「形」
以前に別ブログでも書いていたこともあるぐらいで、このタイトルにすればネタは尽きないだろうと思いつつ書き始めて三本目。
早くもネタが尽きたのか、日本語というより今回は漢字の話。
別に尽きた訳じゃないし、三本目だからという訳でもないけれど、今回は漢字の「さんづくり」についてのお話。
偶々、運転していたら前を走るクルマが山形ナンバー。
県外ナンバー、しかもあまり見かけない遠方のナンバーは、とりわけ注意していなくても自然と目に付く。
しかも文字として違和感がある。
ここに来て初めて気付いたことでもなく、以前から何とはなしに気になっていたことだけれど、何故か山形ナンバーの「形」の字の「さんづくり」は、adidasよろしく平行の三本線だ。
自動車のナンバープレートの地名表示は現時点で87種類。ご当地ナンバーが48種類あるから、合わせれば135種類もある。(Wikipedia参照による)
その中で、「さんづくり」が使用されているのは「山形」と「杉並」。「杉並」の方はご当地ナンバーなので、レギュラーナンバーでは「山形」のみだ。
「杉並」の方は普通に50度ぐらい傾いた「さんづくり」だけれど、「山形」は水平の平行線なのだ。
ちなみに「さんずい」については、ご当地ナンバーを含めて16種類あり(何故か関西方面は少ない)、いずれも普通に「さんずい」だ。
もっとも、「さんずい」が平行三本線だったら、違和感にも程があると言うものだろうけれど。
ナンバープレートに使用されている字体や書体は様々であり、全国的な統一規格は部分的にはあるようだけれど、どうも徹底はされていないように見受けられる。
既にある程度の歴史を積んでいるから、今更難しいのかもしれない。
ただ、いずれにせよ平行線の「さんづくり」など一般的な字体には存在しないのじゃないだろうか。
漢字というより、ナンバープレートに配するにあたってのデザイン上の問題なのだろうか?
いやいや、特に美的センスに自信はないけれど、バランスに欠けるような気がしてならない。
ネット上を検索してみると、このことはある程度知れ渡ったことのようで、何人もの人がその理由に言及している。
ざっと纏めてみると、単なるデザイン説、視認性優先説、一文字目が「山」の他ナンバーとの識別性説、出羽三山の「三」説といったところか。
けれども、正真正銘これが本当の理由、というものには行き着かなかった。
その代わり、そうやっていろいろ見て行くうちに、「山形」以外にもユニークな文字が多々見受けられた。
そして個人的には、それらにある程度共通することとして、やはり「視認性を良くするためのデザイン」ということがあるような気がする。
「愛媛」のように、かつてはかなりデフォルメされていた字体だったものもある。
「岩手」とか「滋賀」とか、現状でもデフォルメされているものもある。
「鳥取」の「鳥」の「よつてん」は「山形」の「形」の「さんづくり」の如く平行線だ。
などなど。
昔、コピー機が一般的に普及する以前は、同一内容の文書を多数作成するにあたっての最もシンプルかつ手軽な方法はガリ版印刷だった。
ガリ版印刷では、出来るだけ読み易く、かつ、より多くの部数を印刷するためには、普通の手書き文字よりも原稿用紙のマス目に合わせた均一感のある単純な文字が求められた。
漢字でも平仮名でも。
その際、正しい楷書の美しい文字よりも、一目でその字とわかるデフォルメした文字も多用されていた。
特に画数の多い漢字は、正確に書くと印刷時に潰れてしまうし、原版の消耗も早かった。
ナンバープレートの字体を眺めていたら、そんな昔の記憶が蘇った。
正解は判らない。平行三本線の「さんづくり」には、何か特別な願いや祈りが込められているのかも知れない。
また少し学んだ。