Hattie, J., and H. Timperley (2007). The Power of Feedback.  Review of Educational Research. March 2007, Vol. 77, No. 1, pp. 81-112

Disclaimer: DeepL君の訳なので、私のではありません。適時直していますが、完全じゃありません!誤訳などの責任は負いませんので、気になったら原文に照らし合わせください!

この論文の何がすごいの?
エビデンスに基づく教育などで有名なジョン・ハッティ先生の研究論文です。この論文は過去に研究されたデータをメタ分析し、よい「フィードバック」とはなにかを問い詰めた力作です。

先生の有名な著作

抄訳

フィードバックは学習と達成に最も強力な影響を与えるものの一つですが、この影響はポジティブなものでもネガティブなものでもあります。その力は学習や教育に関する論文で頻繁に言及されているが、その意味を体系的に調査した最近の研究は驚くほど少ない。この論文では、フィードバックの概念的な分析を行い、学習と達成度への影響に関するエビデンスをレビューする。このエビデンスから、フィードバックは大きな影響力を持つが、フィードバックの種類や与え方によって効果が異なることが示された。次に、フィードバックを効果的にする特定の特性と状況を特定するフィードバックのモデルが提案され、フィードバックのタイミングやポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの効果など、一般的に茨の道を歩む問題が議論されている。最後に、この分析は、教室での効果を高めるためにフィードバックを使用する方法を提案するために使用される。

フィードバックの定義とは

フィードバックは、自分のパフォーマンスや理解の側面に関してエージェント(教師、仲間、本、親、自己、経験など)から提供される情報として概念化されたもの。

つまり、フィードバックとはある目的を持った情報なんですね。一体どんな目的なのでしょうか。しかし、同時に1つ気をつけなければならないのが、フィードバックはそれ自体では「空気」みたいなものなんです。どういうことかというと、フィードバックが効果を持つためには、それが発せられる文脈が非常に重要なのです。そして、なによりも「何か学んでいる」ことに関するフィードバックが最も効果があるといわれています。単に、「すごいね」「いいね」という賞賛や声がけはフィードバックとしてはあまり効果がないということもわかっています。次のセクションではそれらについて詳しく紹介します。

フィードバックのモデル

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効果的なフィードバックはつぎの3つに答える

では、次からフィードバックの質を高めるためにはどのようなことをすればよいのか、紹介します。

1 FEED UP :     どこに向かっているのか      −> 目標確認

何やりたいんだっけ?何しているんだっけ?目標を思い出させる。

2 FEED BACK :  どのようにやっているか    −> 現状

いまどんな状況にあるのかを客観的に伝える

3 FEED FOWARD:   次はどうするべきか     −> 改善

じゃ、どうしようか、どうすればよくなるのか改善策を伝える

ちなみに、上の3つはそれぞれがバラバラではなく、密接に関連したものです。そして、フィードバックは次のレベルがあるようです。フィードバックするとき、どこがポイントなのかは状況に応じて判断しよう。

1 課題   :課題をどれだけよく理解しているのだろうか

2 手続き  :課題を達成するための重要な手続きをふんでいるのか

3 自己調整 :課題にむけて学習者自身が行動を整えているか

4 学習者自身:学習者自身のことについて、気持ちなど

フィードバックの効果はタイミングによる

フィードバックはスグした方がいいのか、それとも時間をおいてからのほうがいいのか。数々の実験が行われてきましたが、結論から言うとすぐその場でフィードバックを与えた方が効果的であるという実験が多いです。(即時フィードバック)例えば、テストをしたら、スグに採点して、出来る限り返却してフィードバックを与えましょう。時間をおいてしまうと、内容を忘れて、あまり効果がなくなります。ただし、例えば英語の音読など流暢さの練習をしている場合、途中で中断してフィードバックしてしまうと、流暢さの練習を妨害してしまうので、区切りの良いところや、課題が終わってからのフィードバックが望ましいですね。

肯定的なフィードバックと否定的なフィードバックのどちらが効果的か

実は両方とも効果的であるんですよね。肯定的か否定的かよりも、そのフィードバックが、学んでいる内容を達成するために必要な情報であるか、つまりどれだけ課題に関連しているのかが重要です。そして、受け取り方は、その学習者のコミットメントとかマスタリーまたはパフォーマンス志向、自己効力感と密接に結びついています。例えば、学習者がパフォーマンス志向であった場合、ネガティブなフィードバックはプライドを傷つけてしまうかもしれませんね。また、自己効力感の低い人は、ネガティブなフィードバックに反応して、ネガティブな感情を経験したり、次の課題へのモチベーションを低下させたりする可能性が高いことがわかっています。ですから、基本的にこの課題をどうすれば達成するのかそれを真剣に考えている旨を生徒にわかってもらい、なおかつ生徒とのラポールをしっかりと築いておくことが大切ですね。

授業でのフィードバック

すごい難しい課題ですよね・・・。実は、ベテラン教師と若手の教師の差って、このフィードバック力だったりします。いい先生は、先に述べた適切なフィードバックをいつ、どのように、どの程度のレベルで行うべきか、また、3つの質問のうちどの質問に対応すべきかについて、適切な判断を下すことができています。

また、論文によると、「男子生徒への教師のフィードバックは努力不足や行動不良に関連しており、女子生徒へのフィードバックは能力帰属に関連している(Dweck, 1995)。」みたいです。つまり、殆どが否定的なフィードバックだったりするんですね。

ただ、繰り返しになりますが、フィードバックを効果的にするためには、生徒と先生の関係性が重要になります。先生が生徒の課題達成に真剣に向き合っているという姿を示し、クラスの雰囲気を作り上げることが重要です。生徒のために、自分たちがどのくらいうまくいっているか、目標は何か、次は何をすべきかを丁寧に伝えることを心がけましょう!

注)<引用>フィードバックは、異なる意味で与えられるだけでなく、異なる意味で受け取られる(Diehl & Sterman, 1995; Paich & Sterman, 1993, Sterman, 1989)。De Luque and Sommer (2000)は、集団主義文化(例えば、儒教に基づいたアジア、南太平洋諸国)からの学生は、間接的で暗黙のフィードバック、より多くのグループに焦点を当てたフィードバック、および自己レベルのフィードバックを好んでいないことを発見しました。個人主義の文化圏(例:米国)の学生は、特に努力に関連した直接的なフィードバックを好んでおり、フィードバックを求めるために直接質問をする傾向が強く、個人に焦点を当てた自己関連のフィードバックを好んでいました。

文化にフィードバックの仕方を気を付けなければならないようです。ですから、日本の教室では特定の生徒に焦点を与えたフィードバックはあまりこうかてきではないかもしれません。もし、特定の生徒にフィードバックをしたかったら個別に呼びだして、やるのがいいですね。

まとめ

フィードバックは「答え」ではありません。あくまでも生徒が自律的に考え、課題を達成するための「2次的な」ものです!そして、多くの場合とにかく褒めればよいと思われていますが、学習者にいくら「褒め言葉」を投げても課題解決力は高まりません。むしろ、どれだけ学習者に寄り添い、彼らが課題を達成するために必要な情報を与えることが出来るのかが重要となります。出来る限り明確な、そして即時フィードバックを与えることができるように取り組んで見ましょう

原文

http://www.columbia.edu/~mvp19/ETF/Feedback.pdf


参考動画

https://www.youtube.com/watch?v=Vpq09eY4pZo

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