【2024年上半期】Amazonプライムで観て印象に残った映画②
懲りずに今年の6月までに観た映画の中で、印象に残った映画について、にわか映画好きがあれこれぼやいてみる。
ネタバレを避けるため、先に作品をご覧になってから読んでいただけると嬉しいです。
その①はこちら。
黄龍の村
前半は観ていてかなりフラストレーションが溜まるが、それは後半の怒涛の展開、いわばメインディッシュを全力で味わうための前菜なので、しかめっつらをしながらもじっくり咀嚼してほしい。登場人物達の話し方や仕草で醸し出すチー牛陰キャっぷりと、それを見下す今さえよければオッケーな低脳モラトリアムっぷりは他に類を見ないレベルでリアル。こんなにも虫唾に走る演技ができる俳優陣や、そんな描写ができている脚本に脱帽である。
私はこの手の人生舐めてる勘違いモラトリアムクソ野郎が大嫌いなので、観ていて『ああもう早くぶっ殺されないかなあ…出来るだけ苦しんでくれないかなあ…』とひたすらに登場人物達の死を願い続け、途中『ハァ!?お前がメインかよ!!何者でもないくせに若さと自由に酔いしれ、中身が空っぽ故に虚勢を張ることしかできないクソ虫が!みっともなく生に執着してんじゃねえよ!早よ消されろや!』とついヴィラン達を応援してしまった。その苛立ちは一瞬にして潰えるわけだが。
中盤の展開がガラリと変わった後は、呆気に取られながらも目が離せなかった。そして努力の結晶ともいえる逞しい背筋からも目が離せなかった。鍛え抜かれた背筋の良さに気づいた作品であった。
星の旅人たち
(※字幕がありませんが、こちらの予告編の方が好みだったので…)
あらすじから全力で泣かせにかかっているのだが、案の定冒頭で号泣した。大事な人を亡くした経験がある人は、きっとこの作品のどこかにその人がいるのではと無意識のうちに探したのではないだろうか。
また、親子を演じている俳優が、実の親子であるため、否が応でも感情移入をすることになる。
冷静に考えたらツッコミどころもあるのだが、観ている時はただただ息子が見ようとしていたもの、成し遂げようとしたことを、父である彼にとにかく完遂してほしいと全力で見守り密かに応援していたため、正直そこまで気にならなかった。
完全に父親に自己投影して観ていたため、終盤もシクシク泣く羽目になったが、その涙は冒頭に流したものよりも暖かかったはずだ。
キャラクター
漫画やアニメに頼りっきりの邦画界隈で、オリジナル脚本でここまでのものが製作されたことがとても嬉しかった。また、演技力に定評のある俳優陣で固められている中、彼らに少しも引けを取らない演技を見せたセカオワFukaseの才能に恐れ慄いた。
個人的に印象に残ったシーンが、帰宅した主人公の様子がただ事ではないことに気づいた妻が、お茶を淹れようとするシーン。思いっきりT-falがあるのにやかんに水を入れだしたあたり、少なからず動揺が伝染してる感じが伝わってきた。(ただのミスでないことを祈る)
また、凶器の隠し方や殺し方、犯人が持つ独特の美学やそれに対する執着心の強さはもちろん、伏線回収描写もしっかりしていて、観ていて夢中になれたが、終盤の妻が襲撃される下りは、ちょっとリアルじゃないなとつい余計なことを考えてしまった。あの状況で襲われて、母体が無事だとはどうしても思えないのだ。
こんな細かいところが気になるくらいに隅々まで見たくなるほど面白かったということにしてほしい。
そして劇中画がまさかの古屋兎丸先生だったので、エンドロールで密かに驚愕した。
サイコ・ゴアマン
主役のミミの破天荒っぷりが幼少期の自分を見ているようで、終始『他人の気がしない…』と、あの頃の愚行の数々を思い出しながら観た。そしてサイコ・ゴアマンは職場の同僚に若干似ている。見た目もやることも凶悪で、彼の手によりピリ辛ゴアシーンも飛び出すのに、不本意ながら子供達のおもちゃにされているそんなギャップに夢中になった。
ミミのお気に入りの男の子はひたすらに不憫なのだが、周りの扱いが雑すぎる故に悲惨なエンディングを飾ったところが個人的にツボ。
監督は所謂特撮モノのファンらしいので、どおりで全体的にグロいニチアサっぽいなあと感じた。日本語話すクリーチャーも出てくるしね。
血が吹き出す邪悪な大人向けのニチアサに興味がある方はぜひ。
メタモルフォーゼの縁側
私はBLこそ嗜まないが、漫画やアニメはもちろん、絵を描いたり、こうして文章を書くことも大好きなので、生むことの苦しみを乗り越え、創作する喜びを噛み締める主人公達の気持ちが痛いほど共感できた。
自分の趣味や世界を受け入れ理解してもらえることの嬉しさがものすごく伝わってきたし、各々が人と人との関わりを通じ、前進する様子を優しく描いているところも好き。
登場人物は善人しか出てこないので、終始平和で観ていていつになく穏やかな気持ちになれた。
鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
ゲゲゲの鬼太郎は幼稚園の頃大好きで、妖怪図鑑や妖怪の森は何度も目を通し、内容をあらかた把握し友達や親に語り聞かせるくらい熱中した。
それくらい思い入れのある作品だったため、Amazonプライム入りした時は大喜びで、好きだからこそ観るタイミングをいつにするか思い悩んだ。我ながら面倒くさい偏愛を拗らせている。
そうして満を持して観たわけだが、視聴開始後すぐに『市川崑がアニメ化したのかな?』なんて考えが頭をよぎった。市川崑の金田一シリーズも全作観るほど大好き(ちなみに一番好きな作品は悪魔の手毬唄)なのだが、閉塞感漂う集落での陰湿な猟奇殺人といい、予想以上に派手な殺人描写といい、色使いといい、ところどころにに市川崑エッセンスを感じた。
そしてあまりにも救いのないストーリー展開は予想外で驚いたが、個人的にはとても好き。血に飢えたアドレナリンジャンキーがわがままを言うと、これだけ大人向けの作品に仕上がったのだから、いっそ年齢制限を設けて徹底的にえげつない描写を見せてほしいななんて思ってしまったのは内緒です。
ただでさえ大好きな作品を、同じくらい大好きな作品によく似た雰囲気で描いてくれたので、ついついないモノねだりをしてしまうくらいには、この作品にのめり込んだ。
後半にチラチラ出てくる妖怪達を見て、思わず妖怪図鑑を参照したくなったのは私だけではないはずだ。さがり、山おろし、大百足はわかったので、幼稚園時代の自分を褒め称えたい。
下半期もAmazonプライムにべったり寄りかかりながら、小さな島国マルタの片隅で映画に埋もれていきたいと思う。
余談だが直近で(2024/7/8の時点)観た作品は『友だちのうちはどこ?』なのだが、『オリーブの林を抜けて』同様なんだか好きだなあって思える映画でした。