カラフル
言わずと知れた作品。森絵都さんのカラフル。昔妹が持っていて借りて読んだ。これも10年以上前だと思うから詳細は覚えてないけど、何だかストンと心がラクになった記憶があった。
森絵都さんの小説の印象は、ろうそくみたいなほんわりとした温かさがある。日常に焦ってしまったり、訳もなく卑屈になる時に選びたくなる。
昔からふと読みたくなることがあったけど、なんだかんだ他の作品に目がいって買うことがなかった。
けど、今回は違って。そういう時だったのかもしれない。
「おめでとうございます!抽選に当たりました」
望んでもいない2度目の人生を送らされる主人公と、そのガイド役である天使プラプラ。
ホームステイと称される2度目の人生、記憶にない家族、学校。
自分とは関係の無いことだから、という気負いのなさが状況を好転させる。
わたしはこの物語の結末がとても大好きだ。
人生は1度きりで、代わりの誰の人生も生きられない。ただ1度、自分としてだけ生きて、幕を閉じる。
だから、成功したいと思うし、上手くやりたいとも思うし、自分より優れた人間は疎ましく妬ましい。自分に余裕が無い時なんて、見下されているような気すらする。
それだけ「生」に対して真摯であるのに、なぜ自分の出来ることには鈍感なんだろう。それは主人公の彼の話ではなくて、私も含めた人間みんなそういう部分がある。
上手くやれなかったら?思い描く未来に到達できなかったら?あの人たちみたいになんでも出来る人生がいいのに。
どんなに上手く生きたって、最後には幕を閉じます。人間はみな等しくいつか死にます。
なんでも出来るように見える人も神ではありません。出来ない何かがあって、ひょっとすると自分には出来てしまうのかも。
こんなことは当たり前のことで、絶対頭ではわかっているけど、拭えない必死さ。無くさなくていいと思う。必死に生きて何が悪い。
ただそれが自分の首を絞めるなら良くはない。
そんな時はホームステイみたいに生きればいいさ。一時的な住まい。間借り。次の魂に生まれ変わるまでは仕方なくこの体に間借りしてるってことで。
四六時中こう思うわけじゃないけど、10年以上前、学生の頃にカラフルを読んでこんな考えもありなのかと知れたことは財産になった。
さて、この間借り、四半世紀過ぎたけどなかなか悪くないんでね。もうしばらく続けさせてもらいます。