見出し画像

「レッツラゴー」

運転中は基本的にラジオを流している。

「聴いている」というより「流している」という感じだ。

さしずめ「BGM」ならぬ「BGR」と言ったところか。

流しているのは専らFMラジオだ。

AMラジオは中高生の頃、深夜放送を専ら聴いていた時期があったけれど、流れる音楽の好みが少しばかり違うという理由で、最近はお目当ての番組を事前キャッチした時ぐらいしか聴くことはない。

そう言えばAM放送は2023年か2028年に殆ど消えてしまうという。廃止ではなくFM放送へ移行するということのようだ。

今だってワイド放送があるのだから、二重の配信からワイド放送だけになるということだろうか。

兎に角、うちの近所では近い将来、今聞いているラジオのAMバンドのチューナーからは、NHKだけが流れることになるようだ。

本来ここで「一抹の寂しさを感じる」ぐらいのことを書くべきだろうけれど、前述のように今やAMは殆ど聴いていないし、そもそもFM波に移行するだけだから好きな番組があればそのまま聴ける訳であり、寂しさを感じる理由もさしてない。

あるとすれば、アナログ感たっぷりの音質で聴けなくなるということぐらいか。

そして、その時が来たとしても、現AM局の番組内容が激変でもしない限り、結局クルマの中では既存のFM局を聴き続けることだろう。

クルマで常時流れているのは地元のFM局の放送だ。

その理由は単純。愛車のラジオアンテナは昔ながらのAピラー埋め込みのロッド式であり、それを伸ばしたままにしているのが嫌いなので、格納したままでも聴ける放送局を選んでいるだけなのだ。

アンテナを伸ばすことなく受信すると、電波が強ければFM波の方がよく入る。AM波のような電磁波による雑音も拾い難い。

しかも放送内容と言うか、オンエアされる楽曲が好みの場合が多かったりするから、滅多にチューニングし直すこともない。

その局の放送を聴くか、CDなどの外部音源を聴くか、電源オフの無音か、三つに一つなのだ。


前置きが長過ぎる。標題は何だったか?

「レッツラゴー」だ。

日頃、運転中は流しっぱなしのBGMにしているカーラジオから、最近妙に耳に残るCMが流れることがある。

今は冬。スキー・スノボシーズン真っ盛り。そのCMとはスキー場のCMだ。

CMの内容は、対象となるスキー場のことを楽し気に扱いつつ、男女のお気楽なやりとりで展開していくものだ。

そのスキー場自体は昔からあるのだけれど、名称を独自に短縮していて、昔スキーに熱中していた頃には聴き馴染んでいなかった略称で呼んでいる。

ただ、だからと言ってその略称が耳に残るということではない。

CMの終わり近くに、「それじゃあ皆で行きましょう!」という雰囲気で「レッツラゴー!」と高らかに叫ぶのだ。

随分と長い間、見ても聞いてもいなかった言葉、「レッツラゴー」。

かと言って、その昔、率先して使用していた訳でもない言葉、「レッツラゴー」

なのに妙に覚えている言葉、「レッツラゴー」

そもそもは中高生の頃、漫画週刊誌に連載されていたギャグマンガの中で登場した言葉だ。たぶんそれが初出の造語ということで合っているだろう。

当時は別の週刊漫画誌を購読していたので毎週読んでいた訳ではないし、特にアニメ化もされていない作品なので直接的に触れる機会は少なかったと思う。

ただ、テレビの中で流行語的に使っていたタレントはいたような気がする。だからこそ耳に残っているのだろう。

そして、その程度の記憶なのに今でもしっかりと覚えている言葉なのだ。

余程インパクトがあったのだと思う。

漫画の連載終了から10年以上後になって、テレビのバラエティ番組の題名になったり、更に後になって全く関係ないアニメの中に登場したりと、ある程度社会に浸透し、そこかしこで使用され続けて来たようだけれど、残念ながらそのあたりのことは殆ど知らない。

当該バラエティもアニメも観ていなかった。

耳にはしていたのかも知れないけれど、意識はしていなかったのだ。

だから、純粋に50年ほど前の記憶だけが実体験に基づく記憶ということになる。

にも関わらず、耳の中に飛び込んでくると条件反射的に意識してしまう言葉。

これってスゴクないだろうか?

今風に言えば「スゴクない?」(尻上がりのイントネーションで)だ。

意味は「レッツゴー」なのだろう。今回のCMでもそのように使われている。

けれど、そもそも「ラ」ってなんなんだ?

語呂が良くて言葉に勢いが付くからだろうか?

「よいしょ」が「よっこらしょ」になるのと同じなのかも知れない。

まぁ、諸説あるようなので聞きかじりで深掘りするのも宜しくないだろう。

要は、約半世紀の時を隔てても尚、複雑で難しい日本語の海の中を泳ぎ続けている強者だということだ。

しかも、常日頃からいろんな場面で目や耳にする言葉ではないにも関わらず。

元を質せば英語なのに、カタカナになることで日本語に染み込み、更には意味不詳の一音が加えられ、結果、恐らくは英語圏では通じないであろう言葉、つまりは日本語となって生き残る。

やっぱりこれはスゴイことだ。

最近TVCMで耳にした「バッチグー」あたりも、「レッツラゴー」より歴史は大分浅いものの、類似の道のりを歩んでいる言葉かもしれない。

何となくBGM的にラジオから聞こえて来たCMによって、遠い昔を思い出して学び直した。

日本語のようで日本語ではない言葉。それもまた難しいものだな。


この記事が参加している募集