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サイコパス社長に出会い、逃げるまでの100日間の話【第二章】

第一章〜最終章まで一覧⇒ サイコパス社長に出会い、逃げるまでの100日間の話

不要不急の電話

仕事を始め一か月ほど経った頃。

社長から、社員である30代の男性、40代の女性の二人を音声通話越しに紹介された。

私としてはこの二人は話しやすそうだという印象を受けた。

仕事を紹介してくれた友達が言うにも、やはり二人は優しいとのこと。
よかった。
優しい社員が二人もいてくれるのだから、私はこの仕事をきっとやっていけると思った。

ただ一か月経ってずっと思っていたことがある。

社長から電話がかかってくる頻度が異様に高い。

履歴を見ると、1日に約20回程度社長からの通話履歴があり、一度通話に出ると数十分、長い時で2時間は通話環境から離れる気配が無い。

内容の9割は不要不急で、仕事には直接関係が無い話ばかり。
メールで十分済ませられるはずの些細な事でも、かけてくるのだ。

通話と仕事は明け方3時頃まで続いた。

深夜1時頃、社長は「まだ眠くないの?」と聞いてきた。
私は眠いです、とは言ってはいけないだろうと思い「大丈夫です」と返事をしてしまっていた。

社員は夕方18時には仕事を終えていたが、私はフリーランスであるから終業時間が無いのだと思い、朝9時から明け方3時まで仕事に関わっていた。

この仕事を始め、たった一か月。もはや疲れてきた。

その上、社長は毎日怒っている。
夜の22時あたりからは1日のストレスを吐き出すように、通話で5時間ほど怒り続けているのである。

口を挟ませる余裕も無く、ひたすら夜中は怒鳴り声を聞く。
怒っている最中に口を挟み、受話器を置くということが私にはできなかった。

私は「ツライ」という言葉を使ってはいけないと昔から思っている節があり、あまり弱音は吐かないようにしていた。
でもツライのである。
耐えられなくなり、毎朝仕事が始まるまで泣くようになった。

話の内容を一部紹介すると

・なんで?なんで?
という言葉を繰り返す。疑問文であるため、こちらはそれに返答しなければならない。
例:「今日の晩御飯は何を食べたの?」→「〇〇を食べました」。→「なんで?」→「残り物があったからです」。→「なんで?」→「〇〇(社長)さんは何を食べましたか?」→「だからなんで?」

・僕が話したことに対してもっと大きく感動しろ、仕事を教えている僕に対し喜ばせる必要がある
「はい」「承知しました、教えて下さってありがとうございます」程度ではだめ。
「すごいですね!」「なるほど~さすがです!」など心の底から褒めろ。

・無意味な言葉に対して怒る
「以上です」と言うと「以上ってなんだよ、違うだろ?もう一回別の言葉を考え直せ!」など。

・正確な発音で話すべきである
例えば失礼しますと言って通話を切ろうとすると「あ、今の音おかしかったよね」と口を挟み、言い直しが数分ごとに行われる。
方言を標準語に直そうとするわけではなく、自分基準の音程に調節していた。
「20代の女らしく、若くみられるよう高い声で喋るべきである」とも。

・その他、スピリチュアルの話など
スピリチュアルの話は私自身特によくわかっておらず、社長を怒らせていた要因でもある。
「よく聞け、君にとって一番大切な話をしているのだ」とのこと。内容はスピリチュアルなので「人は死んでから魂が〜」云々といったところ。
※ちなみにだがスピリチュアル関連は仕事には一切無関係の話である。



GPSで追跡される不信感

この頃に友達が社長と住まいの事で揉めたと聞いた。
社長が事務所兼友達の住まいとして部屋を借りるから、そこに住めと言ったそうだ。

恐らくそこに住むと夜中まで働かされることだろう。休みも無く低賃金で雇われることは友達の目には見えていたようで、無論断ったと聞いた。
断ると、かつてないほどの勢いで罵倒され彼女の心は折れたらしい。
結果、辞める旨を申し出ることになったとのこと。

この友達というのが、私の記憶では学生の頃は教師に椅子を投げつけられようが、誰かに暴力をふるわれようが早々の事では泣かないと思っていたのだが、この社長に目の前で罵倒された際には泣いていたと聞いて非常に驚いた。

友達は社員であった。
社員は各自自分(プライベート)のスマートフォンにGPSアプリのダウンロードが義務付けられ、社長には常に居場所を把握されていた。

基本は在宅仕事だが、社員は入社した数か月間などは事務所に行き仕事を社長から直接教わることがあった。
仕事先に向かう途中にちょっとコンビニにでも寄ろうものなら
「位置情報止まってるけど何してるの?さっさと来い」と社長から即電話がかかるそうだ。

リモートワークを許可している会社なら個人携帯にGPSを入れるよう指示があるのは、よくあることなのかどうかは私にはわからない。
しかしGPSで監視するような人間であることを知っていたからこそ、友達は用意された部屋には住みたくないと思ったのだ。

社長は、私たちが休日何をしていたのか、誰と過ごしていたのかということについても嘘がつけないほど問いただしてくる。
友達⇒どんな友達?名前は?どこで出会った?なぜ会うことになった?どんな仕事?
彼氏⇒どんな彼氏?名前は?どこで出会った?なぜ会うことになった?なんていう会社?所属は何?


あまりにも深く追及され、友達は以前この会社で働いていた女性と旅行に行ったことについても内緒にしていたのだが、最終的には明かさなくてはならない状況にまで追い込まれた。

一般的に見て考えすぎだと思うかもしれないが、この社長が用意する部屋の場合は、事務所兼住まいに監視カメラが設置されていてもおかしくない状況だった。
社長からの引っ越し提案は私にも来ていたが、同様に断った。

私と友達は、いずれも物静かな方である。
その上感情が見えにくいと世間では言われてきた。

あと、すっかり忘れていたと思うが私たちは一応女である。

男性社長が用意した部屋に住まわせ自らも出入りする環境へ持って行こうとすること、頻繁に泣くような精神状態にまで追い込んだりといった状態に、おかしいと気付き始めたのは親だった。

成人していながらも、恥ずかしながらこの件については両家の親も猛反対した。




続き ⇒ サイコパス社長に出会い、逃げるまでの100日間の話【第三章】


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