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【社内インタビュー】PRで社会課題を解決しようと思ったら、サステナブルに向き合う覚悟が大切という話。(持冨弘士郎)

こんにちは、「PRAP OPEN NOTE」編集部です。今日は、プラップジャパンのメンバーの持冨 弘士郎さんを紹介します。
PRディレクターとして顧客課題に向き合い戦略的なプランニングでサポートする持冨さんが社会課題に関わるプロジェクトを手掛ける際に、大切にされている視点などをお聞きしていきます。

■持冨 弘士郎さん
2010年プラップジャパン新卒入社。
2年目で担当した動物病院で犬の椎間板ヘルニアを啓発する仕事に携わり、PRの意義に触れる。以来、PR視点のクリエイティブやコピー開発に至るまで幅広く対応。サッカーとお笑いが好き。
個人ワーク:#酔っぱらいではありませんプロジェクト
https://twitter.com/ydaproject
受賞歴:PRアワードグランプリ ブロンズ、PR AWARDS ASIA FINALIST など

——本日は、どうぞよろしくお願いします。

持冨:よろしくお願いします。

——まずは、持冨さんの普段の仕事を教えてください。

持冨:新規でご相談をいただいたお客さんの様々な課題をお聞きして、その課題を解決するPRプランをつくる、プランナーの仕事をしています。特に、社会課題に関わるプロジェクトだったり、まだ社会課題として顕在化していない問題をたくさんの人に知ってもらうようなプロジェクトを手掛けています。

——ありがとうございます。社内でもPR プロジェクトを数多く見ている立場にいると思いますが、最近PR業界に感じる変化はありますか?

持冨:ここ数年で社会課題に向き合う企業が急速に増えましたよね。会社に入って10年ぐらいになるんですけど、入社した頃は企業の社会的責任といえば環境保護活動や従業員によるボランティア活動のようなものが中心で、そこから少し経ってCSV(Creating Shared Valu)という考え方が出てきて。
ただそれも一部の限られた企業が持ちあわせた視点という感じで、社会課題の解決とビジネスの両立に本気で取り組む企業は決して多くはなかった。
お客さんと一緒に社会課題に向き合うプロジェクトを考えるようになったのは3〜4年前くらいからでしょうか。SDGsという言葉や先進的な企業のプロジェクトが目に止まるようになり、PR業界の意識も一気に加速したと思います。
それこそ最近は企業が取り組む課題も多様化してきた。環境問題だけじゃなくてジェンダー、子育て、教育、健康の問題など。従来の常識や慣習のなかで「ちょっとおかしいんじゃない?」という疑問にも光が当たるようになって、「Public Relations」というPR本来の役割に対する期待が大きくなっていると感じます。

——そんな PR業界の変化の中で、注目しているのはどんなことですか?

持冨:社会課題に向き合う企業はたしかに増えました。でも本当に社会が変わったケースはまだまだ多くない。その原因を考えたりもするんですが、そもそも、そう簡単に社会が変わるわけがないんですよね。
瞬間的な話題づくりに成功した事例はたくさん出てきていますが、それが継続されて、仕組み化されていかないと、変化は起きない。そう考えたときに、企業はもちろん、僕たちのような代理店にも必要なのは、「プロジェクトを長く続けていく覚悟」だと思うんです。
短期的にブランドの認知や好意を向上させるための手段としてではなく、継続して長い期間をかけて、社会や課題に向き合っていくことが必要だという想いを、昨年くらいから強く持っていますね。
そういう意味で、2年以上継続しているプロジェクトには注目しています。

——なるほど。とはいえ「覚悟」って、代理側からは持ち込みにくいという問題もあると思います。
たとえば、私たちプラップジャパンがそんな「覚悟」のある活動を外からサポートするためにできること、今後していきたいことについてはどうお考えですか?

持冨:キーワードは「仲間づくり」ですかね。
自分たちだけでやり切らないといけない活動ってどうしても長続きしづらいと思うんです。これだけ情報過多の中で新しい活動をはじめても、もともと影響力のあるブランドでない限り注目されづらいという問題もある。
じゃあどうすればいいかというと、ひとりでやらずに、みんなでやることだと思うんです。同じ問題意識を抱える企業や有識者らが、ひとつのテーマに対して、手を取り合って発信していく。仲間がいれば覚悟も揺るがないですし、こうした共創的な情報発信のあり方をデザインしていくことがこれからの代理店の役割なのかなと。
たとえばプラップジャパンだけでも、クライアントが400社以上いるわけだから、同じ課題をもつ企業や団体の方々をつなぐことができます。関係性をつくっていくっていうのは、まさにPRの仕事の本質ですし。

——たしかに、代理店がハブのような存在としても機能するというのは、今までもあったことですが、これから重要性のレベルがますます変わってくるのかもしれません。
依頼を受けてすぐに結果を出したいという心情が代理店には芽生えがちですが、本当にクライアントの長期的な競争優位性をつくりだす、サステナブルな活動の仕組みをつくるという視点でブランドを育てていくような価値提供をすることも絶対に忘れてはいけないし、今後は今以上に大切にしていきたいですよね。

持冨:同じ意見を持った仲間だけではなく、反対意見や別の意見も取り入れながら進んでいくことが前提ですが、どんな挑戦でも仲間が多い方が絶対にいいですよね。苦戦したときや失敗したときも、仲間がいれば心強いし、助け合える。なんか少年マンガっぽいですけど。(笑)

——社会に大きな課題がひとつある、という時代はとっくに終わっていて、小さな課題が無数に並行している状態がある、となると、独りよがりで終わらないうねりを起こすためにも、仲間は大事ですね。
ちなみに、「小さな課題」という点でいうと、まだ顕在化していない課題を知ってもらうお仕事もあるというお話を最初にされていました。そうしたお仕事ではどんなことを心掛けているのでしょうか。

持冨:どの仕事にも共通していることなんですが、クライアントから聞く話には、もちろん知らないことが沢山あるわけです。そのなかで、自然に「へえ!」と思った情報をすごく大事にしているんですよ。特定のトピックについて調べていて、何かを発見したときも同じです。
自分が反射的にへえ!って思った瞬間をないがしろにしない理由は、自分以外の誰かも同じように感じる可能性があるから。そのへえ!が、顕在化していない課題に目を向けるきっかけや気づきになったりすると思うんですよね。
世の中いろんな人がいるけれど、まずは自分の中になかった視点や事実を大切に扱うことが、PRのはじめの一歩なのかも。

——自分の中にはなかった視点って、PRをしているとやっぱり山ほどありますよね。

持冨:昨年の2020年に、「#酔っぱらいではありません。」という脊髄小脳変性症という難病の啓発プロジェクトを立ち上げたときにもそれは感じましたね。というのも、病名すら知らなかった状態から患者さんに色々とお話を伺うなかでいちばん強く印象に残ったのが、ろれつが回らない症状のせいで、電話相手に「酔っぱらってるのか」と怒られてしまったというエピソードだったんですね。そしてそこから「酔っぱらいではありません」と記したパスケースをつくろうというアイデアになった。
この経験から思うのは、一般的な事実よりも個人的な事実に出会ったときに「へえ!」と感じたことのほうが、よいアイデアが生まれやすいということ。

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(立ち上げたプロジェクト「#酔っぱらいではありません。」)

——たしかに、非常に個人的な事実が実は普遍性のある事象につながっていく、みたいなことはありますよね。

持冨:うん。個人的な話が、新しい課題の切り口や世の中にコミュニケーションしていく際の入り口になっていく感じはすごくありますね。社会は個人で構成されているので、あたりまえといえばあたりまえですが。

——個人的な熱意や共感がベースにあるほど、サステナブルなプロジェクトになりそうです。

持冨:たしかに。あと個人的な熱意は行動にもつながりますよね。
僕は言葉の力を信じているというか、PRや広告のコピーやステートメントがものすごく好きなんですけど、とはいえ今の社会に残された課題は言葉だけで解決できるものばかりじゃない。これからは言葉と行動をセットで積み重ねていく必要がありますし、企業やブランドの行動づくりをより深いレベルでお手伝いしたいと考えています。そのとき重要になるのが、プロジェクトに関わるメンバーの個人的な熱意をしっかり捉えることかなと。

——いまの代理店のイメージってその行動を起こすために必要な覚悟とは少し切り離された存在ですよね。

持冨:そうですね。クライアントに第三者的な立場からアドバイスするみたいな役割は、究極、そこに責任がないとも言えるから。でも、これからは本当の意味でのパートナーになりたいというか、課題に共に向き合う仲間としての責任を果たしていきたいし、お客さんからもそういう存在として認識されたいですね。

——短期的な付き合いではなく、長期的な視点で企業やブランドの想いに伴走していくというプラップジャパンとしての強い覚悟を感じました。

持冨:まさしく、その通りです。

——今日は、ありがとうございました。

持冨:こちらこそ、ありがとうございました。

クライアントの目の前のお困りごとを解決するだけでなく、中長期的な視点でクライアントに伴走しながら社会や課題に向き合っていくこと。「仲間づくり」と「共創的な情報発信」。クライアントからも社会からも求められるPRパートナーとして、これからの私たちのあるべき姿を改めて認識しました。

インタビュー内でも紹介された、脊髄小脳変性症という難病の啓発プロジェクト「#酔っぱらいではありません」。次回のnoteでは持冨さんのほか、このプロジェクトにかかわったメンバーとの対話を紹介する予定です。プロジェクト立ち上げ以降、「仲間」をどう増やしていったのか。そのストーリーを前後編でお届けします。どうぞお楽しみに。



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