第31号『レベルファイブ……じゃない方の会社』
私は仕事の合間に美容室に行って髪を切ります。
毎回、行く美容室はその時に決めるのでバラバラだったりもするのです。
で、だいたい美容師さんって髪を切りながら話しかけてきますよね?
“お客さん、ここって初めてですかー?”(チョキチョキ)
“初めてですよ”
“あ、そうスか、けどなんか見たことありますよー”(チョキチョキ)
“え?そうですか?”
“なんかテレビとかネットとか出てます?”(チョキチョキ)
“あー、はい、稀にですが”
“え、どーいうお仕事されてるんですかー?”(チョキチョキ)
“あー、えっとゲームソフトを作るお仕事ですね”
“え!?マジすか!?オレめっちゃゲーマーですよ!”(チョキチョキ)
“おおー、そうでしたか、なんか嬉しいですね”
“会社ってどこにあるんですか?”(チョキチョキ)
“あ、実は福岡に本社がありまして”
“福岡!?わかった!『妖怪ウォッチ』の!?”(ピタァッ)
“あ、じゃない方の会社です……”
これ、かなりリアルな話です。
しかも、一度や二度でもない。
なんなら美容室行くとほぼ毎回このやりとりがあります(笑)。
で、更に続きます。
“えっと、なんかすいません”(チョキチョキ)
“いえ、こちらこそ”
“どんなゲーム作ってるんですか?”(チョキチョキ)
“えー、『.hack』っていうRPGわかります?”
“あー、なんか聞いたことありますねー、他にはー?”(チョキチョキ)
“『NARUTO −ナルト−』のゲーム作ってます”
“おおー!マジすか!?オレめっちゃナルト好きでしたよ!”(ピタ)
“え?ゲーム遊んだことあります?”
“やりましたよ!子供の頃!あの格闘の!64のやつ!”(チョキチョキ)
“あ、それウチのじゃないです……”
“え?違うんスか?”(チョキチョキ)
“はい……あとそれゲームキューブですね、64じゃなくて”
“他になんかあります?作ったゲーム”(チョキチョキ)
“『ジョジョの奇妙な冒険』のゲーム……”
“え!?プレステの!?”(ピタ)
“あ、はい、けどPS3のやつですよ?”
“オレ持ってますよ!あの『オールスター』ってやつ!”(チョキチョキ)
“おー、それです。ありがとうございます”
“オレめっちゃジョジョ好きなんですよー、買いましたよ”(チョキチョキ)
“おお、ありがとうございます”
“あれ?ケンコバさんと一緒にネットの番組に出てた?”(チョキチョキ)
“あー、はい、出てましたね”
“コスプレして?”(チョキチョキ)
“はい、私です”
“アレってヅラだったんですか?”(チョキチョキ)
“ヅラですね”
“見てましたよージョジョめっちゃ好きなんで”(チョキチョキ)
“ありがとうございます”
“……(無言)”(チョキチョキ)
“……(無言)”
“あの”(チョキ)
“はい”
“……オレはあのゲーム好きでしたよ”(ピタ)
“……ありがとうございます”
だいたいここまでがワンセット。
そして私は
“次は別の美容院にしようかな”
って思ってまた違う美容室に行くのです。
さて、ここからが本題。
まず私は“この美容院にもう行きたくない”と思ったわけでは決してありません。“嫌な気持ちになったからもうここやだ!”と思ったわけではないのです。
レベルファイブ……じゃない方の会社
【ゲーム会社+福岡】という情報で『妖怪ウォッチ』を思い浮かべるのもごく自然だと思いますし、そりゃそうでしょう、と思います。
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