【短編小説】 6月21日(3)
JRから私鉄に乗り換える。
鉄橋の上を電車が滑るように走る。
3本の川を渡れば県境を越えてそこからは都外だ。僕は電車のなかで長い手紙を書いていた。とても長い手紙。このフレーズは小沢健二の楽曲〈ぼくらが旅に出る理由〉を彷彿させる。
とても長い手紙。この歌を口ずさむとかならず夏目漱石の小説『こころ』で、先生が主人公に宛てた手紙。あの長い手紙を読んでいる主人公の様子を想像してしまう。そして僕はいつも、なぜだかくすりと笑ってしまうのだ。
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