意識と本質-精神的東洋を索めて
"意識と存在のからみ合いの構造を追求していく過程で、人はどうしても『本質』の実在性の問題に逢着せざるをえない。その実在性を肯定するにせよ否定するにせよ、である。"1983年発刊の本書は30以上の言語を流暢に操った"語学の天才"による、人間の【意識が如何に本質を捉えるかを基準に】東洋哲学全体を分類し、位置関係を明らかにしようと考察した名著。
個人的には西洋と日本の哲学を比較しようと考察してきた本は何冊か手にとりましたが、イスラームについてはまったく無知な為、本書から学び視野を広げようと手にとりました。
そんな本書は、ソクラテス以来西洋哲学が切り離してきた【本質を論じる認識論と存在を論じる存在論を確認し軸にしながら】そこに仏教やイスラーム独自の思想を織り交ぜて、時には図形を、また馴染みの人物たちを例に出しながら幅広く考察しているわけですが。
率直に言って、イスラーム哲学には全く馴染みがなかったので【東洋哲学全体を俯瞰して考察する】には当然とは言え、良い意味で自分の無学さを実感させてくれたのが良かった。(勉強しなければ!)
また、日本人には言葉としては馴染みのある仏教や禅に関しても、西洋哲学はもとよりユダヤ教、キリスト神秘学の領域まで踏み込んで対比し、説明を加えてくれているのも、こちらはこちらで仏教や禅に関する理解が大幅にすすみ、知的好奇心が大いに満たされました。
西洋哲学、東洋哲学を俯瞰して広く考察したい誰かへ。また世界的に名声を博した東洋思想解説者としての著者に刺激を受けたい若手にもオススメ。
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