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屋台骨
仕事。仕事。仕事。若い奴らの世話。仕事。
間に挟まる、自分以外の誰かを支えなければならない会社員という組織。毎日のように未来のタマゴとよくいえば明るいやつらを、じぶんのこともしながら見なければいけない。それが社会人として責任者ヅラできるようになっていき、必ずいうてしまう。
仕事終わり、軽く飲みにいって、いい感じになると、出てくる大人の悪い顔が出てきそうになる。
「俺の若い頃はさ、馬車馬のように働いて、上司のカバンをもったり、お酒の店も選んで,酒が無くなりゃついだりして、気をを配るもんやったわ。最近の若いやつはそういうのに顔も出さんし、断りよる、、、っていう大人ってどうなん?」
飲み屋で聞こえてくる話題の多く。それをあえて居酒屋にて若者にぶつけた。男は、若者の気持ちになったつもりになっていた。
「知らんがなって感じですし,また言うてるわって思って聞き流してます」
「そんなはっきり言うたらあかんけどまあそやろな」
「僕が大人になったら言わんとこって思いますよ。いやじゃないですか。シンプルに」
「おれもむかしそやってんけどさ、今言うてもうたよな。」
「はい、だから、同類です」
「だからはっきりいうなて!」
あえて、若い後輩にぶつけてみた結果,しっぺ返しでダイレクトアタックに遭う。酒は止まり始めている。タバコの火はつけても燃えるだけ。
「だって、僕ら見てないし、その時を」
いやまあそやなと。
「テキーラをショットで40杯呑んだんすよその夜。。。っていわれて、なんて答えます?」
「すげえ、よおのめますね。かな?」
「でしょ?すげえっていうとったらなんとかなるんですよ。知らんけど」
「知っとけよ。でも確かに、すごーいなあしか出てこおへん」
「すごいって言うことをアピールしたいだけやから、それをそのまま表現してあげたら終わりです。」
「自慢したいもんなあ。俺は背負ってる感?を出したいだけなんかな」
「そうやと思います。俺が支えてる。俺がお前らの面倒見たってる。だから敬え、でしょ?先輩はそのうざさあんまりはないと思いますけど」
「ちゃんとすごかったら、聞きたいもんな」
そろそろでよか、となって店を出て、夜道を歩く。しょうもない店のキャッチが雑踏に立って、詐欺まがいの飲み放題をつきつけてくる。
「屋台あるやん。まだあんねんなあ」
「ほんまですね。えもっ!」
「そのエモいてなんやねん。」
中華そば。そばの中華版。そばは中華麺。もう中華麺でええやんって思うけど、醤油の味しかしないこれこそが、酒の後に沁み込み散らかす。
心まではぬくもらない。
「でも、先輩の話聞いたあと,ラーメン奢ってくれるのはいつもいいなって思います。」
「まだ奢る言うてへんやろ」
「普通奢るやろ。」
なんでタメ語やねんと思うが、まあ許す。可愛い面を見たら,先輩は先輩たりたがる。
こんな俺たちみたいな奢らされるだけの大人が、この屋台のおっちゃんの生活を支えてるのやろか。足しになってんのかとかは知らんけど、吸い込まれてまうこの赤い暖簾に、勝てたことがない。タバコも吸えるし。
「屋台骨って言葉,最近聞かへんなあ」
「なんすかそれ」
ほらみろ。
「家とか屋台もやけど,それを支えてる骨組みのことを、組織とかそういう会社とかを支えてる人のことを、屋台骨っていうねん。」
「自分やって言いたいんですか?」
「なんで先言うねん」
ふと思って、この子らの支えになれてんのかなあ。なんて夜更けに思う。それはでも,自己満な気もする。屋台骨って、そうなりたくてなってるわけてもないやろに。
信頼される大人は、自然とその土台となって,根から幹を育てて、栄養吸い取られて終わっていくんやろか。
「麺伸びてるやん先輩」
「五月蝿いなあ、耽ってんねん」
「エモいっすね」
「不味いだけやろ」
「店で言うなや」
「そらそうや店長」
今度は1人でこよう。