世界で1つしかないリース営業完全解剖大辞典
私もまもなく入社後1年が経ち、22卒の方は1ヶ月後に入社、23卒の方は遂に就活が解禁したこのタイミングで
といった内容のnoteを書く事に大きな意義がある(気がした)ので、こうして筆を取っている。
なんせ情報が少ないため、外にいる他業界の方や学生さんはリース営業について三者三様のイメージを持たれている。
そんなリース営業マンの仕事に関して、たった1年間だけ内側にいる身から1つの指標を発信できれば幸いである。
なお、一息では読み切れないと思うが有料化する予定は無いので時間がある時に読んでもらえればOK
(でもTwitter経由で来た人はリツイートだけしといてね😉)
※背伸びをして【リース営業完全解剖】と派手なタイトルを銘打ったが、あくまで私の働き方及び見解であるため、別の会社・別の部署に行けばそれぞれのスタイルがあると思って頂きたい。
簡単なプロフィール
ご存知の方も多いと思うが(自惚れ)、
以下、簡単に私のプロフィールを記載する。
入社前のリース営業に対するイメージ
まずは1年前の3月、私がまだピチピチの大学生だった頃、これからすることになるリース営業に持っていたイメージから紹介する。
(私が1年前はまだピチピチの大学生だったという事実に震えつつ)
学生の皆さんはご自身が今持っているイメージと比較しながら見てもらいたい。
結論から言うとこれらのイメージ、(ほぼ)ハズレである。
具体的にどこがハズレかと言うと、『物件確認楽しそう!』以外全部ハズレ。
まさしく入社後のギャップである。
リース営業マンは客先でリースの話しをしない
リース営業マンは口を揃えてこう言う
そう言う意味でこれはハズレ。
リース営業って要は顧客に『リースで物買いませんか〜??リースで導入するとこーんなに良い事がありますよおおおお!?!?』
って提案しに行く仕事だよね?
なぜリース営業マンは客先でリースの話をしないのか、
「物の導入予定が無いところにリース案件は発生しないから」
これに尽きる。
これってどういうことかと言うと、
例えば皆さんの家に訪問販売の営業マンが突然来たとする。
彼はこう言う。
………
……買いますか?
ぜっったい買わないよね🤥
なぜなら皆さんは家や車やドラム式洗濯機を購入する予定が無いから(たぶん)。
対企業だがリースも同じで
物を導入するタイミングじゃ無い顧客のところでリースの話しをしても、そこに発生する案件が無いわけ。
なのでリース営業マンは客先で無闇にリースの話しをしないのである。
リース営業マンは実際何をしているのか。
リース営業マンは本業であるリースの話しをせずに一体何をしているのか。
大体3つのパターンがあると思う。
これから来る設備投資に向けたスキームの検討・情報収集
自社の他部署やグループ会社、パートナー企業との引き合わせ
協業の模索
1つずつ説明をしていく。
1.これから来る設備投資に向けたスキームの検討・情報収集
ということでリース営業マンは大体年に1回、顧客からその年の設備投資計画を聴取し、その後も突発的な設備投資が無いか定期的にフォローする。
そして、設備投資の時期が近づいてくると、
という提案をする
わけではない😕
なぜかと言うと、顧客の担当者は大概リースがどんなものなのか知っている。
だから、リースのメリットについて最初から説明する機会って実はあんまり無い。
だいたいその時の顧客の状況はこんな感じ↓
購入するかリースにするか迷ってる🤢
リースにしようと思ってるんだけど、なんかお得なスキーム無い?
リースにすることや契約条件も決まってる。あとは相見積取って1番安いリース会社に決めるだけ😤
1や2ならシミュレーションに入る。
自己資金で購入した場合や融資を受けた場合とリースにした場合(数パターン用意することも)の試算を出して、どれにするのが顧客にとってベストなのかを一緒に話し合う。
そしてお察しだと思うが、実際は3の状況になることが1番多い。
リース会社の営業担当は顧客に提示するリース料を決定する権限を各々持っているため、ここから熾烈なレート勝負・駆け引きが始まる。
ここでリース料を安くして競合に打ち勝つために何ができるかを考えるために、リース料の構成要素を整理しよう。
リース料を構成する要素は以下の通り
①+②+③+④+⑤がリース料となる訳だが、こう見ると競合に勝つためには③リース会社の利益 を削るしか無いんじゃないの☹とも思える。
実はこれ、リース会社の見込み利益をギリギリまで削る必要ないんです。
ここで、リース案件の利益要素についても整理する。
つまり情報収集によって上記⑵、⑶の収益額を見込むことで、リース会社の収益を見込みつつリース料を安く設定することができるのである。
ちょっと待って!!閉じないで!!!!
恐らく今理解することを諦めて読むのを辞める人がいたので、具体例を用いて説明する。
例えば1000万円の工作機械(工場にある機械の事)の5年リース見積を出すとする。
その案件がある事を顧客からのメールで初めて知った営業マンはそこから慌ててリース見積を作成するわけだが、
先ほどお示ししたリース料①~⑤を全て足して総回収額1200万円のリース見積を作成するだろう。
対して、普段からその顧客のところに訪問していて様々な情報を収集している営業マンP君は総回収額900万円のリース見積を提示し競合に勝利する…
ちょっと待てと。
『物の代金だけで1000万円するのに、5年間のリース料回収額が900万円じゃそれだけで100万円の赤字じゃないか!!』
と思ったあなたは正しい感覚をしています。
ただ、この営業マンP君が以下の情報を入手しているとすればどうでしょう。
先ほどお示しした利益要素のところで言うと再リース収入と転売収入がリース料収入に加えて入ってくる。
これを計算すると
①再リース収入:900万円(リース料総額)÷5年÷12(再リース区分1/12の場合)
=15万円(年間再リース料)×5回
=75万円
②転売価格:250万円
リース料900万円+再リース収入75万円+転売価格250万円
=1225万円(総回収額)
そう。リース料総額は300万円もP君の見積の方が安いのに、しっかりとリース会社の取り分は確保している。
リース会社はこういった生涯採算という目線を持っており、仮に契約期間中に赤字を垂れ流しても必ず最後には利益が出る水準で見積提示をしているのである。
これって普通に考えるとまあまあ有り得ないことで、
例えば「1000万円貸すけど返済は900万円でいいよ」とか言うと確実に危ない人間だと思われるじゃないですか。
これができるのは物を扱っているリース会社ならではなのかなと思います。
※ @現役社員の皆さん:イメージが付きやすいように極端な例を用いています。
営業現場でリースの話しをせず、雑談の中でさり気なくこういった情報を収集している営業マンは多いのでは無いだろうか。
2.自社の他部署やグループ会社、パートナー企業との引き合わせ
中小企業なんて常に設備投資予定があるわけではない。
『設備投資の予定無いんだよね~うちの会社。』って言われた時に、
「そうなんですね😢じゃあまた機会があれば👋」
とならないのがリース営業。
職種問わず金融機関は本来資金需要が無い顧客に対して何もできない。
リース会社も資金需要が無い(自分の運転資金で全ての設備を調達する)先や、そもそも方針でリースを使わない意思が強い先にリースはできない。
しかし、我々には心強い味方がいるのである。
そう。専門部署・グループ会社・パートナー企業の皆さんである(いつも大変お世話になっております)。
リース会社のグループ会社って見たことありますか?
見たことが無い方は適当にオリックスのグループ会社一覧でも見といてほしいのだが、リース会社のグループ会社は金融機関っぽくない仕事をしている会社が非常に多い。
他の業界の営業マンがどうかわからないが、少なくともリース会社の営業マンは自社内の関係部署、グループ会社、パートナー企業が持っている商材はそのまま自分の手札になる。
先述の例で言えば、無借金経営の優良先も社内でSDGsに対する意識が高まっていたら再エネ部隊を紹介できるし、設備を持っていたら中古機械の買取・販売部隊と引き合わせる事もできる。
「リース営業マンは常に顧客と別部門・会社との引き合わせを狙っている」と言っても過言ではない。
(わざわざお客さんのところに訪問して案件の進捗状況だけ聞いて帰るのは勿体ないからね。)
また重要な観点として、これらの本業から離れたところで収益を上げることができるか否かは、同じ顧客で発生した大型リース案件に取り組む意義の指標となる。
大型案件は競合も必ずゲットしたいため、厳しいレート競争となるのが常である。
レート競争が激しくなればなる程、リース会社の利益は当然薄くなっていき、最終的には「この案件、リース会社にとってのリスクとリターンが見合わなくね?」という水準までレートが下がることも。
こうした大型案件では大体審査系の部署に取組許可を貰う必要があるわけだが、彼らは
と必ず聞いてくる(難しい😢)。
ただその時、リース案件以外のカードを使えたらどうだろう。
って言える。
これは総合採算って言い方をしたりもする。
(もちろんこれ一本で通してくれるほど甘くは無いわけだが、カードの1つにはなり得る。)
予めこういう種まきができていたら、競合よりも良い見積が出せる可能性がグッと高まるよね。
それまで何も工作できていない会社は案件がそのリース案件1本しか無いから、最後の一越えで脱落します。
つまりリース営業マンはリース案件で成約を得るためにリース以外の分野の案件を使い、リース以外の案件の成約を得るためにリース案件を使っている側面がある。
3.協業の模索
一度、『リース営業マンは顧客と手を組んで新規ビジネスを立案することがある』と言ったところ、就活生の皆さんが物凄く食いついたことがある。
(みんなやっぱりこういう話しが好きなのね。)
正直、全ての顧客と手を組む余地があるかと言うと、手を組めない顧客が圧倒的に多い。
協業パターンとしては
の2パターンがあると思っていて(顧客同士を引き合わせることは多いけど少し毛色が違う気がするので割愛)、
①ならわかりやすくメーカーや販社が所謂”自社製品の使用価値”を提供するような事業を始めるところにリース会社として参画するパターン。
②はリースやファイナンスとは関係ない事業をしている関連部署やグループ会社と顧客の事業を掛け算して、相乗効果を生み出そうとするパターンである。
なので特に使用価値提供と相性が良い商材を持っておらず、かつ関連部署・会社とシナジーがありそうな事業を持っていない顧客に対しては話題にも挙がらない。
当時の質問箱では『新規ビジネスってリースと絡めていくってコト???』と言う声が多かったが、必ずしもそうではない。
むしろ少ないくらい。
(リースと相性良い事業持ってる顧客よりも、リース以外にしてることと相性良い事業持ってる顧客の方が多いからね。)
リース営業のここがイイ!ここがダメ!
ここまでリース営業とは何ぞやと散々語ってきたが、
リース営業の魅力や難しさについて言及したい。
結論から言うと僕はこの業界の営業、
【上手くいっている時は大好きだけど、上手くいかない時は大嫌い】
である。
ここがイイ!!
以前、リース営業の魅力について議論になった際、(恐らく)先輩営業マンからこんな声を頂いた。
当時(確か夏頃)、まともに営業現場に出ていなかった私はこれを見て
「確かにそうだな~。おっしゃる通りだよな~。」
と思っていたわけだが、
曲がりなりにも現場に出るようになった今、ここで言われていることの意味を身に染みて実感する。
顧客から宿題を貰えば何らかの打ち返しはできる。
僕は「この仕事をしていて一番ワクワクする瞬間はいつ?」と聞かれれば
『顧客の課題やニーズを確認した帰り道の車の中で、課題の解決~顧客の期待以上の成果を提供するまでのシナリオを描いている時間』
と答える。
『まずこれをあの会社使って何とかして~。その後は多分こういう問題が出てくるから、あそこと引き合わせても面白そうだなあ。ムフフ』って時間。
ちな1人。
大抵思い描いた通りにはいかないんだけどね。
ただ、これに関しては同じ感覚を持っている人が周りには多い気がしてる。
ここがダメ!!
こうして良いところばかりを言っているとリース事業協会からの回し者だと思われるので、しんどいところもしっかり紹介する。
(シンプルにポンの愚痴に近いので、優秀な同業者の皆さんにアドバイスを頂きたいです。)
新規営業が難しい
関係者が多すぎる
自由だからこそ難しい
1.新規営業が難しい
リース営業は既存顧客への訪問ばかりで新規開拓が無いと思っている方、
それ、大間違いです。
独立系だろうと銀行系だろうと(たぶん)メーカー系だろうと、新規営業は普通にあります。(会社によって程度の違いはあるかも)(どの会社が新規営業少ないですか?とか聞かないでね)
別にいいんですよ。新規営業自体は。
ただ、やはり初めて訪問する顧客の担当者は自分たちを「リース会社の営業マン」として見る(当たり前)。
先ほどから申し上げている通り、リース営業マンはリース以外の提案をすることの方が多いし、リース業界についてよく調べられている皆さんはリース以外の事業があることもよくご存知だと思う。
ただ、中小企業の担当者は違う。
これが現実(一部脚色あり)。
一度入り込めればリース以外のことで力になれることも理解してもらえるし、
「そんなこともしてんの😳」
って言ってもらうこともできるが、そこまでが大変。
結局どこまで行っても現場のオジサン達目線ではリース会社はリース会社なのである。
ただ、一方で粘り強くコンタクトを試みることが実を結ぶこともある。
ずっと月1で訪問し、訪問するたびに門前払いを受けていた先が突然応接室まで通してくれたため思わず
『なんで今日は通してくれたんですか?』
とクソ失礼な事を聞いてしまったことがあったのだが、
その際出てきてくれた社長は
『何回も来てるから1回話しくらいは聞いてやろうと思って』
と言っていた。
ちなみにその時もどーせ門前払いを受けると思って何も準備をしていなかったため見事に玉砕した。
※どんな時も準備は怠らないようにしましょう。
なんの話しだっけ。
そう、そんなこんなでリースの新規営業はとっても難しい。
2.関係者が多すぎる
あのー。リース営業って関係者が多すぎやしませんか?
ただのリース案件でもSPの担当者やらと連絡取り合わなきゃいけないし。
他の部署やグループ会社との協業だと当然そこと情報交換しつつ調整しないといけないし。
客先で製造設備の話ししてたら「現場の人間に聞いてみて」とか言われて紹介を受け、結局『あれ、この話しってどっちとすりゃいいんだっけ?😅』ってなる。(聞けばいいだけ)
本当に物事に優先順位をつけて、遂行事項を整理しながら進めないと一瞬でパンクしちゃう。
自分の何倍もの仕事をこなしてる先輩方を見ると頭の中を覗いてみたくなります。
「こんなに外訪しててこの人いつ事務処理してんだ。」みたいな人もいるし。
※サビ残はしてないよ。
こういう処理能力って働いてるうちに身につくのかなあと思いつつ、2年目になってしまうことに震えている今日この頃です。
3.自由だからこそ難しい。
基本的に人から指示されて営業に行くことってないんです。
例えば上司とかから、
「ここ行ってこい」「これ提案してこい」って言われることはまずない。
部店の方針として、『これを強化施策にしよう』とかって話はあるけど
それをどこに、どう持っていくかは営業の裁量。
まして、「ここがイイ」のところで言ったようにスキームの自由度が高いために『何をどうしたらいいのかわからない』みたいなことが往々にしてあり、よく先輩に助け舟を求めている。
質問箱で3000件の質問に答えてきた僕がすごく答えに困る質問がある。
👆これ。
そら金融機関の端くれなのだから入社後は資格地獄に陥ったり、
ファイナンス周りの汎用的なスキルが身に付くと思われても仕方ない。
最近思うことがあるのだが、
【リース営業は絶対に知らないといけないことは少ないけど、
知っておいた方が得なことがめちゃくちゃ多い】
あくまで『知ってると得』なだけなので知らなくてもいいのである。
資格として明確に知識が認められるわけではない。
でも知っているとそれが営業の手札になる。
社会情勢然り、グループ会社の商品・事業内容然り、顧客のビジネスモデル然り、担当エリアの地域性然り、競合の動き然り、物の特性然り。
まだまだある。
これら『知っていること』を基に0からスキーム組成ができる。
ただ、自由すぎて小童には難しい。
これに尽きる。
●補足
先輩社員の方から頂いたご意見
今やリース会社が手を出している事業は金融機関がタッチできる領域を優に超えている。
リース会社にとってファイナンス提供の価値はどんどん薄れており、『顧客へのファイナンス提供』を軸に仕事を進めたい方にとっては少々しんどい仕事にすらなりつつある。
※貴重なご意見ありがとうございました😊
以上!!!!!!!!
気付けば長々と8500字以上書いてしまっていた。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
特に就活生の皆さんには色々な想いがあるのは十分に理解しているつもりではありますが、
より多くの方にリース営業の実態が届くように、この記事を拡散していただけますと幸いです。
僕がこの記事を書いた意義が生まれ、泣いて喜びます。
このnoteはこれからリースマンになる学生さんの入門書であり、リースマン候補生として現在選考中の就活生のギャップを埋めるための指針書である。
現時点で散見されるビジネスモデルの上辺をなぞっただけの解説ネット記事よりは現場の動きに即した内容になっているのではないかと思う。
もしかしたら現役社員の方にとってはツッコミどころが多い、かつ初歩的すぎる内容だったかもしれませんが、私自身も現役社員の皆さんからの声を聞いて勉強させて頂きたいです。
本記事についてのご意見、ご感想がありましたら本記事のコメント欄、Twitte、質問箱に遠慮なくお寄せください。
今後の励みになります。
ありがとうございました。
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