映画『春の香り』プロダクションノート♯9. (脚本:カマチ)
〇青春
坂野夫婦と同じく、私にも二人の子供が居ます。姉妹ではありませんが、親が子に対して思う気持ちは分かっているつもりです。
病気と闘う娘。その側で共に闘うご両親の様子が、原作には事細かく描かれていました。自分に置き換えて、考えてもみましたが、途中で考えるのをやめてしまいました。想像することに耐えられなかったんです。親として、自分と関わる全ての人間の中で(優劣をつけるべきではないですが)やはり、一番死なせたくないのは我が子で、病に苦しむ姿など見たくない。原作を読み進める内、不安になって来ました。脚本の仕事を受けたものの、自分に描き上げる事が出来るのか?それだけ過度な責任を感じたんです。春香さんを支え続けたご家族の想いに答える事が出来るのか?と。
因みに脚本の依頼元のプロデューサーの堀さんは、私の元マネージャーで、十数年来の友人です。無理だったら彼女に断りを入れようと考えていました。
原作を読み終わり、堀さんへの連絡を先延ばししながら、「さあ、どうしようか?」考えていた時、ふと頭に浮かんだのは、春香ちゃんの青春の姿でした。友人と笑い合いながら下校中の街を歩く。熱中する趣味や、恋の悩み…。それは普通の女子高生のごく普通にある青春の断片で……きっと春香ちゃんは、闘病中にその様な場面を想像したのではないか?
これだと思いました。
春香ちゃんの青春映画を書こう。
堀さん(知ちゃん)に連絡をし、その後、直接ご両親にお会いして、春香ちゃんの話を聞き、春香ちゃんの好きだった事、描いた漫画やイラストを見て想像し、家や街、春香ちゃんが過ごした景色を見て歩き、帰宅後、早速脚本の執筆に取り掛かりました。そして三週間後、最初の脚本(初稿)が出来ていました。
〇貴重な経験
脚本を書くに当たり、大切にしていた事があります。一つは、事実を事実としてちゃんと描く事です。映画は基本フィクションですが、特に病気の進行、それに伴う家族の物理的な状況などには充分気を付けました。もう一つは春香ちゃんとの会話です。当然、春香ちゃんと直接合う事は出来ません。心の中で、何度も何度も春香ちゃんとの会話を繰り返しました。
まあ、女子高生の青春を五十を過ぎたオジサンが書くわけで、そこは慎重に……。
その後、監督の丹野さんと何度も熱いバトルを繰り広げ、(競作)として映画の脚本は完成しました。丹野さんとは今回が三度目の仕事になります。前作(映画『メイド・イン・ヘヴン』)同様、素晴しい作品になっていると思います。
〇映画をご覧になる方へ
素敵な作品になっていると思います。病魔と闘いながらも決して生きる事を諦めなかった春香。彼女の思い描いた青春は、この映画の中に生き続けます。観終わった後、心が陽だまりにあったかくなる様な、そんな作品です。
是非、劇場へ足を運び、素敵な家族に会いに来て下さい。
映画『春の香り』プロダクションノート 第九話 終
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この映画『春の香り』公式Noteでは、映画『春の香り』に関わった方々の普段あまり語られない映画が完成するまでの成り立ちや、映画の細部に宿る物語を、これから映画をお楽しみいただく皆様に向けて、つまびらかにしていく目的で執筆しています。
映画に関わったスタッフを中心にそれぞれの目線で語られる映画『春の香り』今後、続々と更新していきますので、ぜひお楽しみにお待ちください!
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