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兼好法師に謝りたい。寝酒より効果的なストレス解消法とは
寝る前にお酒を1杯飲んでリラックス。
仕事や家事でこわばった心と体がほぐれる至福のひとときだ。
しかし、残念なことに、寝酒は本当の意味でのリラックスにならず、それどころか弊害しかない。最近の研究によってとうとうそれが明らかになってしまった。
かの兼好法師は、徒然草にてこう書き残している。
「百薬の長とはいへど、よろづの病は酒よりこそ起これ」
すでに700年も前に、稀代の随筆家はこう教訓を残していたのだ。
にもかかわらず、我々は
「ま、一杯くらいはいいだろ」
「匂いを嗅ぐだけなら」
「我慢したらストレスでかえって体に毒だよな」
なんて言い訳を用意して、自分を甘やかし続けてきた。
しかし近年、アルコールはたとえ少量であっても心筋梗塞や発がんリスクがあるという論文が、権威ある医学雑誌で発表された。
つまり、“一滴も飲まない”という選択肢がもっとも健康的であり、「ちょっとくらいの飲酒はむしろ体にいい」という理屈はもう成り立たないことが判明してしまったのだ。
ましてや寝酒など、たしかに寝つき(だけ)はよくなるかもしれないけど、その後の睡眠が浅くなり、かえって疲れが取れなくなってしまうこともわかっている。
体の疲れだけじゃない。
睡眠中には脳内のゴミ掃除が行われるが、眠りが浅いとその清掃効果も弱くなって翌日の集中力や判断力、記憶力が下がってしまう。
寝る前のほんのいっときの快楽のために酒を飲むと、翌日十分にパフォーマンスが発揮できず、1日を無駄にしてしまいかねない。
するとどうなるかといえば、翌日は満足な1日にならずモヤモヤを抱えたまま夜を迎え、ストレス解消にまた寝酒を飲む。
そうして明くる日も疲れが取れず頭も働かないから十分なパフォーマンスが発揮できず、また夜には寝酒・・・
という負のループを繰り返すことになる。
実に不毛なループだ。そして、かっこよくない。
さすがにもう、真剣に寝酒はやめて他のリラックス手段を模索するほうが賢明だ。
ストレス軽減効果68%!?
では何が飲酒の代わりに寝る前のリラックス手段になりうるか?
新鮮さを感じないかもしれないけど落ち着いて聞いてほしい。
読書だ。
本を読むのがいい。
イギリスのサセックス大学の研究チームの発表によると、なんと読書によるストレス軽減効果は68%にも及ぶとか。
しかも読書はストレスを和らげるだけでなく、集中力アップや死亡率低下の効果まであるそうだ。
(なんだか飲酒と正反対だぞ・・・)
選ぶ本は、ビジネス書のような仕事に関わったり機能的な情報が中心の実用書よりも、小説、詩、哲学、旅行、料理など、情緒的だったり感性に影響を与えてくれたりするもののほうが、リラックスになるという。
一冊に絞る必要はなく、何冊も用意しておいてその日の就寝前の気分に合わせて選べばいい。
そして、ここが大事なのだけど、毎日のスケジュールのなかに就寝前の読書タイムを組み込んでしまうこと。忙しければ5分でも10分でもいい。
スケジュールに入れてしまうのは、就寝前にスマホやテレビのダラダラ閲覧だったり、つい寝酒に走るのを避けるためだ。
ただし、本が面白くてつい読みふけってしまい、睡眠時間を削っては本末転倒なので、最大時間も決めておこう。
そうやって1日の最後に楽しみとリラックスの時間を設けておくことで、
「やるべきことを早く終わらせて早めに床に就けば、本の続きが読める」というふうに、そこをご褒美に日中の仕事を頑張ることもできる。
読書でストレス解消どころか人生も変わる
あなたが実用書以外の本を最後に読んだのはいつだろう?
現代人はスマホを持ったことでひっきりなしに情報が押し寄せ、じっくり読書にふける余裕を失いがちだ。
もしも最近、ゆっくり小説を読んだりする時間がなかったなと思うなら、寝る前に読書タイムを導入してみるのがおすすめだ。
いままで時間がないと手を出せなかった長編小説だって、毎晩コツコツと読み進めていけば完読も夢じゃない。
・どんな本を読もうかなと考える楽しみ
・1日の終わりに本が読めると思いながら過ごす楽しみ
・寝る前に好きな本に没頭できる楽しみ
・そんな毎日を繰り返していくうち、自分自身の世界が広がっていく楽しみ
こういった楽しみが、あなたをストレスから解放し、日々に活力と幸福をもたらしてくれる。
ぐっすり眠って疲れを持ち越さずに済むから、翌日目をさましたときから強メンタル状態で1日をスタートできる。
この機会に、いままで手を出せなかった長編小説に手を出してみてはどうだろう?
追伸
個人的なおすすめ本は、プルーストの『失われた時を求めて』(全14巻!)だ。
学生の頃、本屋で見かけて、
「こんなに何巻もある小説に手を出したら、完読するまでにどれだけ自分の時が失われてしまうことになることか・・・」
と目を背けた過去がある。
つまり、私はまだ読んでいない。
誰か、一緒に挑戦する猛者はいないか・・・