重松清 『トワイライト』

 本の表紙にもなっている「太陽の塔」がこの小説のテーマを体現しているような気がした。あの塔が万博で輝いていた時、誰もが未来はキラキラと煌めいているものだと想像した。ところが21世紀の現在はそのようなものにはならなかった。万博記念公園でひとりぼっちで建っている太陽の塔のように、あんな時もあったなと懐かしむものになってしまった。そんな現実を生きていることを少年時代に埋めたタイムカプセルにより気づかされる元同級生たち。そんなカプセルの中に閉じ込めた「懐かしい未来」の中で異彩を放つ、白石先生の手紙の中の「今、幸せですか?」という文言は、過去も現在も未来も飛び越えていき、かつての教え子たちに圧倒的な力を持って問いかけてくる。その答えを探すため、同級生たちは新しい未来に向けて再びタイムカプセルを埋めるのだ。そこに克也が入れる太陽の塔のフィギュアは、あの輝いていた太陽の塔ではない。周りが変わっても、それ自体は変化しないが、ただそこにあるだけで今と未来を繋いでくれる、それが「ふるさと」というものなのだろう。10年後、このカプセルを掘り返す時、同級生達は痛感するだろう。「あんな時もあったな」ではなく「あんな時があったから今がある」ように過去は懐かしむべきではないことを。





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