小学校の入学式を欠席した わが子に、ひぃばあちゃん直伝の“魔法の言葉”をかけた結果…… #061
ちょうど一年前、娘は地元の公立小学校に入学しました。
ただ、入学式はインフルエンザにかかって、欠席することに。
「病気だから仕方がないよね」と思う一方で、同級生に同じ園の子がいなくて娘はナーバスになっていたので、1日目を休んで「この先、大丈夫かな……?」と不安になる気持ちもありました。
そんなときに、遠くに暮らすひぃばあちゃん(95歳)と電話で話す機会がありました。入学式を欠席した旨を伝えると、
「そうなんか。うんうん、大丈夫。入学式に出れんかった分、あとで1,000倍ええことがあるから、楽しみにしときよ〜。人生は帳尻が合うように、うまいことなっとるからねぇ」
と、とっておきの魔法を伝えるように教えてくれました。その根拠はなんやねーん!と心の中で豪快にツッコみつつも(笑)、ふと心が軽くなる自分がいました。
もしかすると、ひぃばあちゃんのこれまでの長い長い人生の中で、彼女の経験則から思うところがあったのかなぁ?と思ったり。
ひぃばあちゃんの話を娘に伝えると、「ほんと? 1,000倍もええことって、何があるんかな?」と半信半疑。でも、少し気分が上向いた感じ。
「とりあえず、今は回復することに専念して、あとで1,000倍を受け止める心と身体の準備をしておこうね」というと、娘は布団の中で小さくうなずきました。
人間 万事塞翁が馬
それから数カ月後に、娘が「ひぃばあちゃんの言う通りだったね!」と、突然私に言ってきたことがありました。
「なんのこと?」と思ったら、「入学式に出られんかった分、1,000倍いいことがあったから。ひぃばあちゃんの言う通りよ」と満面の笑みで伝えてきました。
あの話をまだ覚えていたのかと驚く一方で、「1,000倍のいいことってなに?」と聞いたら「休んでるときにシルクに出逢えた!大好きなお裁縫に出逢えた!私の金色の道をみつけた!」と、それはそれは嬉しそうに教えてくれました。
シルクというのは、あんびるやすこさん著『なんでも魔女商会』という児童書のシリーズに出てくる主人公の名前。
娘は、入学式後もしばらくは体調がなかなか回復しきらず、新しい学校生活にも適応するのが大変で、前半は特に休みがちでした。
体調が優れず青白い顔して布団の中で過ごす娘に、私は図書館で大量の本を借りてきました。娘は本が大好きなので、少しでも気を紛らわせるといいなと。
じっくり中身を読んでセレクトする時間もなかったので、表紙を見てピンと来たものをランダムで借りてきました。その本の中に、たまたま『なんでも魔女商会』シリーズがありました。
最初、娘は暇つぶしのように本を手に取っていましたが、『なんでも魔女商会』シリーズを読み始めると、何かに取り憑かれたように次々と読み漁りました。
そして、「私もシルクのように心を込めて洋服を作ってみたい」と、自分の想いを口にするようになりました。
そのあとは、以前も書いたように、ドールドレスを作ったり、素敵な洋裁教室との出逢いがあったりと、娘はまさにシルクのようにモノづくりに邁進するようになります。
入学式欠席という一見不運に思えた出来事が、娘の金色の道を見つけるきっかけの一つにつながったりと、幸運か不運かは容易に判断しがたいなと思いました。まさに人間万事塞翁が馬だと。
そして、ひぃばあちゃんの魔法の言葉が、娘に響いていたんだなぁと。
娘が心身ともに不調で不安なときに、ひぃばあちゃんの魔法の言葉は、彼女の心にかすかな希望の光を灯し続けていてくれたのかも知れません。少なくとも、娘はその言葉を覚えて過ごしていたので。
単なる気休めにしかならないかも知れませんが、案外子どもにとっては「ほんとに?」と半信半疑ながらも、小さな心を支える言葉になっているのかも。
何より親自身も、ふっと心が軽くなったりしました。
今思えば、ひぃばあちゃんの魔法の言葉は、ネガティブに陥りそうな心の持ちようを、軽やかな笑いとともにポジティブに変えてくれる不思議な効果があったんだなと思います。
もし今年、入学式を欠席せざるを得なかったお子さんや、その保護者さんが読んでいらっしゃったら、きっと「1,000倍いいことがあるよ」と、この魔法の言葉をお伝えしたいです。
亀の甲より年の劫。ひぃばあちゃん、ありがとうね!