探します。
売り手が自らの“理想像”をベースに話を進められるため、主導権を握りやすいのが特徴です。
仲介会社が客観的に両者を調整するため、全体の交渉がスムーズに進みやすく、トラブルも比較的少なくなります。
3-2. 譲渡条件の明確化がカギ
M&Aでは譲渡価格が注目されがちですが、実際には以下のような多岐にわたる要素が成否を左右します。
役員や従業員の処遇
経営者の退任時期
競業避止義務
ブランドや知的財産の扱い
これらの非価格的要素を事前にどれだけ明確化し、どのように交渉に組み込むかによって、売り手側が得られる満足度は大きく変化します。
FA方式の場合:買い手が段階的に細かい条件を提示してくるケースが多いため、あらかじめプランを用意していないと売り手が不利に陥りやすい可能性があります。
仲介方式の場合:売り手が最初に「譲渡条件リスト」を提示できるため、従業員の雇用確保やブランド保護など、売り手のこだわりが尊重されやすいです。
第4章:FA方式と仲介方式のメリット・デメリットを徹底比較
ここでは、売り手企業の視点から、FA方式と仲介方式のメリットとデメリットを整理します。企業の規模やM&Aの目的によって、最適な選択肢は異なりますが、まずは基本的な特徴を把握しておくことが重要です。
4-1. FA方式のメリット
価格交渉における可能性の拡大
買い手が強い関心を持つ企業の場合、競合する買い手の存在によって譲渡価格が大きく上昇するチャンスがあります。FAの交渉スキル次第では、想定以上の高値で売却できる可能性も秘めています。高度な金融知識・スキームの活用
FAには会計士や弁護士、投資銀行出身者などの専門家が在籍していることが多く、複雑なスキームが必要な大型案件や海外ファンドとの取引でも、専門的なサポートを受けられます。
4-2. FA方式のデメリット
買い手に主導権を握られやすい
一般的に、買い手のほうがFAとの連携が強固であり、対立型の交渉となってしまうことが少なくありません。売り手側の要望がなかなか通りにくく、精神的負担も大きくなりがちです。FAの力量に左右されるリスク
相手方FAが経験豊富であった場合、交渉は売り手にとってかなり不利に進行する可能性があります。FAの実力差によって、結果が大きく変わる点に注意が必要です。非価格的要素が軽視されやすい
どうしても「買い手がいくらで買うか」という視点が重視されるため、企業文化や従業員のモチベーションなどが後回しにされがちです。
4-3. 仲介方式のメリット
売り手が主導権を持ちやすい
仲介会社が売り手の希望を最初に整理し、それに合う買い手候補を選ぶため、交渉自体が“売り手主導”で展開しやすくなります。複数の買い手候補を同時進行で検討可能
万が一交渉が破談しても、すぐに別の候補企業にアプローチできるので、時間と機会を浪費しにくいメリットがあります。場合によっては買い手同士が競合し、価格が上昇することもあります。非財務的要素も丁寧に扱える
仲介会社が双方の立場を調整するため、従業員雇用やブランド価値といった“ソフトな要素”も交渉に盛り込みやすいです。
4-4. 仲介方式のデメリット
仲介会社のスキルに依存
担当者の経験や業界知識が乏しい場合、買い手との交渉が難航したり、不適切なマッチングをされてしまうリスクがあります。譲渡価格がFA方式ほど高額にならない可能性
両者の合意点を探る手法であるため、強引に価格を引き上げるような“攻めの交渉”はやや苦手です。価格最大化を最優先する経営者にとっては、物足りないケースもあるかもしれません。
第5章:譲渡条件の重要性と具体的項目
5-1. 譲渡条件の全体像
M&Aにおける「譲渡条件」とは、単に売却金額だけではなく、以下のように多方面にわたる要素をどう扱うかを総合的に定めたものです。
成約時期:いつまでにM&Aを成立させるのか
ロックアップ期間:成約後の経営関与や競業避止義務の長さ
役員・従業員の処遇:報酬や福利厚生、リストラの有無など
知的財産やブランドの取り扱い:社名やロゴ、特許などをどう扱うか
これらを明確にしておくことで、売り手としての意向が買い手に伝わりやすくなり、満足度の高い取引を成立させるうえでの大きなポイントとなります。
5-2. 譲渡条件と交渉構造の関連
FA方式
売り手側が予め策定していない場合、買い手による条件の切り崩しにあい、不利な形で妥結せざるを得ないリスクがあります。相手方FAが優秀であれば、なおさら売り手の譲歩を引き出されやすくなります。仲介方式
売り手は早い段階で譲渡条件を提示できるため、重視したい点(従業員雇用やブランド存続など)を買い手に認識させやすく、交渉過程での軸がぶれにくいというメリットがあります。
第6章:交渉プロセスと実務フローの違い
6-1. 一般的なM&Aプロセス
M&Aは主に次のような手順で進みます。
譲渡意向・準備
売り手側がM&Aを検討し、簡易的な企業価値評価や財務デューデリジェンスを行います。秘密保持契約(NDA)の締結
必要に応じて仲介会社やFAを選定し、関係者間で情報管理を徹底します。ティーザー作成 & 買い手探索
ティーザー(匿名の企業概要資料)を作成し、買い手候補企業に配布します。興味を持った企業にはIM(インフォメーションメモランダム)を提供します。ノンバインディングオファー(意向表明書)
買い手候補が大まかな価格や条件を提示し、売り手側は複数候補を比較して優先交渉先を決定します。デューデリジェンス(DD)
買い手候補が財務・税務・法務・ビジネスなどを詳細に調査し、潜在リスクや課題を洗い出します。最終交渉と契約書締結
SPA(株式譲渡契約)または事業譲渡契約などを締結し、条件の最終調整を経てクロージングを迎えます。
6-2. FA方式におけるプロセスの特徴
買い手FA主導の情報収集
売り手側は、買い手の要求に応じて多岐にわたる資料を準備しなければならず、デューデリジェンスも厳密になりやすい傾向があります。交渉期間の長期化リスク
対立構造が強まると、価格や条件面での調整が難航し、クイッククロージングが難しくなることが多いです。FA同士の交渉バトル
売り手・買い手双方がFAを付けている場合、FA同士の高度な駆け引きが展開され、先行きが読みにくい場合があります。
6-3. 仲介方式におけるプロセスの特徴
仲介会社による買い手候補の同時進行
売り手の提示した条件に合う複数企業へアプローチできるため、一社との交渉がうまくいかなくても次の候補へ迅速に切り替えられます。売り手優先の交渉タイムテーブル
仲介会社が売り手の希望(成約時期や価格帯など)を整理して買い手に提示するため、売り手の事情を配慮したスケジュールで進めやすいです。比較的短期間で合意形成
中立的な調整役が介在することで、極端な要求や強い対立が起こりにくく、交渉が感情的にこじれるリスクも抑えられます。
第7章:売り手にとっての最適解を導くために
7-1. どの方式が「正解」なのか?
FA方式と仲介方式には、それぞれに強みと向き不向きがあります。企業の置かれた状況や経営者の意向、M&Aの目的によって、最適な選択は異なります。
仲介方式が向いているケース
後継者不足に悩む中小企業で、従業員の雇用や企業文化を守ることを優先したい。
大きな対立を避け、なるべく短い期間で安定した成約を目指したい。
M&Aが初めてで、複数の買い手候補を同時に検討しながら進めたい。
FA方式が向いているケース
人気の高い企業で、複数の買い手が争奪戦を繰り広げる可能性があり、譲渡価格を極限まで引き上げたい。
海外投資ファンドなどとの取引を検討しており、大規模で複雑なスキームが必要。
売り手自身に高い交渉力があり、相手FAとのせめぎ合いに勝つ自信がある。
7-2. 経営者やオーナーのゴール設定が最優先
M&Aを検討する際にもっとも重要なのは、経営者やオーナーが「何のためにM&Aを行うのか」を明確にすることです。たとえば、
価格面を最優先するのか
従業員の雇用や企業文化の維持を最優先するのか
地域社会や取引先との関係を第一に考えるのか
といったゴールによって、FA方式を選ぶか仲介方式を選ぶかは大きく変わってきます。
第8章:実際の成功事例と失敗事例
8-1. 成功事例:仲介方式で円満承継
老舗の製造業A社(従業員数50名、創業家一族が経営)は、後継者不在が深刻な問題でした。A社は従業員の雇用継続と自社ブランドの存続を最優先事項として仲介会社に依頼。仲介会社は地元企業だけでなく、都市部や海外企業も含めた幅広いネットワークを駆使し、A社と相性の良い複数の買い手を提案しました。
最終的に、A社は製造ラインの効率化に積極的なB社とのマッチングに成功。従業員の待遇もほぼ維持され、経営者は大きな安心を得ることができました。価格面での大幅な上振れはなかったものの、「安心して企業を任せられる相手を見つけられた」と、結果的に高い満足度を得ました。
8-2. 成功事例:FA方式で売り手利益を最大化
ITスタートアップC社(従業員数10名、VCからの投資あり)は、独自の先端技術を強みに大手企業から買収の打診を受けました。C社は買い手に対して優位に交渉できると判断し、FA会社に依頼して価格交渉を強化。
その結果、複数社が争奪戦となり、想定を上回る買収金額での譲渡に成功。経営陣と従業員は株式譲渡益やストックオプションによる大きな利益を得て、短期間でのエグジット(投資回収)を実現しました。
8-3. 失敗事例:FA方式による対立長期化
ある企業がFA方式を選択したものの、買い手から要求される価格や従業員処遇が厳しく、売り手が理想とする条件と大きく乖離してしまいました。FAは価格の引き上げに注力したものの、結果的に従業員への配慮が十分なされず、社内の反発も招き交渉は長期化。最終的には破談に至り、経営者と従業員のモチベーションが大きく損なわれたのです。
このケースでは、譲渡条件として従業員の雇用維持を明確に優先していれば、仲介方式のほうが適していた可能性があります。
第9章:パートナー選びの重要性
9-1. 成否を左右する「誰に任せるか」
FA方式・仲介方式のいずれを選択しても、最終的には「誰が担当するか」がM&Aの成功度合いを大きく左右します。どんなに優れたスキームでも、当事者同士のコミュニケーションが噛み合わなければ交渉は停滞し、破談に終わる恐れがあります。
FAを選ぶ場合のチェックポイント
所属組織の実績(特に同業種・同規模のM&A経験)
交渉スキルやコミュニケーション能力、誠実性
法務・税務・財務の専門家との連携体制
仲介会社を選ぶ場合のチェックポイント
持っているネットワークや紹介できる買い手の質・量
成約実績や利用企業の評判
担当者が自社の要望を正確に理解し、買い手に伝えてくれる姿勢
9-2. “相見積もり”で見極める
FA会社や仲介会社は1社だけで決めるのではなく、複数の候補と面談して比較検討すると安心です。M&Aは企業の将来を左右する重大な意思決定ですので、焦らず時間をかけて「相性の良いパートナー」を探しましょう。
第10章:まとめと展望
10-1. FA方式と仲介方式の要点
ここまでの内容を踏まえると、FA方式と仲介方式には以下の大きな違いがあります。
交渉の起点と主導権
FA方式:買い手が主導権を握りがち
仲介方式:売り手が譲渡条件を先に提示し、融和的に進めやすい
譲渡条件への影響
FA方式:価格上振れを狙える反面、非財務的要素が軽視されやすい
仲介方式:従業員や企業文化を重視しやすい一方、価格の最大化はやや難しい場合も
交渉期間とストレス
FA方式:長期化しやすく、対立が深まると精神的負担も大きい
仲介方式:中立の調整役によりスムーズに進行しやすく、ストレスが軽減
マッチングの幅
FA方式:特定の買い手との深い交渉が中心
仲介方式:複数の買い手候補を同時に検討可能で、リスク分散がしやすい
10-2. どちらを選ぶべきかの最終指針
「価格を最大限高くしたい!」
買い手が複数集まる可能性が高く、投資ファンドなども絡むような高額案件では、FA方式の強みを生かしやすいです。ただし、相手側FAの実力次第で思わぬ苦戦を強いられる可能性がある点には留意しましょう。「従業員や企業文化を守りたい!」
安定的な事業承継を目指す中小企業には、仲介方式が適している場合が多いです。自社の価値観や風土を理解し、継承してくれる買い手を選択しやすいメリットがあります。「リソースや時間が限られている!」
日常業務で多忙な経営者が、対立型交渉に長期的に対応する余裕がない場合も、仲介方式が向いています。仲介会社が細かな調整や事務作業をまとめて実施してくれるため、経営者の負担を軽減できます。
10-3. 今後の展望:多様化するM&A手法
近年、FA方式と仲介方式の“ハイブリッド”や、オンラインプラットフォームを活用したマッチングサービスも台頭しています。M&A市場が成熟し、手法の多様化が進むにつれ、企業の状況に合わせて最適なアプローチを選べるようになりつつあります。
第11章:総括とアクションプラン
11-1. FA方式と仲介方式のまとめ
FA方式
メリット:高額な譲渡額を実現できる可能性、複雑なスキームにも対応可能
デメリット:買い手に主導権を握られやすい、交渉が対立的になりやすい
仲介方式
メリット:売り手が主導権を持ちやすい、非財務的要素を重視しやすい
デメリット:仲介会社の能力に左右される、価格面での大幅な上振れは期待しにくい
11-2. 売り手経営者がすべき5つのステップ
目的の明確化
「後継者不足の解消」「企業価値の最大化」「従業員保護」「地域経済への貢献」など、何を最優先すべきかを明確にします。譲渡条件の優先順位づけ
役員・従業員の処遇やブランド継続など、“絶対に譲れない項目”と“妥協できる項目”を区別します。FAか仲介か、方針の検討
自社の規模や競争力、交渉に割けるリソースを踏まえ、FA方式と仲介方式のメリット・デメリットを比較検討します。適切なパートナー探し
FA会社または仲介会社を複数候補として挙げ、成約事例や担当者の人柄、コミュニケーション力をチェックし、相性の良い先を選びます。交渉プロセスのモニタリング
実際にM&Aを進める際は、定期的に進捗や方針を確認し、必要に応じて修正を加えます。万一、相性が合わないと感じたら契約見直しを検討する柔軟性も大切です。
11-3. 企業の未来を切り開く“M&A戦略”を
M&Aは、“単に企業を売却する”行為ではなく、企業の未来と価値を次世代へ繋ぐための重要な戦略です。経営者の皆さまには、できるだけ早い段階から準備を進め、信頼できる専門家や仲介会社と良好な関係を築くことをおすすめします。
FA方式・仲介方式いずれを採用する場合でも、「自社は何を守り、何を得たいのか」を明確にしておくことで、最終的により良い相手先とのマッチングが実現しやすくなります。長期的なビジョンを意識しながら、適切なパートナーを得て、ベストなM&Aを達成してください。
【最終まとめ】
FA方式と仲介方式の最大の違いは「交渉の起点と主導権の所在」にあります。
FA方式は、買い手主導の対立型交渉になりやすいものの、高額な譲渡価格を実現する可能性を秘めています。
仲介方式は、売り手が譲渡条件を先に提示しやすく、非財務的要素の考慮もしやすい一方で、大きな価格上昇を狙うのはやや難しい場合があります。
譲渡条件(成約時期、ロックアップ、役員・従業員の処遇、ブランドの継承など)を事前に整理することで、売り手として納得のいく交渉を進めやすくなります。
パートナー(FA会社・仲介会社)の実績や担当者のコミュニケーション能力を見極めることが、M&Aを成功させるために非常に重要です。
経営者や企業オーナーは「自分は何のためにM&Aを行うのか」をまず明確にし、売り手主導で準備を進める姿勢が、後悔のない成約への近道となります。
本稿が、M&Aをご検討の企業オーナーや経営陣の皆さまにとって、FA方式と仲介方式を理解し、適切な戦略を構築するうえでお役に立てば幸いです。日本の中小企業が後継者不足といった課題を乗り越え、新たなステージへ踏み出すための有効な選択肢として、ぜひ本稿の内容を参考にしていただければと思います。長期的な視点を持ち、信頼できるパートナーとともに最良のM&Aを実現してください。
プライマリーアドバイザリー株式会社
代表取締役 内野 哲