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料理の四面体

"この料理の四面体こそが、世界にかって存在した、いま存在する、これから存在するであろう、すべての料理を包括する一般原理を、目に見えるかたちで表現したモデルなのである・・・といっても、信じてもらえないだろうか。"1983年発刊の本書はレヴィ・ストロースの『料理の三角形』から着想を得た刺激的な一冊。

個人的には自炊(間違っても料理とは言えない)が増える中で友人にすすめられて手にとったのですが、これがハウツー本とは全く違った知的刺激を与えてくれて、とても面白かった。

具体的には二つ、一つは後述する『料理の四面体』を導くための事例紹介とはいえ、アルジェリア式羊肉シチューから始まる料理のレパートリー、ローストビーフの原理、てんぷらの分類学、刺身という名のサラダ(!)スープとお粥の関係といった、言葉の語源までこだわりつつ、流れるように展開する料理話がいわゆる【他にはあまりない文化的な切り口】だったこと。

またもう一つとして、そこから本書は構造主義の祖とされるレヴィ・ストロースの《生まのもの》《火にかけたもの》《腐ったもの》"料理の三角形"に対して、火を頂点にした水、空気、油の料理の四面体を提案しているわけですが。著者自身が"博士から文句を言われたら撤回する"と述べているように、厳密さはともかくとして【大胆不敵さに膝を打つ楽しさ】を感じました。

メニューの名前一つから?と思ってしまう料理素人のハードルを下げてくれつつ、文化史や哲学好きも納得させてくれる一冊。食でウンチクを語りたい全ての人にオススメ。

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