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佐藤達夫 花の画集 SATO’s FLORA(1995年)
2003.07.31 Thursday
佐藤達夫さん、元人事院総裁として知られる人ですが、ボタニカルアートを愛する人としても有名でした。残された沢山の植物画などを新たに編集した、これは、佐藤さんのフローラ(植物誌)(出版元:ユーリーグ)です。
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花を愛する男性と言うのが、あまり身近にいないせいか、この方の本を読んでいると、ますます不思議な気がしてしまうのですが・・・考えてみると、著名な植物画家はみな男性でありました。(ルドゥテ・フィッチ・・・そして牧野富太郎博士も)
この方はお忙しいお仕事の合間を縫って、野山に出かけ、本当に素晴らしい植物画を残されただけでなく、珍しい品種の標本なども数多く手がけ、その功績は本当にすごいことだと思います。
植物に対する慈しみの気持ち、そして人に対しても温かなお気持ちで接してこられたのを、この文章の中から読み取ることができます。
交流のあった牧野富太郎博士は、いかにも学者肌の素朴な人柄で、誰からも慕われたことで知られています。
博士の人柄についても、とても魅力の伝わる文章で書かれていて、叶わぬことですが、「お会いしてみたかった」という想いが募ってしまいます。
シーボルトが、日本の植物(アジサイなど)をヨーロッパに紹介したことを例に挙げて、耳の痛いことも書かれています。
外国人は公務で日本に滞在すると、シーボルトのように自分の仕事とは直接関係のない「日本の文化」を自国に伝えている。それなのに、日本人駐在員はなぜ辺境に送られると、「左遷だ」と嘆いて酒やギャンブルに溺れるだけなのか。すぐそこに素晴らしい未知の世界が広がっていると言うのに。
時間がないから豊かに暮らせないのではありません。
時間は作るもので、心の持ちようで、いかようにも豊かに暮らせるもの・・・そんな気持ちにさせてもらえる本です。
文章もとても引きこまれるものですが、何より細密な植物画の数々は、本当に見事です。特に彩色なしの鉛筆画の正確さは息を呑むほどです。
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佐藤達夫(1904年5月1日 - 1974年9月12日)は、日本の法制官僚。法制局長官、人事院総裁。随筆と絵画をたしなみ、植物研究家としても知られた。
従弟に美術評論家、京都国立近代美術館館長、京都造形芸術大学学長の河北倫明(1991年文化功労者)
2025年現在、古書でしか入手できないようです。aはメルカリなどしか出て来ません。bはかろうじてAmazonで買えます(bは持っていないのです)。