「を」と「、」
確か小学校低学年の頃だったと思う。
文章を書くにあたって、助詞の「を」の後ろには読点「、」は付けないと教わった記憶がある。
「お」と「を」は同じ音だけれど、「を」は単語の後ろに付けるもので、そこで区切れるということが判るのだから「、」は要らない、というような理屈だったと記憶している。
こうやって文章にしてしまうと理屈になっていない気もするが。
そもそも句点「。」は兎も角、読点「、」の付け方は難しい。
うっかり付け間違えてしまうと文章の意味が変わってしまう。
関係ないけれど、大好きなミュージシャンがラジオで言っていたことを思い出す。
「メールの投稿を見ていると、年齢が高いと矢鱈テンを付けたがる」
つまり、「、」が多い文章の書き手はオヤジだという意味だ。
まあ、自分を振り返ってもそうだけれど、ある程度の年齢になれば、文章をきちんと書いてきちんと相手に意図を伝えようとする。
そのひとつの手段が「読点を付けることによって読み間違いや聞き間違いを防ぐ」というものだ。
かのミュージシャンには、そういった文面がオヤジ臭く映るようだ。
押し付けがましく見えるのだろうか?
もしかしたら、既に文化の壁があるのかも知れない。
ネット文化に慣れた世代は、句読点よりも便利で確実な新語や省略語に馴染んでいるから、読点に頼る必要などないのかも知れない。
いずれはそれが主流になるのかと思うと、一抹の寂しさを拭い去れない。
話が逸れてしまった。
ここでの主役は「を」なのだった。
前述のように、幼い頃から「を」の後には「、」を付けないことが頭に染み込んでいた私は、小学校、中学校、高校、そして大学、更には就職後も、努めて「を」の後には「、」を付けないよう心掛けて来た。
小学校の頃に教えられたことを遵守し続けて来たのだ。
それが最近変わった。
ブログやら映画のレビューやら、ここnoteやら、フリーな文章を多く書くようになってからは、「を」の後に「、」を入れないと文章が不自然になる場合もあることに気付いたのだ。やっと。
そうしないと、矢鱈と一文が長くなってしまったり、主語や目的語が意図と違ってしまったりする。
「を」の後に「、」を「打たなければならない」場合があるのだ。
以前から気付いてはいた。文章を沢山書くようになってからというものは。
しかし、そんな時には「を」の後に「、」を打たずに済むよう文章を修正していた。
ある種の本末転倒だ。
ビジネス文書であるとか、ある程度改まった文章であれば、そうやって凌げたのだ。
しかし、フリーで思うがままに書いていると、変に修正することで自分のイメージする文章とは異なるものとなってしまうことが多い。
そんな時、「を」の後に「、」を入れるだけで、悩むことなくスッキリ明快な文章に仕上がることがあることに気付いたのだ。やっと。
ネットでいろいろと検索出来るようになるまでは、そのものズバリ『助詞の「を」の後には読点「、」を入れるべきではないのか?』について調べることは困難だったが、今や優秀な検索エンジンのおかげで簡単に調べられる。
結果、ネット上でもこのことについては数多く触れられていることを知った。
そして、概ね否定的な、つまりは「を」の後であっても他の助詞と同様に必要に応じて「、」は入れるべきだという意見が大勢を占めているように思える。
幼い頃に教えられたことは、三つ子の魂何とやらの如く、余程強力な猜疑心でもない限りいつまで経っても覚えているものだ。
いい加減な歳になってから、新たな学びで上書きされることもあるのだね。