週刊少年松山洋_タイトル_修正

いくら時間とお金をかけても許される世界

私が学生時代の時のエピソードです。

大学時代の友人たちとはよく車で出かけたりすることが多かったです。

遠出する時は(私はバイク乗りだったので)だいたい誰かの車に乗せてもらってみんなで知らない街に行ってそこの名産なんかを食べたりしていました。

街に着いたら車を停めるために駐車場を探します。

そしてようやくパーキングを見つけてバックで駐車している時に、車中にいた友人の一人がこうつぶやきました。

“ここも月極(ゲッキョク)グループか……”

最初は私も他の友人もスルーしました。

なんのことを言っているのかわからなかったからです。

車を停めてそれぞれが下りている時に目の前の看板を見て気づきました。

「月極駐車場」

って書いてありました。

その横の看板には「月極パーキング」とも書いてありました。

先ほどの友人の発言の意味に気付いた時に一同大爆笑でした。

そうです。

その友人は「月極(ツキギメ)駐車場」を「月極(ゲッキョク)駐車場」と読んでいたのです。

「月極(ツキギメ)パーキング」ではなく「月極(ゲッキョク)パーキング」と読んでいたのです。

そして日本全国どこに行っても「月極駐車場」や「月極パーキング」と書いてあることから、“日本全国の全ての駐車場はこの「月極(ゲッキョク)グループ(という企業)」が押さえているんだな”と思っていたのでした。

その後、目的のお店に入って名産を食べながらも、もうその味なんか関係なく、ずっとその友人の「月極(ゲッキョク)グループ」発言をみんなで笑いながらイジり倒してましたね。

まあ、今となっては懐かしい学生時代の笑える微笑ましいエピソードです。

しかし、私はこのエピソードを思い出す時は、同時に漫画版『餓狼伝』の丹波文七の“あのシーン”を思い出します。

Vol.226で丹波文七が神山徹の家を訪ねた際になかなか道に迷ってたどり着けず30分もかかったという。それもそのはず、神山徹の家の住所「本町(モトマチ)2丁目」を「本町(ホンチョウ)」と読んでしまい間違えていたためである。それを聞いて神山徹は呆れて思わず“バカだな”と漏らす。

“どこに出しても恥ずかしい立派なバカです”

“地上でイチバン強ええ空手 バカじゃなければ務まりません”

“俺や神山さん――”

“あなたのような”

こうして見ると、ただの無知や浅薄がずいぶんと魅力的に感じませんか?

丹波文七の読み間違いはさすがにバカだと思いますが、そのバカさ加減からの開き直りがカッコいい。

一つのことに打ち込み続けた結果の無知・浅薄・馬鹿。

これって演出次第ですが、実に魅力的な【主人公属性】であると私は思っています。

「月極(ツキギメ)」を「月極(ゲッキョク)」と読み間違えた私の友人も、ただ間違えただけでなく、そこから更に妄想して「月極(ゲッキョク)グループ」という日本を支配している架空の企業グループにたどり着いていることがユニークであると思います。

最近よく“どこまでやれば面白いと人は感じるのか?”という話を周りの人間とします。それはゲーム開発においても、漫画やアニメの設定においても、お笑い番組の漫才やコントを観ても。

この世の中にはありとあらゆる分野に数えきれないほどの作品が存在します、が、それらの全てが面白いわけではありません。

“面白い”ものと“面白くない(そうでもない)”ものとがハッキリと存在します。

その境界線はどこにあるのか?

と考えた時に

“AをBと間違えた後にCにたどり着いたこと”

に意味があって同時に“面白み”も生まれるのだと思います。

“AをBと間違えた”だけでは、それはただの“間違えました”というだけの話です。そこからCにたどり着くことに意味がある。

友人のエピソードで言えば

“A「月極(つきぎめ)」をB「月極(ゲッキョク)」と間違えた後にC「月極(ゲッキョク)グループ(という架空の企業)」にたどり着いたこと”

ということになります。

色んな作品を見たり、人と会って話をしてて“うーん、この人の話はあんまり面白くないなぁ”って感じる時ってここで言う“AがBでした”で終わっていることが多いなぁ、と最近感じることがあって。

それを要素分解していったら、学生時代の友人のエピソードを思い出して、それに当てはめて考えてみたら「なるほど」と感じたので紹介させていただきました。

要するに“Plus ultra!!(更に向こうへ)”の精神が大切ってことですね。

(結局『ヒロアカ』になった)

*****

さて後半部分は完全にあとからの追記となりますが、せっかくなので更に掘り下げていこうと思います。

もちろん本業であるゲーム業界の話です。

これは今から20年以上も前の話で、私自身がまだ素人でゲーム業界のことを何も知らなかった時代の話。

大学時代の友人から「一緒にゲーム会社を作らないか?」と声をかけられ真剣にゲーム業界やエンターテインメント業界のことを独学で調べている内に辿り着いた誤った認識の話です。

まさしく「AをBと間違えてやがてCに辿り着く物語」です。

懐かしいド素人の認識がいかに破壊されその向こう側に至るのかをどうか暖かく見守っていただけると幸いです。

誰もが最初はここから始まるという物語。

それでは張り切っていきましょう。

いくら時間とお金をかけても許される世界

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