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2020年10月の記事一覧

月夜

月夜

はらはらと

唐突に

風のように現れては消える

あなたの名は何だった?

後に甘い余韻を残して。

耳鳴り

耳鳴り

今日はやけに耳につく。

暗がりで光る冷蔵庫の音。

隣の部屋の時計の秒針。

あの日の君の真面目な話。

火

この炎の向こう側にいるはずの

あなたが幻でもかまわない。

宇宙を燃やし尽くすほどの

私の命の灯を

どうか絶やさないように

消さないように。

ハート

ハート

子どもの頃、心が取り外せたらいいのにと、切に願ったことがあった。この苦しい気持ちさえ感じなければ、もっと楽に生きられるのにと。

でもどうだろう?

この深みがなかったら、この人生はカラッカラだ。

痛みながら綻びながら、矛盾を重ね合わせながら、複雑に、より繊細に美しさを増す、

我が命よ。

春になったら

春になったら

君の好きな黄色い花が咲いたよ。

僕の好きなハナミズキが今きれいだよ。

夜帰ると花の香りがして、「おかえり」って言ってもらえた気がするんだ。

今日は月がきれいだよ。

おやすみ。

あなたはお花とお月さまの話ばかりするね。

あなたの世界はきれいなんだろうな。

春になったら、私にも見れるかな。

あなたの美しい世界を。

美

切り取ることのできない美しさがある。

人の内面世界のみに存在する

形も色も音も香りも定まらない

それ故、再現することのできない

それでいて、心を永遠に捕らえて離さない

そんな幻のような美しさが。

人はそれを追い求める。

追いかけても見失うのに

不意に強烈に心に訪れては

また心を奪い去っていく

そんな悪魔を。

メロディー

メロディー

鳴り止まないメロディーがある。

口ずさんだのは君だった?

何度も聴くうちに、昔から知っていたような気がした。

そんな、懐かしい声に

私は今世、何度か出会っている。

あぁ、君も

私の昔からの友だ。

小さな四季の舞台

小さな四季の舞台

ーあれは何という名前だったか。ー


大がかりなイベント会場での、建物の壁にドカンと映し出されるような、派手な演出や物語のしっかり作り込まれた壮大なスケールのものではなく、私が今日、目にしたのは、とても小さな、水族館の一角の静かで地味な、

そう、あれは確か、プロジェクション・マッピング。

日本海に面したその土地の、海辺の風景を上から見てそのまま切り取ったような、波や山や岩がそのまま

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眩暈

眩暈

ある日突然、同じ風景のはずの現実がガラリと変わることがある。

舞台は何も変わっていない。

なのにすべてが変わった感覚。

しかもそれは、私が変えたわけじゃなく、

見えない大きな力に動かされて、急にパズルのピースがハマったから。

頭で納得できないことも、

心が穏やかだということが、

大丈夫のサイン。

現実は滑稽なほどわかりやすい目印をたくさん

随所に散りばめてくる。

もう焦るのはや

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琥珀色

琥珀色

もう少しで海辺の夕焼け空がきれいな時間だった。

それを忘れるくらい美しい時間を過ごした。

そんなことに、後にならないと気付かない、

愚かな私です。

笛吹き紳士

笛吹き紳士

闇夜に一人、笛を吹く。

私の家の屋上で。

いつも背中に影を負う

顔は一度も見られない。

あなたはいつも寂しげに

おんなじ曲を吹いている。

∞

時というのが幻で

永遠の一瞬の無限ループなら

その概念の外側に

誰も行くことができないのなら

それを見ているのは誰なんだろう

それを創ったのは誰なんだろう

宙(そら)

宙(そら)

あなたは言った。

「僕は死ぬまで飛行機を降りないんだ。」と。

その言葉通り、

あなたは飛行機に乗ったまま、

遠い遠い星になったんだ。