茶の世界史
"元来『文化』であった茶が『商品』になり、イギリスを中心に世界の日常の飲料となったとき、飲茶から思想が脱け、美が消えた(中略)近代化は茶から思想や芸術を奪い、茶を物質におきかえたのである"1980年発刊の本書は比較文化史、経済史としての緑茶、紅茶について考えさせてくれる。
個人的には人前で日本美術史を話す機会がある事から茶については、それこそ名著の岡倉天心『茶の本』から各家元の出している本まで読んで来ましたが【世界史、世界市場における視点】で茶を捉えた事がなかった事から興味を持って手にとりました。
さて、本書では一部においてはオランダにより『文化』として西洋に紹介された茶が、イギリスに定着する中で次第に【物質文化、資本主義『商品』になっていく】過程が、二部では明治維新以降、本格的に世界経済システムに取り込まれた日本の茶が必然として『商品』として官民挙げてグローバルな輸出競争に取り組むも【終始劣勢のまま敗北】した過程が、それぞれ可能な限りの【数字や資料を使って説明してくれているわけですが。
全体として、私がこれまで読んできた茶関連の本では多くの場合、茶の入れ方といった『ノウハウ』や禅と結びつけた『日本独自の精神論』としてのみ【ガラパゴス的に語られる】ことが多かったことから。俯瞰的かつ客観的な視点がとても新鮮に映りました。
また二部で扱われているグローバル『商品』としての茶の輸出競争話に関しては、やはり昨今の大手広告会社に丸投げし失敗し続けているとされるクールジャパン戦略を時間を超えてデジャブ的に見せられているようで、一向に変わらない【独りよがり、精神論に依る】必然として敗北する商売下手さに日本人の一人として終始胸が痛かった。
比較文化史、経済史としての茶に、あるいはノウハウや精神論的な茶文化紹介に食傷気味な誰かにオススメ。
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