第6回 知財でポンのゲームデザイン3
【間違ったイメージ】と【学習効果】のあいだで
2つの道筋の行く末
知財でポンのゲームデザイン2で書いた通り、間違ったイメージのこともありましたが、ともかく現実に沿った事例の体験ゲームを作成しました。
その一方で知的財産権の学習効果を狙って実例や用語が学習できるゲームも作成。この2本立てをもって知財のゲームにしようと、当初、考えていました。
体験型ゲームの行く末
前述の体験型ゲームは、専門家による検討会を経るごとに、よりリアルな設定が付きまとうようになり、リアルなればなるほど現実との差異を修正する必要が生じてくる。もはやTRPGにした方が良いのではないかと思うほどでしたが、精度を高める作業中、ゲームデザイナーの私の頭の中でもっと煮詰めていきたどり着いたのは単なる『ごっこ遊び』。または演劇にすると良いのかも。とたどり着きましたが、最終的には『現実』でいいのではないか。
ニーズに際限がなくなると「現実の体験」を欲するようになると感じました。これはもはやゲームではないのです。
学習効果を求めたゲームの行く末
学習効果を求めたゲームの方は実際のケース(事例)について、プレーヤーがどう判断するのか、その判断は世間(他のプレーヤー)を納得させられるのかと、なかなかゲームちっくな出来栄えでしたが、弁護士の先生がその場にいると学習効果抜群。でもほぼ正解なので遊びの部分が少なくなる。
逆に専門家がいないと、そもそもその判断が合っているかどうかが不明瞭で学習効果に期待を持てない。
ただこのゲームとして重要な要素は、回答の幅とその場の納得感だが、
2つの要素とも学習効果にとっては、必要性が不確かなものだったりします。
結局、学習効果をスマートに取り上げると「クイズ」に行きつき、もっと煮詰めると「学校での授業」が最善となり、もはやゲームではなくなります。
1年半の労力と【ちゃぶ台返し】
言い訳をするつもりはありませんが、実は上記の2通りのゲームで良いところまで行けていた感じはありましたし、1年半積み重ねたものもあったので、上記の路線で行こうと思っていました。
しかし十分突き詰めていたが故に、突き詰めた先が「もうゲームでなくなる」ことはゲームデザイナーとしては耐えがたかったので、ちゃんとした手順を踏んだうえで、1年半の労力が乗ったゲーム達のちゃぶ台をひっくり返しました。
ただ半分、自棄(やけ)になっていたことも否定はできないですね(苦笑)。
カードの保護に実際の「おもり」を使って、うちわの風で物理的に排除するなんてアイデアを平然と言ってしまうくらい自棄(やけ)でした。
※このあたりの詳細もまた後日かけると良いかもと思っています。
まぁ、まったく新品で作り直そうと・・・。
本当に「こうしたい」という思いを込めたものに・・・。
ゲームの役割と目的
煮詰まった後に戻るのは”原点”
今回、検討を重ねすぎたゲーミフィケーションは煮詰まっていくと実感しました。ただ良いものを作りたいと、みんなで切磋琢磨するからですが、「ゲームとしての役割」を超えてしまうと、もうそれは良いものであってもゲームではないです。
こうして煮詰まった時に見直したのは原点。『なぜゲームなのか。ゲームでどうしたかったのか』、すなわちゲームとしての役割。『作成したゲームで何を伝えたかったのか。』、すなわち目的。この原点に戻ることで、1年半の集大成が、1週間弱で全く違う形ながらも、具体的な形で、その場にいたメンバーが納得のいく形にゲームシステムをリデザインすることができました。
それが「知財でポン」です(ゲームバランスの調整などはもうあと半年かかりましたが・・・)
ゲームとしての役割
今回のゲームとしての役割は何かを改めて考えました。
そうして見えたことは、「知的財産権の知識がつく」ではなく「知的財産権って何だろう。」と考えるきっかけを与えることと、自分たちが表現と関わった時に、知的財産権の活用について感覚的に気づくことでした。
【考えるきっかけを与える】【感覚的に気づく】が今回のゲームとしての役割で、そう考えるとゲームのシステムは、クイズ的なことで専門知識を増やすのではなく、また現実により近い一事例を疑似体験するよりも、知的財産の活用の本質を疑似体験することにシフトしました。
ゲームの目的
理論的にちゃぶ台返しを進めていた時に、冷静に聞き出したのはプロジェクトの発起人からの意見・・・「何をこのゲームで届けたいか」でした。
障がい者福祉アートに関わっている発起人からの思いは「小さな表現を、大切に社会へ発信する『知的財産権の活用』を伝えたい。知財は専門家のものではなく、クリエイティブな業務に関わる全ての人のためだということを伝えたい」とのことでした。
煮詰まっていた私の頭の中を、すーっと一陣の風が吹き抜けた感じがしました。
この時、このゲームの目的が、知財活用のポイントである「表現を守りつつ発信すること」を体験できるということに、私の頭の中で決定付けられました(今、思い起こせば、周りはもっと前からそう言っていたような気が・・・)。
今回はここまで。次回は知財でポンのゲームシステムを『引き算』していく話です。ハイパーリアルと活動分析の話も入れてみます。こうご期待!!
ちなみにゲーム『知財でポン』は、
2020年3月8日開催、ゲームマーケット大阪 ブース:ア05-06 【ぷろぼのプラス】にてゲームマーケット特別価格3000円 限定30個販売します。
よろしくお願いいたします。
上記3/8開催予定だったゲームマーケット大阪は中止となりました。
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