「さようならって言えない」
先日、お世話になった人に逢いに行った。
変わりなく元気な姿を、4年ぶりに見ることが出来た。
過ぎ去ってしまった時間を、隙間なく埋めるように、
次から次へと矢継ぎ早に話し続けた。
4時間という時間は、あっという間に過ぎていった。
一緒に汗した仲間たちの話を交えながら、
話題の中心になったのは、自身の環境の変化だった。
波瀾万丈な人生を送っていると言われながら、
平平坦坦と話をする自分自身には、かなり慰められた。
この上なく懐かしく、この上なく思い出深いもの、
時には瞼が熱くなったが、必死になって堪え続けた。
結果的に、10年来の付き合いをさせてもらった恩は、
全く返せなかったような気がする。
また、大きく変わっていたのは、自分だけのような気がした。
嬉しさと同時に、少し寂しさが込み上げてきた。
久しぶりの再会は、幸も不幸も味わわせてくれる。
過ぎ去ってしまった過去を含めて、
今までの感謝の気持ちを、絶え間なく感じ、別れることにした。
あの日の出来事を、絶対忘れないようにと、
とても大切な品をいただき、敢えて見ないで鞄に詰め込んだ。
こぼれ落ちるものを、最後まで隠しながら、
さようならを、決して口にすることなく、
ありがとうございました…とだけ告げて、電車に乗った。
今度、いつ逢えるのかな…
と思いつつ、忘れられないもの、そっと胸の奥にしまい込んだ。
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