ワークスタイルも多様性の時代!政府も後押しする「ワーケーション」
リモートワークが普及したのと同時期によく耳にするようになった「ワーケーション」。ワーク?バケーション?いったいどのような意味なのでしょうか?
ワーケーションは近年急激に広まりを見せており、政府の後押しもあって市場規模も拡大しています。楽しみながら働く、という新しい概念について、この機会に理解を深めていきましょう。
ワーケーションとは?
ワーケーションの定義
英語圏のメディアでは「workcation」と綴ることが多い「ワーケーション」とは、字の通り「work」「vacation」を組み合わせてできた造語であり、観光地やリゾート地でテレワーク・リモートワークを活用し、働きながら休暇をとる過ごし方を指しています。
近年では、Business(ビジネス)とLeisure(レジャー)を組み合わせた「BLeisure(ブレジャー/ブリージャー)」というものも生まれており、こちらは出張の滞在を延長して仕事が終わった後に旅行を楽しむというもので、ワーケーションの一種と言えるでしょう。
テレワークを広く社会に普及させ、ひいては日本社会の持続的な発展につなげることを目指している一般社団法人日本テレワーク協会では、ワーケーションを「休暇」であり「チーム力や創造力を高める働き方」であると定義しているようです。
ワーケーションは非日常の場面で仕事を行うことで生産性や心の健康を高め、相乗効果を目指すことができるとして、大きな注目を集めています。
日本ワーケーション協会ではワーケーションを7つのタイプに定義しています。7種類のワーケーションはそれぞれのライフスタイルによって変化し、必ずしも1つのタイプだけに当てはまるのではなく2つ以上が該当することも。7つのタイプについては後ほど解説します。
政府も後押し
ワーケーションはただのブームに留まりません。環境省が補助金の支給を決めるなど、国もワーケーション普及に向けての動きを強めています。この取り組みは、コロナ禍で打撃を受けた観光地への経済対策の一つとして導入されることになりました。
旅館やキャンプ場で行うワーケーションの環境設備の支援をすることで、地方都市や観光地の活性化を目指しているようです。
旅行業界にとってもワーケーションの流行はまたとないチャンス。JTBや日本旅行など、多くの旅行会社が個人だけでなく企業や自治体に向けてワーケーションサポートプランを打ち出しており、今後のワーケーション市場はさらなる成長を見せると考えられています。
テレワーク・リモートワークとの違い
ワーケーションがどういうものなのか、イメージはつきましたか?「旅先でテレワークをするってこと?だったらテレワークやリモートワークとはどう違うの?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここで、改めて「テレワーク」「リモートワーク」についても確認しておきましょう。
「テレワーク」と「リモートワーク」は同義語として使用されている言葉ですが、「テレワーク」という呼び名は厚生労働省が使用しているもので、「情報通信技術(ICT)を利用し時間や場所を有効に活用する働き方」を指しています。
「リモートワーク」はオフィスから離れて仕事をすること(在宅勤務やコワーキングスペース、カフェなどで仕事をすること)です。どちらも「オフィスから離れて仕事すること」を指しており、同じ意味として使われています。
対して、ワーケーションには「休暇」が含まれます。テレワーク・リモートワークを利用して、「休暇」も「仕事」も両立させるのが「ワーケーション」なのです。
ワーケーションのタイプ7種
日本ワーケーション協会ではワーケーションを7種類に分類しています。7つのタイプをそれぞれ見ていきましょう。
1.休暇活用(観光等)型:Vacation
観光を楽しみながら普段通り仕事を行うワーケーションがこのタイプにあたります。
このワーケーションを行うのはフリーランスや個人事業主の方が多く、日本では実施期間は2、3日と短めのことが多いですが、外国人観光客が行うワーケーションは長期間実施されることもあるようです。費用は仕事も観光も基本的に個人負担です。
2.拠点移動型(不動産型):Location
生活や働く拠点を動かして分散させるタイプのワーケーションです。
一定の期間で実施されるケースが多く、合理的な範囲であれば企業が通勤費を負担してくれます。コロナ禍の2020年に増加したワーケーションタイプです。
毎月定額を支払うことで全国にある宿泊先や生活拠点が選べるサブスクリプションサービスも登場しています。
3.会議型:Communication
普段の職場と違う場所で会議を行うワーケーションタイプですが、通常のリモートでの会議とは異なり、プロジェクトの立案や発表を目的とする短期間集中合宿などが該当します。
そのため実施期間は2日から3日と比較的短く、出張として扱われます。
4.研修型:Education
普段の職場ではない場所で集中的に研修などの教育を行うワーケーションです。
実施期間は幅広く、数日~数ヶ月とまちまちです。こちらも会議型と同じく出張として扱われます。
5.新価値創造型:Innovation
複数の企業で行い、交流を通じて新たなビジネスを生み出すワーケーションです。
一定の期間実施され、共同で新規事業を創出することが目的です。会議型や研修型と同じく出張として扱われます。
地方でビジネスマッチングを行うこともこのタイプに含まれます。
6.地域課題解決型:Solution
地域の課題解決を目的としたワーケーションです。
地域課題をテーマとして研修やスキルの提供、地方に関わる副業・複業活動などさまざまな活動を行います。実施期間は研修型と同じく幅広く、数日〜数ヶ月とまちまちです。
7.ウェルビーイング(福利厚生)型:Motivation
社員の動機づけを目的としたワーケーションです。
保養所、健康増進、リカレント教育と呼ばれる社会人のための学び直しなどを福利厚生として会社が提供し、費用も負担します。実施期間は数日〜数ヶ月と幅広いのが特徴です。
メリットとデメリット
多くのメリットが見込めるワーケーションですが、もちろんデメリットも存在します。どちらも理解した上でワーケーションを楽しみたいですね。
メリット
ワーケーションのメリットは何と言ってもリフレッシュしながら仕事ができること。ワーケーションで得られる3つのメリットを解説します。
長期休暇を取得しなくても旅行に行ける
旅行のためにせっかく休みをとったのに、様々な理由でキャンセルになった経験はありませんか?遠方に旅行するならある程度の長期休暇が必要になります。仕事の調整や有休消化が必要になり、なかなか休みが取れない方も多いのではないでしょうか。
しかし、ワーケーションなら休暇も仕事も両立できます。休み中に仕事のことを気にしてそわそわするくらいであれば、いっそのこと休暇に仕事を組み込んでしまうという発想の転換はどうでしょう。メリハリもできて気持ちもスッキリするのでは?
リフレッシュできる
テレワーク・リモートワークのために自宅の環境を整えても、同じ環境でのルーティンワークは飽きてしまいませんか?通勤に時間を取られないのが在宅ワークの大きなメリットですが、外に出る機会も同時に減ってしまい、仕事とプライベートの切り替えが難しくなったという声も多く聞かれます。
ワーケーションでは自分の好きな場所を選んで仕事をすることができるので、仕事の環境さえ整えることができれば、海や山など自然に癒されながら働いてリフレッシュすることもできます。
癒されるだけでなく、普段は会うことがない人と出会うことができるかもしれませんし、さまざまな感動や体験が刺激となり、仕事のアイデアにつながることもあるかもしれませんね。
生産性アップが見込まれる
普段とは違った場所で仕事をすると、脳が活性化して生産性が高まると言われています。普段と違う環境が刺激になるとともに気分転換にもなるため、ストレスの軽減や意欲向上にもつながります。
デメリット
ワーケーションは最近急激に広がりを見せてはいるものの、まだまだ一般的な働き方となるには至りません。そのため所属している企業や旅行先で環境が整っていないことも。ワーケーションの3つのデメリットを確認しておきましょう。
仕事と休暇の境目が曖昧になってしまうことも
ワーケーションは仕事と休暇を両立できるのがメリットではありますが、仕事と休暇の境界線が曖昧になってしまうというデメリットがあります。
休暇と仕事を完全に分けることが難しいため、切り替えが苦手な人には向いていないことも。
環境が整っていない場合がある
通信環境や机・椅子などの作業環境が整っていないと、そもそも仕事ができないケースや、長時間の作業が難しいというケースも。
そうなると、仕事が進まず余計なストレスが増えて、せっかくの休暇も台無しになってしまうかもしれません。
企業の導入には多くの課題がある
テレワーク・リモートワークはコロナ禍で多くの企業に普及しましたが、全ての企業が導入しているわけではありません。
ワーケーションに関してはテレワーク・リモートワーク以上に、勤務時間の設定や勤怠管理などをどのように扱うかが難しく、旅費や交通費を経費から出すのか、個人負担もありにするのか、といった問題もあります。
ワーケーションを導入するために新しいシステムを組むなど、多くのコストや手間がかかるとなると二の足を踏む企業も少なくないでしょう。
また、日本では労働基準法で雇用主側が勤務地を定めることになっています。ワーケーション先での怪我や事故は労災認定が難しくなるという問題も。
デメリットは解消される?
多くのメリットがあるワーケーションにはデメリットもありますが、これらのデメリットはテレワーク・リモートワークがさらに一般的になり、技術的な課題が改善していけば解消されるものがほとんどだと言われています。
実際にワーケーションを体験してみよう
考えるより生むがやすし、ワーケーションを実際に体験してみてはどうでしょうか?ワーケーションに必要なものや休暇と仕事を両立するための心構えを知っておきましょう。
ワーケーションに必要なもの
ワーケーションに必要なものは主に「Wi-Fi」と「観光資源豊かな土地」の2つですが、ご家族とワーケーションを楽しみたい場合は「家族同行でも仕事ができる環境」があるといいでしょう。
Wi-Fi
インターネットの普及によってテレワークやリモートワークが可能となった現代。Wi-Fi環境は旅行先や観光地で作業するために必要不可欠です。
スマートフォンのテザリングやポケットWi-Fiはワーケーションの強い味方ですが、場所によっては電波が不安定になる可能性もあるので注意が必要です。
観光資源豊かな土地
ワーケーションを楽しむなら、観光地として魅力的な地域を選びましょう。
リフレッシュできるところ、景観が良いところ、アクティビティが充実しているところなど、観光資源が豊かなところを選ぶのがポイントです。
ワーケーション向けのプランを用意している自治体や、ワーケーションを特集している旅行サイトもあるので、下調べも楽しんでみてください。
家族同行でも仕事ができる環境
ワーケーションと家族旅行を組み合わせる場合は注意が必要です。特にお子さんが同行する場合は、仕事をする場所の確保に頭を悩ませる方が多いようです。
ご家族がいる場ではミーティングも気を遣いますし、仕事に集中しづらいですよね。
そういった悩みはワーケーションスペースが別に用意されている宿泊施設やワーキングスペースを探しておけば解決できます。
「楽しむ+仕事」を両立するために
ワーケーションを実りのあるものにするには、旅の空気を楽しむことやテレワーク・リモートワークに慣れておくことなどが必要です。3つのポイントをおさえておきましょう。
仕事と休暇のバランスを保つ
まず1つ目のポイントですが、「非日常の空気」を楽しむ意識が大事です。
観光に重きをおきすぎると仕事が疎かになり、仕事を重視しすぎるとリフレッシュしづらく、ワーケーションを窮屈に感じてしまうかもしれません。
仕事と休暇のバランスを保つことを常に意識してみてください。
テレワーク・リモートワークに慣れておく
準備や環境設定など、いつもと違う場所で仕事をすることに慣れておく必要があります。いざという時に必要な環境が揃っていないと、仕事の生産性が下がってしまうことも……。
これらはテレワークやリモートワーク、ワーケーションをこなすことで解決する問題ではありますが、慣れないうちは周りにいる出張やワーケーションの達人たちに教えを乞うといいでしょう。
休暇もしっかりと取る
ワーケーションは仕事でもあり休暇でもあります。働く曜日や時間帯を決めておくなど、上手に切り替えて、しっかり休暇できるようなスケジュール管理が必要です。
まとめ
ワーケーションは「楽しみながら仕事をする」という理想的なワークスタイルですが、まだまだ環境が整えられているとは言い難い状況なので、社会全体で取り入れるには少し時間がかかると考えられます。
テレワークやリモートワークと同じくワーケーションに対しても賛否両論はありますが、最近では政府もワーケーションのための後押しを始めており、効果的な働き方であることが受け入れられつつあるようです。
普段からテレワーク・リモートワークで働くフリーランスなら、ワーケーションは比較的取り入れやすいワークスタイルと言えますね。遠方の旅行は難しくても、近場の温泉やスーパー銭湯、普段は泊まらないホテルに宿泊して仕事をするなど、本格的なワーケーションではなくミニワーケーション・プチワーケーションと言えるような働き方をする人もいるようです。
企業がワーケーションの導入を成功させるためにはさまざまな準備が必要になります。社員の精神的余裕やリフレッシュは重要なことですが、ただ遊ぶだけにならないためのルール作りも求められます。
今後、ワーケーションという新しい働き方が珍しいものではなくなる日もくるかもしれません。休暇と仕事のバランスを取ることを忘れずに、次の休暇先をイメージしてみるのもよいかもしれませんね。
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