いつしかに新しい作者にハマりたくなって、短編集を買った。 にも関わらず、結局好きな作家を追ってしまって本棚に居続けたものを消化。 こうして羅列されると文体の違い、描写の特徴、そもそもテーマや舞台の違いが異なることがよく分かる。 戦後の様子を事細かに取り上げた作品を書かれる方はきっと根底にあるものがそれだから、 他の作品でもそういう思想だったり、当時の教えが反映されているだろうな、と想像する。 不勉強を恥じるべきとは思いながら、そういった話に疎く、また理解も難しいので避けて
昔過ぎてストーリー全く思い出せない本達の1つ。 さて、タイムスリップしましょうかと読み始めると短編小説が4作入ったものでした。 そしてなんと驚くことに、2作はオチを覚えていました……w これってこんな感じだったかな、と予想した方へ物語が進むという、にわか作家気分。とはならず、意外と覚えているものだね、とw 特に、最後のジェットコースターという物語については鮮明に覚えていた。そのくらい強烈で残酷だったから。 山田ワールドにどっぷり浸ったことのある人、 いや、小説の世界にの
あとがきを読むと、短編連作として雑誌に掲載されていたらしいものが1冊になったもの。 うんと昔に買ったきり、忙しくなったり他を読んだりでただただ肥やしになっていた。 読み終えて、肥やしになっていたのは残念だけど、私が読むべきタイミングは今だったのかも、と思った。 交通事故により松葉杖生活を送る女の子を中心として、周辺の人々の物語が時間を行ったり来たりしながら語られる。 弟、弟の友人、クラスに馴染めない女の子などなど。松葉杖少女は事故以来友達がいなくなったのだが、クラスの生まれ
麒麟児からとったタイトル。 内容もまた、それに沿ったもの。優秀な人間から精子提供を受けて出産できるようになったという世界で話は進む。 見た目、学歴、年収……あらゆる情報を元に精子オークションを行う。落札者は速やかに人工授精にて妊娠、出産をするという話。 夫婦関係は望んでいないが、自身が散々虐げられてきた過去を持つ主人公は、優秀な子を産み見返してやりたいと決めている。そのために貯金をし、希望の遺伝子を勝ち取る。 しかし1人目はルックスが気に食わない。申し分ない子が欲しいと2人
山田悠介作品!しかしグロさ0!感動モノでもなく短編集のような本でした。 志高く、夢を叶えて上京してきたのにあっさり夢やぶれた主人公は見かけた求人に釣られて何でも屋でアルバイトを始める。 刺激的な毎日と、時たま入る大金にやりがいを感じるものの、彼女や実家の母には伝えられないまま……というストーリー。 軽快に進んでいくのは山田ワールドそのまま。 程度は違えど理不尽なところに放り込まれるという世界観も山田作品。 仕事って何なんだろう。何のためにやるんだろう。何を条件として選ぶ
全面帯に包まれたかなり薄めの文庫本。とにかく「衝撃」「驚き」という感想が並ぶ。 こんなに短い中でそんなに衝撃の展開が起きるってどんな?? 作品はメールでのやり取りという文体で書かれる。元カノである女性に対して、偶然発見したのでメッセージを送りました、というところから始まる。この2人は過去、女性が忽然と姿を消すという形で結婚間近に破局していた。 その理由が知りたいです、という気持ちを男性側が訴え、物語が大きく進んでいく。 直球な感想を述べるなら、特に驚きはしなかった。 正確
タイトルのインパクトの強さたるや。ひらがな表記というのもインパクトを加速させていながら、なんだか気の抜けてしまうような感じが出ている。 映画化される前に読んでいたはず。残念ながら原作を知っている状態で映像作品に感動したことは無いので映画は見ていない。 タイムスリップものの作品は沢山あるが、多くは現代人が過去へ飛ばされるというものではなかろうか。 ちょんまげぷりんは過去の人が突如現代へと来てしまう。男女の役割が明確だった時代から、男女共同参画社会の現代へとタイムスリップ。
タイトルから不穏な空気ぷんぷん。これぞ山田悠介w 理不尽なルールのもとに、理不尽に放り出されてこその山田ワールド。 この作品がほかと異なるのは主人公が盲目であるということ。目が見えない彼の視点で進むので、視覚以外の情報で情景描写が行われる。 盲目でありながら絵を描く主人公というのも面白かった。 人間社会にはヒエラルキーというものが存在する。それは経済的な話だったり、容姿的な話だったりと多岐にわたるが、全ては才能の話。 金を稼ぐのも才能、眉目秀麗に生まれたのも才能、人に優し
本屋を絵本のコーナー、資格取得、小説とふらついていくと表紙がこちらを向いていて、思い出した。 芥川賞受賞作品。これを手に取ったのはいつぞやの読書芸人か何かで又吉さんがオススメされていたから。 特に普段から又吉さんのオススメを追っている訳じゃないけど、何となく頭の片隅に残っていた。 当時気になったけど、ハードカバーしかなくて止めた。今回は文庫版との出会い。芥川賞とか直木賞とかってなんか堅くて読みづらいイメージが強くて避けてきた。 と、買わない理由をつけているあたり、本心は欲し
私が児童文学の類を脱するきっかけは山田悠介さんだった気がする。 「鬼ごっこ」と馴染み深い遊びの名前がタイトルにつけられたそれは後に映画化までされるヒット作。そんなことは知らず、文庫版で平積みされたそれを家庭内月間図書として母に強請った。 当時ドラゴンだかのシリーズを読んでいたのに突然止めるどころか、到底小学生向けではないものを欲しがるから母に確認されたのを覚えている。 突飛な設定、小学校低学年にはまだ少し難しい文字も表現もあったはずなのに、文体のリズムの良さからかどハマり。
言わずと知れた作品。森絵都さんのカラフル。昔妹が持っていて借りて読んだ。これも10年以上前だと思うから詳細は覚えてないけど、何だかストンと心がラクになった記憶があった。 森絵都さんの小説の印象は、ろうそくみたいなほんわりとした温かさがある。日常に焦ってしまったり、訳もなく卑屈になる時に選びたくなる。 昔からふと読みたくなることがあったけど、なんだかんだ他の作品に目がいって買うことがなかった。 けど、今回は違って。そういう時だったのかもしれない。 「おめでとうございます!抽
死亡フラグが立ちました! というタイトルから軽妙さが伝わる小説で知った作家、七尾与史さん。 昔からテンポよく進む文体が好きで、彼の作品もその一つだった。 ピクトグラムが特徴的な表紙はコミカルな内容を期待させてくれた。 そして、今回書きたい失踪トロピカル。 同じ作者の、同じようにピクトグラムが表紙にいる。死亡フラグ〜はシリーズ物で、2作読んだところだった。シリーズとは違うけれど、同じようにコミカルなお話だろうと信じて購入した。 結果から言うと大いに裏切られた。 大いに。何
不倫相手の赤子を誘拐し、育てる女性の話。主に逃亡記録。友人を頼ったり、隠れ蓑を見つけては転々とする。終盤には拐われた女の子からの視点で描かれる。 この本の印象的な部分は情景描写。色や光、影の表現が多かったように感じる。それはすなわち逃亡している女の心情を暗に示していたと思う。 そして、キーワードになるのが「海」 広大な自然であり、抗えるはずのない存在でありながら、海そのものは太陽から照らされれば色を変え、風に吹かれれば波を変える。 海は変わっていないのに、見る側の心情で変