【ほぼ毎日エッセイ】梅雨の時期、だからこそ。

【2019/06/30】
度々の主張で大変恐縮だが、私はどうにもこの季節が嫌いだ。
全身がベタベタするし、天気も変わりやすい。
「あっ!晴れてる!」と心喜ばせたのもつかの間、ご機嫌なお天気からあれよあれよと曇天の空模様へと変貌し、あたりを真っ暗闇にして雨を降らせる。
その度に「はぁあもうまた雨か」と嘆くのにも疲れつつも、家に引きこもったところで私の精神衛生上よろしくないため、この時期は結局生きてるだけでストレスを抱える羽目になるので、出来ることならこの時期だけは湿気とも雨とも無縁な地域に移住したいとさえ思う。

そんな私が絶対に移り住んではならない国がある。
それはイギリスだ。
イギリスは年間通して雨の日が多く、ロンドンなんかは霧の街なんぞと呼ばれている。
霧の街なんてなんともロマンチックな響きであるが、先行き不透明なのは我が人生くらいにしてもらいたい。
実際の降水量は日本の方が多いそうだが、イギリスでは短時間降る雨が年に何日もあるとのこと。
降る量はそこまで多くなく、霧雨やら小雨が大半で、土砂降りになったところで30分も待てば止むんだそうだ。
そんなところからイギリス人は傘を持ち歩かないらしい。
私なら小雨にも濡れたくないので折りたたみ傘を持ち歩いてしまう。
この辺が英国紳士と大兵肥満の違いだろうか。
なんと言われようと汗と雨でぐちゃぐちゃになるのはどうしても避けたいのだ。

そんな雨の日が多いイギリスだが、その風土からか雨の楽しみ方を心得ているらしい。
"音楽1つをとってしても、”雨”という言葉から別れや悲しみなどを連想させるのは日本人的な発想で、彼らは反対に「雨に唄えば」の様な明るいイメージで曲を作る。
「雨でも楽しもうよ!晴れたらラッキーじゃん!」
そんな感じの彼らのスタンスが曲作りにも現れているんですよね〜"
グダグダと起きて漠然とつけていた録画の関ジャムを眺めていると、音楽プロデューサーがそんな事を話しており、それを聞いた私は「なるほど。彼らはその境遇でも何か楽しい事を見出そうとしてるのね」と顎に手を当てながら存分に意識を高めた。
喉が渇いたので一時停止をして立ち上がり、キッチンに向かう途中、パッと視界に彼女のPentaxのカメラが入る。
「…これだ!」
今日は天気がぐずついているものの、そこまで強い雨は降りそうもない。
善は急げだ。
歯医者から帰ってきてトイレに籠っていた彼女に、「今日は紫陽花の写真を撮りに行こう!そして今日からカメラを趣味にする」と宣言をして、人のカメラにもかかわらず家の中でパシャパシャと練習を重ねた私は、小雨なんぞ気にすることのないくらいには気分が上がっていた。
心の中で「アイムシンギンインザレイン〜♪」と口ずさむ程だった。

珍しく雨の日にご機嫌な私と、先日フィルムカメラを買った彼女とで家から30分もかからない飛鳥山公園へ向かった。
王子駅につくと、既にホームからちらほら撮影をしている人達が見える。
「少しテンション上がるね〜」
使い方を確認しながらそんな話しをしているうちに、もうそこには沢山の紫陽花があった。
しっかり紫陽花を見るのなんていつぶりだろうか。
「綺麗だねな〜」なんて話しながら2人で写真を撮り続けていると、少し汗ばんできた。
思えば坂を登ったりちらほら歩いていたので、のども渇いている。
お水でも買おうと思ったが、「かき氷が食べたい」と強く思った私は、それを彼女に告げて十条にあるかき氷屋さんへ向かうことにした。

気がつけば1時間ほど写真を撮っていた飛鳥山公園を後にし、東十条へ降り立つ。
この時期恒例で開催されている地域の夏祭りを抜け、目当ての店「だるまや餅菓子」へ向かう。
人気店なだけあって数分待つことは覚悟していたが、すんなり入店できた。
メニューを見るやいなや”ブルーベリー”に心惹かれたものの、店員のお兄さんにお勧めされるがまま”もも”を注文した。
彼女も”もも”にするのかと思いきや”あまおう”を注文。
この辺の意志の強さが私との違いである。

到着したかき氷を一通りカメラに収めてから、かき氷は溶ける事を思い出し一口頬張った。
砂糖の甘みは全然なく、”もも”の甘さが全開でとにかく美味しい。
2〜3口食べ進めたころ、彼女の"あまおう"も到着。
すかさずそちらの山にスプーンを突き刺し、味見をした。
これまた美味しい。
甘酸っぱくてなんとも美味だ。
「かき氷はこんなに美味しいのか!」
そう思った私は、ここでも1つ宣言する。
「今年の夏はたくさんのかき氷を写真に収める!」
人のカメラを首にぶら下げておきながら随分偉そうだが、そんな事はきっと思っていないのだろう。
彼女は「それじゃあ沢山かき氷食べられるね〜」と呑気に話した。

再び夏祭りの喧騒に戻ることはなく、遠回りしながら赤羽駅まで歩き、京浜東北線に乗りこんだのが、16時。
今は明日に備えて2人で寝転がっている。
雨ばかりの梅雨でやる気が起きない時こそ何か新しい事を始めるというのが大切なのかもしれない。
だがまぁ晴れるに越したことはないが。
毎週日曜日の夜に、心の中で鬱蒼と降る雨も30分くらいで止んでくれないかと思いながら明日に向かって眠りにつく。

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