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【短編小説】 余剰エネルギーが向かうところ
当時を振り返って(記事へのひと言コメント)
これくらいのサイズの物語を、爆速サイクルでつくっていくうえで、だんだん自分なりの「型」のようなものを意識できるようになってきた。それはどのように物語を終わらせるか、ということです。
人間は、基本的には、エネルギーが有り余っている。その有り余っているエネルギーをどのように消費するか。人間の生活とはそのようにして成り立っている。
人間は、食べること、眠ること、生殖することの三大欲求さえ満たせば、種として存続可能だ。けれど、人間は、三大欲求を満たすことだけでは消費し尽くせいないエネルギーを個々の体に秘めている。人間生活とはそのやり場(余剰エネルギーが向かうところ)のことを言うのだ。
つまり、人間に余剰エネルギーがある限り、人間は労働することをやめない。どんなに世の中が便利になって、AIが人間の代わりにせっせと働くてくれるようになったとしても、人間は働くことをやめない。また新しい職種をどうにかして生もうとする。
僕のなかにもエネルギーが有り余っているのを感じる。僕のなかにあるエネルギーは、僕の眼には見えないが、僕のなかでとぐろを巻いているのを感じる。僕はそのやり場(余剰エネルギーが向かうところ)に困っている。
ベッドに横たわって天井を見上げてこのままなにもしないでいることも可能だ。けれど、頭のなかでは脳が忙しなく回転して、将来、現在、過去の不安が混濁する。僕はそれら不安が、まぶたの裏のスクリーンに繰り返し投影されるのを見つめている。ただ見つめている。つまらない実験的な白黒映画を見ているみたいに時間だけがいたずらに過ぎ去っていく。
まぶたの裏に投影されていた映画を見続けても不安が姿を消すことはない。むしろ、影はますます伸びて、影の発端である僕自身の実存をも飲みこんでしまうみたいだった。
生きている理由もないけれど、死ぬための理由もない。無味乾燥な人生。それなら別段つらくもない。
僕が生きることにつらさを感じるのは、生きている理由をどうにか探そうとするからである。自分に価値を見出そうとするからである。自分なんて無価値だ、無価値なままでいいのだと、開き直ることができたらどんなに楽だろう。僕は、部屋のなかで、加熱式タバコをふかした。
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