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詩の編み目ほどき

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読むほどに、こころの窪みに清涼のしずくを滴らせる詩を取りあげ、詩人の着想を読み解きます。
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#詩の解釈

詩の編み目ほどき⑤ 三好達治「昼の月」

詩の編み目ほどき⑤ 三好達治「昼の月」

今回は、三好達治34歳の詩集、昭和9年7月刊行『閒花集』より、次の詩1934(昭和9)年4月「世紀 創刊号」初出の「晝 ( ひる ) の月」を取り上げる。旧漢字体、旧かな使い表記。

 晝 ( ひる ) の月     三好達治

 ―― この書物を閉ぢて 私はそれを膝に置く
 人生 既に半ばを讀み了( おわ ) つたこの書物に就て ……私は指を組む
 枯木立の間 蕭條と風の吹くところ 行手に浮んだ

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詩の編み目ほどき⑧ 三好達治「昼」

詩の編み目ほどき⑧ 三好達治「昼」

三好達治の詩を読み解く連作、今回は昭和4年3月『詩と詩論』に初出で、詩集『測量船』に収まる「昼」を取り上げる。先ずは全文を掲げる。 

💠 明治39年の夏、達治6歳の出来事三好達治は、虚構から詩を構成する詩人ではなかった。処女詩集『測量船』は、「村」や「鴉」など小説的描写の趣を持つ詩もあって、フランスの象徴派詩人たちの表現方法に刺激されているのは確かだが、詩の主題の展開においては、自分の実体験か

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詩の編み目ほどき⑨ 三好達治「草の上」

詩の編み目ほどき⑨ 三好達治「草の上」

三好達治の詩を読み解く連作、今回は、昭和5年12月刊の詩集『測量船』より「草の上」を取り上げる。
ただし単行詩集の『測量船』中には、「草の上」という詩が二編ある。そもそも二編は発表時期が違い、「鵞鳥は小径を走る」以下の連は『詩と詩論』での初出タイトルも、「草の上」ではなく、「PETITES CHOSE」( ※仏語で小さな事の意味 ) だった。
三好達治生存中、たとえば1953年3月刊行の自選詩集『

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詩の編み目ほどき⑩ 宮沢賢治「火薬と紙幣」イメージ画像でたどりながら‥‥

詩の編み目ほどき⑩ 宮沢賢治「火薬と紙幣」イメージ画像でたどりながら‥‥

🧵 詩の解釈何度読んでも映像が広がるばかりで、さまざまな解釈を許するむつかしい詩である。先ずは、詩の冒頭部分の印象的な語句を画像によるイメージで示して、賢治の頭に浮かんでいたものを大づかみにしてみたい。

「四面体聚形」というのは賢治の造語かと思いきや、明治時代の鉱物教本のなかに、テトラヘッドライト / Tetrahedrite、という鉱物の性状を示すのに使われている表現だった。

「ラツグ」が

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