カフェに行くまでの長い長い旅|パリ2015 #4
前日の行程:
フランス革命絡みの史跡を巡ったら、やっぱり血生臭かった。
パンを買う
パリ3日目の朝にして、ようやくパンを買った。
僕が、「ボンジュール」「メルシー」の他に、もう一つ覚えていった言葉に「ジュブドレプランドルスシ(これください。)」という、切り札がある。買いたいものを指差してこれを言うと買い物ができる。僕のような人見知りでビビりでも、これさえあれば飢えることはない。
・・・と、思っていた。
パリ、基本的にコンビニがほぼない。代わりにカフェがそこら中にある。人見知りでビビりな僕にとって、カフェは少しハードルが高い。ギャルソンに声をかけ、席に案内してもらい、メニューを見て注文をして、食べ終わったら会計をする。「ジュブドレプランドルスシ」だけでは、どうやっても足りない。
という背景で、ここまでスーパーで買ったものでなんとか空腹を紛らわしてきた。だが、せっかくのパリだ。スーパー以外で買い物や食事をしてみたい。できればカフェで。
この日は朝一からルーブル美術館に行く予定だ。その前にどうにかして朝食を取りたい。できればカフェで。そんな思いと空腹を抱えつつ、開館前の早朝のルーブル美術館まわりをうろつく。カフェカフェつぶやきながら歩き回るが、早朝すぎてカフェが開いていない。
時刻は朝の7~8時ごろ。パリジャン、パリジェンヌは通勤時間である。彼らの朝食はどうもカフェではないようで、代わりに紙袋に入ったパンを食べ歩いていた。
そうだ、ブーランジェリー(パン屋)なら「ジュブドレプランドルスシ」が使える!
通勤中のムッシューを尾行し、ルーブル美術館の路地裏にある小さなブーランジェリーを見つけた。そこそこ並んでいるので、前の人がどのように買っているかを観察することができる。
言葉は分からないものの、前に並んでいたムッシュー&マダームは、店員と一言二言言葉を交わすだけでパンを買っている。そしていよいよ自分の番がまわってきた。満を持して僕は切り札を使う。
「ジュブドレプランドルスシ」
僕が指さしたパンを紙袋に詰め、手渡してくれた。時間にして数分、気持ち的には数時間の逡巡を経て、僕はパンを手に入れた。
味は普通だった。
ルーブル美術館 広くてでかい
むしゃむしゃパンを食べた後、ルーブル美術館に入場する列に並ぶ。まだ開館前だというのに、長蛇の列だった。そして開館時間の9時をすぎても列が進む様子がない。理由は分からないが開館が遅れているようだ。
結局開館したのは10時すぎ。スタッフが行列に向かって手招きをしたのを合図に、人々から歓声と拍手が。皆の思いが一つになった瞬間だ。
ロビーは結構な混雑。昨日訪れたオルセー美術館も広大だったが、ここはそれ以上。さすがルーブル。どこから手をつけていいやらサッパリなので、とりあえずリシュリュー枢機卿にあやかって、リシュリュー翼から入場する。こういうとき人は少しでも知っている名前にすがるものなのだ。
意外とリシュリュー翼は混んでおらず、エジプト・オリエンタルコーナーにいたっては誰もいない。おかげで「目には目を歯には歯を」でお馴染みのハンムラビ法典とかゆっくり見られた。確かこの辺りのものは、かのナポレオンが現地から勝手に持ってきたもののような。
適当に進むと、いつの間にかリシュリュー翼を過ぎ、奥のシュリー翼に入っていたらしい。こちらも人が少なく、絵画エリアもゆったり。有名どころでは「いかさま師」あたり。さすがいかさま師、目があやしい。
ゆったりだったのもこの辺りまで。ルーブルの看板作品「モナリザ」は超混雑で、ゆっくり観るどころか遠巻きにチラ見がいいところ。「ナポレオンの戴冠」も混んでいたものの、絵画自体が巨大なので、ナポレオンに挨拶程度はすることができた。
神々しい「サモトラケのニケ」を観たあたりで、とりあえず観たいものは観られたので、ここらで退館。全部観ようとするのは、新宿駅を隅々まで歩くようなものなので、切り上げどきが肝心。
ポンピドゥーセンター ホワイトキューブ最高
個人的に楽しみにしていたポンピドゥーセンター。パリの国立近代美術館で、欧州最大規模。所蔵は、ピカソ、カンディンスキー、マチス、シャガールなどなど、有名人が並ぶ。
パイプや配管やらが露出した特徴的な見た目。同じく露出している長い長いエスカレーターを登ると、広い美術館だ。ルーブル美術館は、元が王宮だったこともあって、重厚な作りだったのに対して、こちらは現代的で明るいホワイトキューブな室内なので、広々と感じる。(ルーブルに比べれば空いているのもある。)
展示は絵画彫刻コンテンポラリーなんでもあり。常設展のみだったが、コンテンポラリーの方が楽しかった。言葉の意味は分からない分、直接感じることが出来たような気がする。
屋上テラスからは、エッフェル塔・サクレクール寺院・凱旋門・ノートルダム寺院を一度に見られる。これは大変素敵で最高。
昼食どき、美術館内のカフェで軽く食事。朝のブーランジェリーを同じく、指さし注文ができるので、もはや余裕で注文することができた。
味は普通。
ギャラリーラファイエットとモノプリ お土産
この辺りで、パリ市内で観ようと思っていたものはまわってしまったので、ばらまき菓子を買う時間にあてる。
ギャラリーラファイエットのお土産コーナーでチョコレートなどを購入したが、やはり高級デパート、価格がお高い。
そのため、より現地っぽいものを求めて、フランスの大手スーパー「モノプリ」へ。ここで文具など(ヒゲスタンプ)のお土産を買う。キッコーマンの醤油を見つけてしまったので、思わず購入した。これが逆輸入だ。(個人的にや、エッフェル塔入っているもの買ったら負けだと思っている。)
一度ホテルに荷物を置き、個数を確認。残りは空港で買えそうなので、大丈夫だろう。結局お土産購入で2、3時間かかってしまった。
george V cafe やっとの思いでカフェ
個人的にお土産を買うという時間が、最も体力を使うので、ホテルで休憩。すでに夕方に差し掛かる時間だったので、今日はこのまま休んでしまおうか、と思った。
だがしかし、パリ市内を歩けるのは実質今日が最後。翌日は現地ツアーで一日パリを離れ、明後日は帰国の日なのだ。観るべきものは観たと思うが、やり残したことはないか。。。
カフェに行ってない!
僕にとってハードルが高くて行けなかったカフェ。しかしここで行かなければ、ムッシュがすたる。ついでに本場のキッシュを食べたい。
一念発起して、再び街へ繰り出した。言葉が分からなくても、観光客に慣れているカフェならなんとかしてくれるだろう。よって向かう先はシャンゼリゼ通りのカフェ。ネットで日本人の書き込みを見つけたgeoge V駅近くのgeorge V cafeなる場所へ。
途中紙幣が心許なかったので、おろしたかったのだが、どうもおろせない。理由は分からないが手元にはヨドバシのクレジットカードがある。これが頼みだ。
目的の店に行くと、愛想の良さそうなギャルソンが出迎えた。訪れる日本人が多いのだろう、彼は「ドウゾコチラヘー」と、日本語で案内をしてくれた。
僕が着席すると、彼は一度離れ、メニューを持って現れた。
「久シブリダナ!」
えっ、と思ったが、どうも文脈的には「お待たせしました」的なノリのようだ。意思疎通が出来なさそうで出来る感じがたまらん。
日本語のメニューを持ってきてくれたので、迷うことなくキッシュとオレンジジュースを注文。これで20ユーロ(約2,000円)。観光地価格か、と思っていたが、出てきたのはサラダやらパンやらお菓子やらのセット。これは20ユーロ。
空腹もあって、ナイフとフォークでキッシュを切り分けて口に運ぶ。
・・・あんまり美味しくない。
なんかパサついている。見た目は美味しそうだったのになぁ。機内食の方が美味しかった。
一念発起してありついたキッシュはイマイチだったが、モソモソ食べながら店内の様子を見ていると、これはこれで楽しい。シャンゼリゼ通りの中心にある店だけあって、店内のギャルソンたちは忙しく動き回っている。そんなギャルソンたちに、カウンターにいる女主人が、ベルを鳴らして指示を出していた。本場のマダム、カッコよろしい。
キッシュを食べ終わり、手をあげてペンを書くジェスチャーをすると久しぶりだなギャルソンが会計を持ってきてくれた。カードを預けて支払いを済ませる。キッシュはパサパサのモソモソだったが、パリのギャルソンとマダムの働きっぷりを観られたのはいい体験だった。
店を出ると街は夕暮れ。ちょうど凱旋門が美しくライトアップされ始めていた。夢中でカメラを構えて、さらにはカメラを地面に置いてバルブ撮影と洒落込む。パリで最初に観たのは朝の凱旋門だったが、また夕暮れに観られて良かった。
そんな凱旋門の前では、路上パフォーマンス。いろいろな国から訪れるシャンゼリゼ通りだから、言葉じゃなくて動きで笑わせるようにしている。客いじりはどこも一緒だ。
明日は一度パリから離れ、ロワールへバスツアー。パリの夕暮れは美しかった。