「眠りかけているものに」
新人研修の時期なのだろう、ビジネスホテルから、
スーツケースをゴロゴロと引っ張りながら出てくるフレッシュさん。
出会って短期間とは思えない雰囲気、別れ際に挨拶を交わして、
同じ組織人として仲間として一体感を、感じさせてくれた。
偶然にも側を通りかかっただけだけど、すりおろしたばかりのレモン
スーッと酸味が漂ってきた。
ゴロゴロと引っ張りながら、駅まで向かって行ったのだが、
フレッシュさんが眩しい季節になったことすら、忘れてしまっている
自身が、少しばかり恥ずかしく思えた。
人が移動する、新しいことを始める、笑い語り合い、仲良くなっていく。
出会った頃より、距離感が近い、お互いの距離を縮めるって、
とても懐かしい響きのようだが、あちらこちらで行われている。
共感や共鳴し合うことで、どんどん輪が大きくなっていくのが、
側から見ていてもわかるぐらい、とても力強くも感じた。
当たり前の日常かも知れないが、遠い昔の出来事を思い出しながら、
これから成長していく姿を、応援したくなった。
自身も、懐かしい思い出を糧にして、前に進まなくてはいけない、
上を向いて歩こうという、眠りかけている心根を呼び覚まされた。
偶々、通りかかっただけなのに、
すりおろされたレモンの香りが、今でも鼻について残っている。
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