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承認をめぐる病

"私が求めるものは『承認』よりも『関係』であり、『コミュニケーション』よりも『ダイアローグ(対話)』である(中略)この現在を"病み抜ける"ための道標として念頭に置きつつお読みいただければ幸いである"2013年発刊の本書はSNSでもたびたび話題にあがる『承認欲求』への処方箋を精神科医が模索した良書。

個人的にはアニメの戦う美少女たちを分析した『戦闘美少女の精神分析』も面白かったので、本書もタイトルにひかれて手にとりました。

さて、そんな本書は著名な精神科医である著者が【承認とコミュニケーションをテーマに】各方面で書いた表題作を含む17本の論文、評論、エッセイを一冊にまとめたもので。ふみふみこの可愛らしく、やわらかい表紙イラストとは裏腹に?専門的で難解な内容も含み、【全体としては散漫な印象】もあるのですが。しかし【章ごとに眺めると充分に刺激的】で、今でも通用し、共感する内容も多いのですが。

なかでは、やはり前半の『思春期解剖学』と分類した第1章から第8章にかけての部分。議論や説得の技術ではなく『場の空気を読む能力』や『笑いを取る能力』を意味する【いわゆる『コミュ力』偏重の時代】となる中、若者の間ではマズローの欲求段階説なら本来、高次である『承認欲求』が、生理的な【生存欲求より重視されている】といった話を、エヴァンゲリオンやAKB、秋葉原事件、ヘーゲル=ラカンを引用して語っていて読み応えがあり、この辺りが特に毎日のように【SNSやWEB、動画で発信している】学生の方には響いているのでは?と思いました。

また、後半の『精神医学のささやかな抵抗』と分類された第9章から第17章においては、うつ病の分析も当然に専門的で勉強になりましたが【『アイデンティティ』から『キャラ』へ】と、前述の『コミュ力』偏重主義によるカースト化で、本来の自分より【『キャラ』の振り分けが事実上強制され】また同時に表裏一体の変質として、虚構と現実においても(環境は重層化しているのに)【身体性が衰弱している】と、ライトノベルやゲームがその表出であるとの指摘も【Twitterでの複数垢保有やVRのアバター複数所持】を頭に浮かべて興味深かった(巻き込まれるような『夜と霧』フランクル=相田みつを論には笑いましたが)

フォロワー数や再生回数、いいね!の数といった『承認欲求』地獄におちいっている方や、うつ病に関心ある方にオススメ。

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