【スペインの聖週間と復活祭】ハティバの街で見た宗教行列
先月、3月24日(日)から3月31日(日)は、キリスト教徒にとってクリスマスと同様に大切な日、聖週間と復活祭(イースター)でした。
3月29日(金)、私はProcesión(プロセシオン:宗教行列)を見に、バレンシア市内から電車で1時間弱のJátiva(ハティバ)という街へ行ってきました。
お家大好きっ子が、今回はめずらしくバレンシアの市内から飛び出しましたヨ。
今日はレポートと同時進行でバレンシアのもう1つの魅力をお伝えします!
バレンシア県のMunicipio、ハティバ
ハティバは、バレンシア市内から約60kmほど南に位置する、バレンシア県内のmunicipio(ムニシピオ:自治体)です。
バレンシア市よりも内陸側にあり、山に囲まれた地域。
街を見下ろすLa sierra Vernisa(ラ・シエラ・ヴェルニサ:ヴェルニサ山脈)には、稜線を縫うように建てられた長い城壁とCastillo de Játiva(カスティージョ・デ・ハティバ:ハティバ城(要塞))がそびえ立つ風光明媚な街です。
また、歴代のローマ教皇の中で、スペイン出身のローマ教皇はこれまでに3人いて、そのうちの2人はなんとここハティバの出身だとか!
長い歴史の中、ハティバは数々の騒乱の舞台にもなるなど歴史のある土地でもありますが、宗教においても長い歴史を誇る街です。
街の名前はJátiva?それともXàtiva?
サムネイルにはXàtivaと書かれているのに、文中はJátiva?
当noteファンのあなたなら、きっと目ざとく見つけたことでしょう。えぇ。
さすがです!
結論から言うと、Játiva(ハティバ)はスペイン語で、Xàtiva(シャティバ)はバレンシア語。
…と、ここで少し話が脱線しますが、
バレンシアをはじめ、バスク、ガリシア、カタルーニャ…。
スペインのこれらの地方には、公用語であるスペイン語の他に、その地域の公用語があります。
日本語で言うところの方言…のようでもありますが、ちょっと違うのかな。
というのも、これらの言語はそれぞれの地域で公用語として位置づけられているため、バレンシアを例に挙げると、公立、公私半々のConcertado(コンセルタド)の小中高の学校では、スペイン語とバレンシア語の授業があります。
スペイン語は、日本でいうところの国語。
バレンシア語は、その地域の国語、といったところでしょうか。
また、公務員試験の科目にもバレンシア語があるぐらいです。
バレンシア語とは
スペイン語を(少しだけ)覚えて初めてバレンシアに来た時、街の標識や電車、バスのアナウンスがバレンシア語で、はぁぁぁ??スペイン語はどこよ?と混乱しました。
バレンシア語なんて知らんがな!と。笑。
この洗礼というか困ったサプライズは、バレンシアにスペイン語の語学留学などで来る方には、バレンシアあるあるの1つではないかと思います。
バレンシア語の特徴は、スペイン語の中に時々フランス語の響きが混ざっているような…、そんな感じ。
フランス語のような響きというと、カタルーニャ語もまさしくそうですね。
言語学的にはバレンシア語はカタルーニャ語から派生した言語…なんていう歴史もあったりなかったりするのですが、こういう話をすると、多くのバレンシア人はちょっと嫌がります笑。(皆、おらが街ナンバーワン!精神が強いのでね。)
バレンシアでは、郊外の町や村に行けば行くほど、スペイン語よりもバレンシア語を日常生活で話す人が多くいる印象があります。
ハティバではほとんどの人が日常生活でバレンシア語を話します。
そして、ハティバの公式な名前はXàtivaとハティバの議会が発表しているので、本来ならばこの記事でもシャティバと紹介した方がいいのかもしれないと、ただいま心が揺らいでおります…笑。
が、当noteではスペイン語のハティバでいきます!(頑固笑。)
スペインの聖週間とイースター
聖週間とは?イースターとは?
クリスマスやハロウィンが日本独特の感性とやり方で浸透したように、今やイースターも少しずつ日本にニューカルチャーとして取り入れられつつありますね。
イースターというと、カラフルに絵や模様を描いたイースターエッグや、かわいいイースターバニー…。
そんなパステルカラーのメルヘンなイメージが(私には)ありますが、スペインはちょっと違います。
こんな感じ。
パステルカラーのメルヘンなイメージとはまるで正反対の、重々しい世界…。
ところで、日本は仏教と神道が大多数を占める国なので、「イースターって名前は聞くけど、実はよくわからない」という方、多いのではないでしょうか。
実は私もよくわかっていませんでした。
一緒に勉強していきましょう!
ものすごく簡単にざっくり説明すると、イースターとは、復活祭という意味。
十字架に磔にされ絶命したイエス・キリストが、3日後によみがえった復活をお祝いする典礼で、キリスト教の宗教行事です。
欧米他国のイースター行事で卵やウサギが登場するのは、卵を生命の誕生のシンボルと捉え、ウサギは多産で繁殖力が強いことから、キリスト教では生命力や繁栄の象徴として位置づけ、イエス・キリストが復活したこと(復活祭)にフォーカスしています。
この部分の印象が強いため、日本でも最近はチョコレートのイースターエッグが売られていたりすると思います。
しかしスペインでは、復活祭はもちろんですが、その前の受難の時=聖週間にもフォーカスして行事をします。
そしてその行事が結構インパクト大!
スペイン在住の私にとっては、先ほどの写真のような重々しく荘厳なイメージの方が強いです。
ちなみに「イースター」は英語で、復活祭という意味ですが、聖週間は英語で「ホーリー・ウィーク(Holy Week)」と言います。
さらに、聖週間と復活祭は毎年日にちが異なります。
その決め方は春分の日の後、最初にくる満月の次の日曜日がイースター(復活祭)となります。
ということは、その前の日曜日から土曜日までの1週間がホーリー・ウィーク(聖週間)なんですね。
今年(2024年)の春分の日は3月20日で、その後最初の満月になったのは3月25日(月)でした。
そのため次の日曜日、3月31日(日)が今年のイースター(復活祭)なので、その1週間前の3月24日(日)から3月30日(土)までがホーリー・ウィーク(聖週間)でした。
イースターが3月にあるのはそこそこめずらしく、特にバレンシアは毎年3月19日までLas Fallasのお祭りがあって、その間子供たちは数日間の休暇がありますから、今年はLas Fallasが終わって間もなく、イースターで再びの休暇となりました。
子供たちは大喜びだろうけど、大人は大変かも?
バレンシアの大祭Las Fallasについては、こちらをどうぞ♪
Semana SantaとPascua
スペインではホーリー・ウィーク(聖週間)をSemana Santa(セマナ・サンタ)と言い、イースター(復活祭)をPascua(パスクア)と言います。
私、実はつい先日までこの2つの言葉の使い分け方も知りませんでした😅
聖週間と復活祭、ぜーんぶひっくるめて「イースター」だと勘違いしていたので当然ですね。
どちらを使っても意味は通じるでしょ?と勝手に解釈して、なんならその時の気分で「Semana Santaの~」とか、「Pascuaには~」なんて使っていました。苦笑。
で、Semana SantaとPascuaの意味の違いを在住日本人の友人に聞きました!
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今年は3月31日(日)がイエス・キリストが復活する日=復活祭なので、キリストの受難もフォーカスするスペインでは、その1週間前の3月24日(日)、Semana Santa(聖週間)から祭事が始まります。
Semana Santaで重要な日は次の通りです。
まず最初の日曜日。
ナツメヤシの枝が敷かれた道をロバに乗ったイエス・キリストがエルサレムに入城した日で、Domingo de Ramos(ドミンゴ・デ・ラモス:枝の主日)と言います。
この時期になると、ベランダに長いヤシの葉を1本だけ括りつける家を近所でよく見かけるんです。
あのヤシの葉はそういうことだったのか!!
…と、今納得しました笑。
そして、月・火・水を飛ばして、木曜日。
イエス・キリストが12人の使徒と食事をする、これが最後の晩餐ですね。
晩餐の後、イエス・キリストは使徒たちの足を洗ってあげました。
この日がJueves Santo(フエベス・サント:聖木曜日)です。
ちなみにバレンシア州では、州令によりこの日から各学校は12日間の春休みに入ります。
次が、金曜日。
ユダの裏切りによって捕らえられたイエス・キリストがローマ帝国の総督の前で裁判を受け、処刑が決定。
ゴルゴダの丘の刑場まで重い十字架を背負って歩かされ、その十字架に磔にされて絶命した日です。
Viernes Santo(ビエルネス・サント:聖金曜日)と言い、スペインは祝日です。
土曜日。
Sábado Santo(サバド・サント:聖土曜日)は、追悼の日です。
イエス・キリストの母、聖母マリアは息子の旅立ちを悲しみますが、息子の復活を待ち望み、希望を持ち続けます。
そして、日曜日。
マグダラのマリアがイエス・キリストが埋葬されているお墓に行くと、お墓を塞いでいた岩が崩れていることに気がつきます。
お墓の中はもぬけの殻。
彼女がお墓のそばで泣いていると、背後から「なぜ泣いているの?」と声をかけられます。
驚いて振り向くと、なんとそこにはイエス・キリストの姿が!
イエス・キリスト復活の日、Pascua(復活祭)です。
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というわけで、ここからはスペイン語のSemana SantaとPascua表記にしていきます。
(みんなスペイン語ついてきてー!)
聖土曜日以外のSemana SantaにおこなわれるProcesión
いつも陽気でお祭り大好き!お喋り大好き!…とイメージされがちなスペイン人ですが、Semana Santaはそんなスペイン人が寡黙になる日…などとも言われます。
賑やかなスペイン人が、Viernes Santo(聖金曜日=イエス・キリストが命を落とした日)、寡黙に、厳かにおこなう行事。
それがProcesión(プロセシオン:宗教行列)です。
Procesiónでは、先ほど紹介した枝の主日のDomingo de RamosからSábado Santo(聖土曜日)までの出来事を再現した大型の山車を、祭服に身を包んだ大勢の人が足並みをそろえて担いだり、押したり引いたりして、街の中をパレードします。
山車ごとにドラム隊や音楽隊がついていて、彼らの素晴らしい演奏と絢爛豪華な山車の行列は、圧巻の一言に尽きます。
スペインのProcesiónといえば、アンダルシア地方のセビージャやマラガのProcesiónは規模が大きく有名です。
今年のマラガでのProcesiónの様子がこちらです。
残念ながら、今年セビージャのProcesiónは雨天のため中止になってしまいましたが、マラガではおこなわれたようです。
私の超個人的なイメージですが、Semana Santaの時はいつもなんだかお天気が良くなくて、Pascuaの日は晴れるというイメージなんですよね。
Semana Santaはイエス・キリストの受難の期間なので、人々の悲しみや哀悼の気持ちが、そして復活したPascuaの日は人々の歓喜の気持ちが、もしかして天候を左右させてしまうのではないか…なんて、思わず考えてしまいます。
日本のお正月がどこかピリッとした空気に感じるのと同じかな…なんて。
オカルティックな話はこれぐらいに、Procesiónは、スペインの他の地域でもおこなっている所があります。
バレンシア市内では、マルバロサビーチ沿いのEl Cabañal(エル・カバニャル)地区でおこなわれます。
そして、もう1か所が今回私が行ってきたハティバ。
バレンシアではハティバのProcesiónが有名だと思います。
⚠️注意事項
ProcesiónはSemana Santaの間におこなわれますが、聖土曜日はProcesiónをしません。
また、地域によってProcesiónの開催日が異なりますから、お目当ての地域のProcesiónを見に行く際は、事前に日程を調べておくことをおススメします。
ハティバのProcesión
Semana SantaとPascuaは宗教行事のため、この期間はスペイン中の教会で毎日様々な儀式や催しがあります。
その中でも、私たち一般の見物客にとってはやはり、すべての山車とCofradía(コフラディア:同胞団)が一同に会するProcesiónがいちばん見ごたえがあります。
先述のとおり、地域によってProcesiónの開催日が異なりますが、ハティバでは毎年Viernes Santo(聖金曜日)におこなわれます。
3月29日(金)。
この日バレンシア市内は、朝から風が強く、午後私が駅へ向かう頃、空は真っ黒いいや~な雲に覆われていました。
その後その黒い雲がまるで電車を追いかけているかのように、空はどんどん怪しい色になり、とうとう雨が!
ハティバ駅に着いた時はすでに小雨が降っていました。
私もとうとう雨女デビューしちゃった!?
Procesiónが決行されるのか心配になりました。
が、幸いその後雨は上がり、Procesiónは1時間遅れでスタートするのでした。
Procesiónスタート!
Procesiónは、街のいちばん大きな教会La Iglesia Colegial Basílica de Santa María(ラ・イグレシア・コレヒアル・バシリカ・デ・サンタ・マリア:サンタ・マリア大聖堂)から出発し、街の中をグルッと周ります。
山車の数は12台。
山車にはそれぞれ同行するCofradíaメンバー、山車を運ぶCofradíaメンバー、そして音楽隊(もしくはドラム隊)がついて練り歩きます。
山車は担ぐタイプと、台の下に車輪がついているタイプ、自動車のように自動で動くタイプがありました。
また、山車のないCofradíaもいます。
鎖を引きずる音もまた、演出に一役買っています。
罪の重さ、痛みみたいなものがひしひしと伝わります。
ローマ兵の登場など、時代背景もしっかり演出されていて臨場感があります。
衣装と言えば、お次はなんだか怪しげないでたちのCofradía。
アンダルシア地方も含め、Procesiónでは目がくりぬかれた三角頭巾をすっぽり被った衣装の人がいます。
Nazareno(ナサレノ:ナザレ人)というカトリック信徒団体から由来するカトリック信者の衣装のひとつで、この覆面の三角頭巾をCapirote(カピロテ)と言います。
また、Capiroteを被った人のことをPenitente(ペニテンテ:懺悔する人、苦行者)と呼びます。
この三角頭巾姿を見ると、どうしてもアメリカのKKK団(クー・クラックス・クラン)を連想してしまいますが、KKK団はスペインのPenitenteを模したと言われていて、スペインのPenitenteはあくまでもカトリックの宗教に基づいたもの。決してなんちゃら至上主義者ではありません。笑。
Procesiónの終盤は、イエス・キリストが絶命した後の出来事を再現した山車が次々と行進してくるわけですが、イエス・キリストの遺体を納めるための棺を引いてきたのは、なんとかわいらしいドレスやタキシードに身を包んだ少年・少女。
彼らは今年Primera Comunión(プリメラ・コムニオン:初聖体拝領)を控えている子供たちです。
棺を運ぶのは、Primera Comuniónを控えた子供たちの役目のようです。
Procesiónには推し活がある?!
行進する各Cofradíaは、行進のし方や山車の運び方もそれぞれです。
途中で山車を高く持ち上げたりするなど、パフォーマンスをするCofradíaもいます。
隊の前、もしくは後ろについている音楽隊やドラム隊もまた、独自の演奏曲やパフォーマンスがあります。
山車は聖書を基にした受難の各シーンを切り取って再現したものですから、それぞれに思い入れのあるシーン、もしくは山車の芸術性などからも人それぞれに好みが分かれます。
そういった理由から、スペインのProcesiónには山車ごとに追っかけがいます。
追っかけなんて言うと、荘厳なProcesiónも興ざめな表現ですが大丈夫。
ちゃんと名前があって、彼らのことをCapillita(カピジータ)と言います。
というわけで、私も早速Capillitaよろしく推しCofradíaができました。
彼らのリズミカルで力強いドラム捌きが鳥肌級!
屈強な(おそらく)男性陣ばかりの中に混じって、かわいい男の子が頑張ってドラムを叩いてるのもキュンです🫰ポイント高し!
ちなみに、今回このProcesión見物に誘ってくれた友人の推しCofradíaはこちらです。
このCofradíaが登場した時、見物客が一斉に立ち上がり歓声が上がりました。
推してる人多い模様。
受難のシーンとしても、キリスト教としても、最も象徴とされる場面なので、思い入れの強い人は多いのかもしれません。
それに、このCofradíaのパフォーマンスが実はどのCofradíaより最もアグレッシブだったので、ファンが多いのも納得です。
最後に
推しCofradíaとは別に、個人的にグッときたのはこちらの山車でした。
イエス・キリストがロバに乗ってエルサレムに入城するシーンから一連の山車を見ていくことで、キリスト教徒でない私でも、この1週間の間に彼の身に何が起きたのか、まるでドラマか映画でも見ているかのように物語の中にどっぷり浸かっている中、終盤に登場したこの山車を見た時は、思わず胸が詰まりました。
これはあくまでも祭事で、実際に運ばれているのは生身の人間ではないんだけれども、夫の死や親友の死に直面したばかりの私にとっては、生死のテーマはまだ衝撃が強すぎるというのもあります。
宗教について、生死について、なんだかとっても壮大なことを改めて考えさせられるひと時でした。
今回のProcesiónは、ゆっくりとした行進でたくさんの山車が登場するため、全体を見終えるまでに3時間近くかかりました。
でも全然飽きなかった!
むしろ、え?もう終わり?と思うぐらい!
終電の時間も迫っていたので、Procesión終了後は大急ぎで駅に向かったのですが、後ろ髪惹かれる思いでバレンシア市内へ帰りました。
ハティバのProcesión見物、リピート確定です!
でも…、
こんな一地方都市のProcesiónですらも大感動だったのだから、もっとスケールが大きいセビージャやマラガはどんなものなんだろう。
情報では、ムルシア州カルタヘナのProcesiónは、まるで某夢の国のエレクトリカルパレードのようにピッカピカのキラッキラ✨なProcesiónらしい…。
むむむ…。
セビージャ、マラガ、カルタヘナのProcesiónも見に行きたい!
来年のSemana Santaは4月13日から始まり、Pascuaが4月20日です。
スペイン各地でProcesiónがおこなわれるViernes Santoは、4月18日です。
来年はどこのProcesiónを見に行こうかなー♪
今から1年じっくり悩むことにします!
《今回取り上げた場所》
🗺️Játiva - Xàtiva(ハティバ - シャティバ)
🏰Castillo de Játiva(ハティバ城(要塞))
🗺️El Cabañal(エル・カバニャル地区)
⛪La Iglesia Colegial Basílica de Santa María(サンタ・マリア大聖堂)