【ほぼ毎日エッセイ】時計の針と海苔巻きとフライドチキンと
【2019/07/04】
キーボードに置いていた手をそっと離して、壁に立て掛けられた時計に目をやると、針が午後9時10分を指している。
残業も3時間を超えてくるとどこまでも行けるように思えてくるのは何故だろうか。
びっくりびっくりどんどん不思議な力が湧いてくるのだ。
自分でもよくわからないし理解できないが、本当に朝までできるような錯覚に陥り始めた頃「嗚呼もう今日は帰る」と言う上司の言葉で緊張の糸が切れた。
ふぅと一息ついて時計を見上げると、既に針は10時を指している。
私の机の上にはからの缶コーヒーが2本、肩を寄せ合いながらたっていた。
パソコンを閉じ、いそいそと資料を整理してロッカーへ放り込んだら勇み足で裏口へと向かった。
社内にまだ残っている他の社員へ「お先です」と心の中で呟いて、降りてるシャッターを開ける。
駅までは徒歩10分。
同じ駅を利用している上司と他愛もない話をしながら帰った。
「俺は残業代つかないからねー」
なんて冗談交じり笑顔で話しながらもこの時間まで残る上司に「憧れる」とはならないまでも、会社を出たら趣味の話や週末のことに話題を変えてくれる彼を人として尊敬した。
社外でしっかり人間味のあるところを見せてくれる人には、仕事でも誠心誠意返せるようにしようと思える。
そんな一面が垣間見えた帰り道の10分という短い時間が、大変貴重な時間と変わった。
「この人にも家庭がある。本当はここまで残りたくないはずだけど、それでも精一杯やる」
どこまで私が見習えるかわからないが、こういうところに私はグッとくる。
“見せない美学”もあるけれど”見せる美学”もあると思うのだ。
やっぱり弱さを見せてくれる人が好きだなと、京浜東北線に揺られている帰りの道すがら1人考える。
もちろん弱さを見せることが正解なわけでもないし、それは人それぞれだけれど、私はやっぱり人間らしく弱いままの自分も肯定してやりたい。
そんな自分を守るために少し強くなろうと思えたりするところもあるからだ。
弱い自分を認めること、何が嫌いで何が嫌かをしっかり知ること、そんな事から自分を守るためにより強くあろうと努力すること。
きっとそんな事が大切なんだろうなと、私より少し先に帰ってきた彼女が買っといてくれた海苔巻きとフライドチキンを食べながらダラダラこれを綴る今思う。
残業と同じくらい酷い残尿をどうにかせねばならないと思いながら、銀色に光る缶のプルタブに指をかけながら58分後に迫り来る明日を憂う。
うーん。
やっぱりお風呂から上がったらそいつをぷしゅとやろう。
残業の汗と残尿の匂いを綺麗に洗い流してからそいつをぷしゅっとやる瞬間、私の木曜日も一緒に弾けて終わるのだ。
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