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夢分析は無意識の宝庫 (急がば回れ)

いつぞやの朝、以前のボスと喫煙所で話していたときのこと。

「いやあ、Ohzaさん、聴いてよ。夕べは夢見が悪くて眠れなかった。」とのこと。

朝礼前で時間がないので「あ、それはきついですね。」とバッサリ終わらせた私。ええ、朝礼には遅刻できないし、朝から色々とやることがあるのだ。

しかし前ボスは「Ohzaさんは昨日夢見た?どんな夢だった?」と言ってくるではないか。

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ど、どーして?!今何分だと思ってるの?

でも、よくよく考えてみれば朝礼の司会者である1番偉い人のはずのこの人が今ここにいるのだから、朝礼は始まらないわけだと気が付いた。

ので、「私もある意味変な夢みましたよ。」と1分くらいで話した夢の内容を今でも覚えている。

私はタクシーに乗っていて、そのタクシーは道路をまーーっすぐ走っている。快調に進んでいる。

でも、ある時からそのタクシーの運転手が左に曲がってしまう。

「あ、こっちじゃないです。まっすぐです。」と言った時には既に遅し。

左にちょっと曲がっただけでそこは広大な湖になっていて、その湖の湖面から、何やら大きな赤い魚がバッシャーーン!と飛び出して来る。

鯛だと思うのだけど、そのおでこが出っ張っている。80センチだか1メートルくらいはある。

運転手は無言で停車している。これを見せたかったの?それは良いから元の道に戻ってまっすぐ進んで!

それから元の道路に出てまた走り出すわけだが、困ったことに左に曲がり角が出現する度に曲がっては先ほどの湖の前に行く。そして、湖に行く度に、おでこが出っ張った大きなが鯛が跳ねてバッシャーン!

も、戻って。見ました、観ました。鯛が跳ねてるのは分かりました。分かったから。

しかし、少し走るとまた左に曲がって美しい湖、何やら立派な鯛がバッシャーン!

いい加減にして。曲がらないで。急いでるの。戻ってまっすぐ走って!

再び道に戻るのだが、左に曲がって湖、鯛がバッシャーン!

という中々前に進めない夢だったんですよ という話。

他人の夢ほどつまらない話はないというが、実は私の場合は自分の夢も他人の夢もつまらなくはない。

通常、人の無意識というのはコントロールできないものでありながら、人の心の広大な位置を占める。だから出来れば仲良くしておいた方が良い。

夢はその無意識の宝庫で、自分の無意識からのメッセージが沢山詰まっている。もう一つ言うと、世界中の他人の無意識とも繋がっているというのがユングさんの説でもあった。

だから、単純に自分を知るというだけに留まらないミラクルが起こるのも夢分析の醍醐味でもある。

それはさておき、前ボスに上記の夢の話を1分もかからないスピードで話して「さ、朝礼ですね。」と言った私。

しかし、ふと顔を見ると目の前のいかつい中年のオジサンは微動だにせず無言で目を見開いている。「・・・・・。」

そして「似てる。僕の夢と似てる!」と仰る。

彼の夢の話を聴いてみた。← お願い、急いで話してと祈りつつ。

彼は高速道路へと続く道をまっすぐ走って急いでいるのだが、何故だか左に曲がってしまう、気を取り直して元の道路に戻るのだが、曲がり角がある度に何故だか左に曲がってしまい、いつまでも高速に乗れない!という内容だった。← 君たち朝礼はどうしたの?

「僕はOhzaさんの夢と僕の夢が凄く似ているように感じる。」

確かに、まっすぐ進んでいるのに意図せず左に曲がってしまうところ、それを繰り返すところが似ている。

私の場合は、タクシーの運転手とか、おでこが出っ張った赤い鯛とか大きな湖とか、いくつかのモチーフが存在しているが、二つの夢は同じメッセージを伝えていると言っても過言ではない。

何故ならば、夢に登場する存在は全部自分自身だから。だから、鯛も運転手も湖も、もっと言えば道も風景も全部自分自身の象徴でしかない。まあ、自分の夢なのですから当然と言えば当然だけど。

カウンセリングなどで夢分析をするときは、一通り夢の話を把握した後にそれらの鯛や運転手や湖に喋らせてみるということをやる。慣れると自分一人でも出来る。どちらにせよ、目が覚めるような気づきが起こる。

彼と私の差異として、モチーフや登場人物の数の差があるのは、多分彼が責任感がある人間だからだ。

私の場合は左へ曲がる運転手のせいにしていたり、いくら走っても道沿いに存在するどんだけデカいんだ?という湖のせいにしたり、どうして鯛が道沿いに着いて来るの?と色んなことのせいにしているけれど、それらは皆自分なんだよね。

「でも、良いなあ。Ohzaさんみたいに何だか縁起の良さそうな鯛とか、どうして出ないんだろ。」

それがボスの良いところなんです。はたまた私みたいに色んなのが出てくる人も面白いし。

「ところで、どういう意味があるのかな?どうして偶然話した夢が似ているのかな?」と前ボスが興味を持って下さったことが凄く面白かったし嬉しくもあった。

何故なら彼はロジカルシンキングの塊で、数字がすべて。冗談も通じないし、決してフワフワしたことは言わない。こういう不思議な話には一切興味を示さない人だったから。

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だからもっと詳しく話を聴きたいのだけど、一つだけ言えるのは、これは紛れもなく凄く良い夢で、彼は近々夢の中で象徴されている念願の高速道路に無事に乗るだろうと言うこと。

今は思い通りにならない部下とか企業の方針とか色んな理由で引っ張られて寄り道をしなければならないこともあるだろうけど。

もうすぐ念願の高速道路に無事に乗れるよ と夢は言っている。

それを話したいのだけど・・・。うー、朝礼だってば。どうしよう。

とりあえず私は「今ね。」と言った。

「うん、うん。今?」


私らは今この時、完全に左に曲がっています!すぐに降りて朝礼やりましょう!

怒号に近い声にはじかれたかのように二人ドドドド!と事務所へ降りて行った朝だった。

それから1年後、彼は1施設の施設長だけでなく大きなエリアの統括部長になった。

M&Aの部門で多くの人にWin-Winの関係をもたらしたり、彼が講師として開いたロジカルシンキングの講座も大好評で、そこには暖かさとユーモアもあった。


夕べ、夢の中で、走って来る対向車がカッチカッチと合図を送って来た。運転手は彼だった。

あ、なんか私、方向を間違えているな。教えてくれてありがとうと片手をあげた。

もちろん夢の中の彼とは現実の彼ではなく、実在する彼をモデルにした私自身である。

夢も人も自分もこの世界も、実は色んなことを雄弁に語っている。

夢と対話してみて。そこにあなたがいる。

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