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新解さんの謎

"疑問にはとにかく答を、そして、次行きましょう、という主義の人には、新解さんは見えないだろう。何いってるんだ。ただの辞書じゃないか、次行きましょう、ということで一生を終る。"1999年発刊の本書はモノを見る達人。によるネット社会以前が保存された"言葉"のジャングル体験記。

個人的には、ハイレッドセンターとしての活動はもちろん、トマソン、老人力と著者の社会に向ける"まなざし"が好きだったことから。本書も手にとってみました。

さて、そんな本書は"文章による語釈"を可能な限り徹底した結果『読んで面白い辞書』として話題になっていた小型国語辞典、新明解国語辞典のユニークな語釈や用例を"攻めの辞書だ!"と三章に分けて、版を比較したりしながら【自由に、かつ妄想を膨らませて紹介している】表題の『新解さんの謎』が前半に約140ページ。それにネット時代を迎えて"紙"の未来について、チラシや通貨、年賀はがきや手帖、余白や機能と【不要不急の考察を重ねた】『紙がみの消息』が後半約150ページで収録されているわけですが。

まず全体として、2022年現在からは約30年間という事で、スマホやグーグル、Wikiは当然に存在せず。またインターネット黎明期で低速かつ動画再生はおろかテキストメールがやっと。といった時代の様子が保存されていて。新解さんの解釈以前に【そう言えば、昔は知らないことは『辞書を引く』のが当たり前だったな】と懐かしく思い出させていただきました。

また、著者が存命だったら。スマホでググったり、漫画や雑誌を電子書籍で眺めるのが"当たり前"になり、不況や行き過ぎた法令遵守でますます余裕や余白がなくなり【合理性やコスパがもてはやされる】今の時代をどう語るのだろうか?読みながら、そんな事も考えてしまいました。

著者ファン、国語辞典ファンの方はもちろん、1990年代の風俗を懐かしく思い出したい方にもオススメ。

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