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ともきんぐ
2022年10月31日 18:27
「え?島そば食べてないの?」絶句するような顔で、彼女、ひよりちゃんは俺の顔を見た。年は俺よりだいぶ下そうなのに、昨日の一件からもう敬語ではなくなり、近所のだらしない親戚の兄を揶揄うように俺に接してきた。その距離感が俺は心地よく、安心してだらしない親戚の兄として振る舞えた。島そばを食べさせてくれるお店で三線を弾きながら歌を歌ってくれたおばあさんがいた。心地よいメロディで、俺は聞き惚れ
2022年10月31日 09:19
今は冬なのか、春なのか、夏なのか、秋なのか。そんな事にも興味を持てないくらい、俺の日々は目まぐるしく、次々とタスクが現れてそれを追う日々。そんな時、一通の招待状が届いた。大学の友人が地元の波照間島に帰り、今は民宿を営んでいて、そこで友人たちを招いて結婚式をするのだと。忙しさのあまり返事をすることも忘れていたが、強制的に有休を取る必要があった俺は流れで波照間島行きを決めた。島に着くと
2022年10月22日 13:56
花火を楽しんでいるうちに、服も乾き、自分の服に着替えたが、着替えたら着替えたで、本当の服が今度は面白くなってしまっていた。何をしても楽しかった。今だったら箸が転がっても笑うかもしれない。そんな冗談が冗談じゃないくらい、ただ、ただ、楽しかった。公民館に帰ってきて、2人で別々の部屋に布団を敷いて「おやすみなさい」と別れた。途端に1人になってしまった事に、戸惑いと寂しさを覚えたが、それ
2022年10月21日 22:36
いつも時間に追われるように仕事をし、時間通りに物事を進めているはずなのに、今日に限っては、時間の感覚がなくなってしまい、俺は宿無しになってしまった。俺だけではない。隣のさっき会ったばかりの楓さんも同様だった。「今日は数少ない宿はいっぱいでさあ。だけど、おじいを助けてくれたあんちゃんたちを野宿させるわけにはいかんさあ、どうだい?公民館なら一晩貸すことができるよ。こんな外じゃ、虫に刺されまく
2022年10月20日 20:34
洗濯したデニムを干そうとしたら、手に白い砂が付いてきた。まるで『忘れないで』そう言われているように、唐突に俺の前に現れた。「夢じゃなかったんだな」あの日の出来事があまりにも今の現実と離れすぎていて、夢だったんじゃないだろうか、そう思う時もあった。手に付いた白い砂が、容易にあの広い空、広い青の世界、波の音を連れてきて、思い出すのは景色だけではなく、景色に溶けてしまいそうなあの人の笑顔。