湯布院で訪れたい 3つの魅力的な現代建築
美しい由布岳の自然に囲まれ、有名な温泉地でもある大分県の湯布院。その湯布院で、魅力的な現代建築を3つ巡りました。
それぞれの建築家が手掛けた、大分県内で観られる他の建築とあわせてご紹介します。
▍由布院駅 (設計:磯崎新)
まずは、湯布院の玄関口「由布院駅」。設計は2019年にプリツカー賞を受賞した建築家・磯崎新で、1990年に竣工しました。
外観はシックな黒一色ですが、木造で温かみのあるデザインです。中に入ると、ロビーは高さ12メートルの吹き抜け空間。外観とは異なり、白壁に木材の梁や天井が見えるモダンな雰囲気が広がります。
礼拝堂をイメージしたというこちらの駅舎、吹き抜けは交差ヴォールトというアーチ状の構造で、静かで荘厳な雰囲気を醸し出しています。
日本でも珍しい、改札口のない駅で、ロビーから直接ホームに出られます。待合室を兼ねたホールはギャラリーとしても利用されています。運が良ければ「特急ゆふいんの森」も見ることができます。
磯崎新は大分県出身で、県内には他にも彼の作品が点在しています。別府市の「ビーコンプラザ」などのほか、大分市の「アートプラザ」は国の登録有形文化財にも登録されています。
▍由布市ツーリストインフォメーションセンター (設計:坂茂)
今回、わたしが湯布院を訪れて初めて知り、とても魅力的に感じた建築がこちら。
湯布院駅のすぐ隣にある「由布市ツーリストインフォメーションセンター」です。設計は持続可能な建築デザインで知られる坂茂建築設計です。坂茂は2014年にプリツカー賞を受賞しています。
隣接する由布院駅と対比を意識して設計されたこちらの建物は、アーチが連続するような構造で、有機的な温かみを感じさせます。木造の美しい曲線が特徴で、木材の自然な色合いが活かされています。美しく湾曲する柱は、複数枚の板材が積層されているようです。
2階にはエレベーターと曲線が美しいスロープがあり、全面ガラス張りのため雄大な由布岳を望むことができます。館内にある椅子も紙管で作られており、環境に優しいデザインが随所に見られます。
大分県内では「大分県立美術館(OPAM)」も坂茂建築設計が手がけており、こちらも木材とガラスを使った美しい建築です。
▍COMICO ART MUSEUM YUFUIN & COMICO ART MUSEUM YUFUIN Annex(設計:隈研吾)
わたしは今回の旅行の目的地のひとつとして訪問した、「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」。隈研吾建築都市設計事務所の手がけた建築で、湯布院の自然と街並みに溶け込む「ムラ」をコンセプトにしたものだそうです。
黒いシックな外観には「焼杉」が使われています。細い板が並ぶ外壁と薄い切妻屋根は、同じく隈研吾の手掛けた根津美術館や那珂川町馬頭広重美術館などを想起させます。
ギャラリー内は黒と白で統一され、落ち着いた雰囲気。2つの展示室はガラスと水盤で隔てられており、展示室ごとに異なるリズム感を楽しめます。
新館「COMICO ART MUSEUM YUFUIN Annex」は、湯布院の多面的で洗練されたイメージを表現しており、上方に広がる外壁の下には水盤が広がっています。
2つの建物は屋上でつながり、自然素材や和紙を使った明るい空間が広がります。屋上には奈良美智や名和晃平の大型彫刻作品も展示されています。
こちらは建築だけでなく、展示作品も日本を代表する現代アーティストの名作が揃い見応あるので、ぜひ展示もご覧ください。
隈研吾建築都市設計事務所は、このほかに、湯布院にある宿泊施設「界 由布院」のデザイン監修なども手掛けているそうです。
湯布院で印象に残った3つの建築をご紹介しました。湯布院を訪れる際は、温泉地の散策とともに、これらの美しい建築もぜひ巡ってみてはいかがでしょうか?