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解雇規制緩和はブルーカラー業界を救えるのか?

風雲急を告げる自民党総裁選、その中で一つの大きな焦点となっている政策がある。それが解雇規制緩和だ。

今最も勢いに乗っている総理候補の一人である小泉進次郎議員が、自身の政策方針の一つとして、解雇規制の緩和を盛り込んだのだ。

この解雇規制の緩和には、既に多くの賛否両論の声が上がっており、筆者も日本社会や日本人サラリーマンと企業との関係性を鑑みれば、解雇規制の緩和はメリットよりデメリットが多いのではないか?と感じている

しかし、何事もマイナスがあればプラスもある。もし解雇規制の緩和が実現すれば、大きな改善が見られるのではないか?と期待される問題がある。それがブルーカラー業界の人手不足問題だ。

令和の日本で深刻なのがブルーカラーワーカー、現場仕事の人手不足である。筆者が属する製造業界でも人手不足問題は深刻であり、シフト勤務の現場職で採用募集をかけても、なかなか20代の若者は応募してきてくれない。

製造業界の多くは、今年から始まった円安の影響により、輸出需要が増え、嬉しい悲鳴を上げている会社が多い。しかし、いくら受注が来ても、納期までに製品を納品できなければ儲けのチャンスを逸してしまう。

需要が増え続ける物流業界や、職人たちの高齢化で世代交代を進めたい建築業界など、とにかく額に汗を流し、現場で仕事をする業界はいま人手が欲しくてほしくてたまらない状態なのだ。

人手が足らずに必死に採用活動を頑張っているブルーカラー業界とは対照的に、都会のキラキラオフィスで働けるホワイトカラー業界は慢性的な人余りの状態となっている。

多くの人間が郊外の町工場に通い、薄暗い食堂で唐揚げ定食や仕出し弁当を食べながら働くより、東京都内の綺麗なオフィスで、おしゃれなランチを食べながら働きたいと考えているのだ。

そんな中でにわかに期待を集めているのが、進次郎議員が一石を投じた今回の解雇規制の緩和政策なのである。

社員を自由に解雇できるようになれば、人余りのホワイトカラー職に就く男女が人員整理で解雇される。そして彼らを人手不足のブルーカラー業界が採用することができるのではないか?

非正規雇用で事務員をやっているよりも、町工場で正社員で働いている方が年収も安定度も高い。パソコンをフォークリフトに、キーボードをパレットに、タブレットを工作機械のモニターに置き換えて働けば、業界の人手の需給バランスも正されるというわけだ。

しかし、この淡い期待感に対して筆者は言いたい。ブルーカラー業界の人手不足は解雇規制の緩和では解消されない。

そもそも、なぜこれほどまでにブルーカラーワーカーと、ホワイトカラーワーカーの需給バランスは崩れてしまったのだろうか?

バランスを破壊した要因は大きく3つある。1つ目の大きな原因が“増え続ける大卒女性“だ。

2020年の大学卒業生のうち、45%が女性である。彼女たちはいくら待遇が良くとも、町工場でねじを締める仕事には応募しない。彼女たちが狙うのはもちろんホワイトカラー職だ。

大卒女子のほとんどがホワイトカラー、特にITなどの負担が大きい仕事ではなく、負担の軽い事務系の仕事に殺到することになる。

その結果、昔は短大卒の女性が務めていた大企業の事務職に、早慶やMARCH、関関同立といった一流大学を卒業した女性たちが群がり、熾烈な採用競争を繰り広げているのである。いくら大企業とはいえ、事務員の一般職に一流大学の女性が就くのは明らかなオーバースペックだ。

高学歴な大卒女子たちは、営業職やメディア、広告業界、コンサル業界、IT、商社などの激務であるが高給でリモートワークなども可能なホワイトカラー職種にも殺到する。

そうして限られたホワイトカラー業界の席を、大卒女性と大卒男子が奪い合っているのだ。人余りになるのも当然である。この競争に敗れ大企業のホワイトカラー職につけなかった大卒女子は、しぶしぶ中小企業のホワイトカラー職へと流れてくる。

そのため、中小企業のホワイトカラーにも国立大学卒の女性や関関同立の女性が紛れ込んでくるのである。それなりの規模の町工場ともなると、神戸大学や同志社大学の女性が事務員として働いているのも珍しくない。

彼女たちはエクセルで顧客情報を取りまとめたり、ヒヤリハットの書類をファイリングしたり、経費精算や購買のサポートといった事務仕事に日々励んでいる。彼女たちの学歴は明らかに仕事の難易度に対して過剰と言わざるを得ない。

大卒女子たちは、どれだけ女性にもできて待遇や年収も良いブルーカラー職が沢山あったとしても、その求人へ応募することはないのだ。

そして2つ目の理由が……

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