十分な説明を受けた上での同意とは?
いわゆる「インフォームド・コンセント」ですね。
医療の分野では、検査や手術など治療の前に医師から説明を受けます。患者さんとご家族はその検査や治療をすることで、身体や生活がどう改善するのか? 反対に、どんなリスクを伴うのか? 治療費がどれくらいかかるのか? など踏まえて同意します。
僕が勤める特別養護老人ホームでも、入所前には40分〜1時間くらいかけて施設についての説明をします。
職員体制、人員配置、ケアの内容、リスクマネジメント、看取りの方針、そして料金も。
これらを理解していただき、同意を得てから入所に向けて話を進めていきます。
中には「夜間に看護師がいないのは不安」「もっとリハビリがある施設が良い」と言われ、同意されないご家族もおられます。
けど、当たり前ですが僕はそれで良いと思います。
不安や不満を抱えながら入所され、思うような経過にならなかった場合、おそらくご家族としては後悔されると思います。
そんな事態にならないよう、うちの施設の弱い部分も含めて説明をします。
先月末、あるご家族の方が入所申込みに来られました。
現在、お母さんはある施設に入所されておられるそうですが、最初に聞いていたより月10万円ほど高い入所費用を請求されて、とても困っている、とのこと。
自分たちの生活もあるので、金銭的な支援は難しい。かと言って、ご家族宅にお母さんを引き取って介護することも難しい。
このままでは、母が大事にとっておいた葬儀費用にまで支払いに充てなければならなくなる。
他の自治体に1人で住んでいたお母さんを引き取り、同居して介護を始めたそうです。
ところが、だんだん認知症が進行して、介護負担が大きくなり、ご家族も体調を崩し、結果的に仕事も辞めて…。
切羽詰まって、現在の施設に入所させたのですが、まさかこんなに費用がかかるとは…。
こんな事態になるのなら、自分が母を引き取って同居しなければよかった…。
そこまで話されて、泣き出されました。
お母さんへの申し訳なさ、自分自身の見込みの甘さ、現在の施設への不信感…
「母には長生きしてほしいと思っていましたが…。そう思えないくらい辛くて、これからどうすればよいのかわかりません」
絞り出すように言われました。
今回のように、「いま入所している施設の支払いが難しくなってきた」と言われて、うちの特養への入所申込みされる方は珍しくありません。
今回であれば、月10万円も増えた理由は「オプション料金」だそうです。
詳しくは書けませんが、基本の介護費用や食費・居室料金に加えて、「職員が○○をすれば、1回あたり△△円」「○○となった場合、△△を購入してもらう」というオプションが設定されていたようです。
冷静に考えられる状態であれば、きちんと事前に確認できていたかもしれません。
ところが、介護負担が大きくなり、一日でも早く入所させたい! と思っている時ならどうでしょう?
おそらく、説明の半分も頭に入らないのではないでしょうか?
藁にもすがる思いで相談に来られたご家族に対して、どのような対応をするのか?
事務的にケア内容や費用の説明をするのではなく、相手の状況を理解する、一緒に考える、共感するという姿勢を忘れずにいたいと思いました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。