最初の10年の仕事の仕方①
弊社の場合=ゲーム開発会社サイバーコネクトツーは(有限会社サイバーコネクト時代から数えても)最初の10年の仕事はこんな感じでした。
会社を設立して4年くらいプレイステーション専用ゲームソフト『テイルコンチェルト』『サイレントボマー』の開発を行って、1999年の秋くらいからプレイステーション2の開発機をバンダイから支給していただいて『.hack』の開発を始めようと準備していました。
その時ちょうどバンダイの組織改編が行われてウノさん(鵜之澤伸)がビデオゲーム事業部の次長としてやって来たのでした。
『.hack』の企画を進めていた我々に対してウノさんはこう言いました。
「んっと、さ、君たち何やってんの?『.hack』?何それ?オリジナル?ふーん、シナリオも?世界観も?キャラデザもシステムも全部自分たちで作ってるんだ。ふーん、凄いね」
「けど1回コレ止めようか」
「え?止めるってのは“止める”って意味だよ。開発中止ってコト」
「なんでかって?売れないからだよ」
「君たちの会社って出来て何年?4年?ふーんこの4年間で何を作ってきたのか知らないけどさ、世の中の誰が君たちのこと知ってるの?」
「まだ何者でもないでしょ?君たち」
「俺はさ、アニメ業界でずっと仕事してきたんだよ。アッチの世界ではさ、“やりたいから”って理由だけでオリジナルタイトルなんか誰も作らせてくれないんだよ。わかる?なんでかって?売れないからだよ、常識だよ」
「どんなアニメスタジオもね、設立して最初の10年くらいは“人の仕事”をやるんだよ。小説やライトノベルや漫画原作のアニメ企画の下請けをやるの。それで少しずつ実績を積み上げていって、だいたい10年くらい経って初めてオリジナルの企画を立ち上げたりするの。“ああ、あのスタジオの企画か”って思われてね。それでも実際の所あんまりそう上手くはいかないよね、普通は10年下請けや孫請けをやってそれで実績作ってようやく元請けをやれるようになるって感じかな、もちろん原作モノの。オリジナルの企画を提案するなんて実際はもっと“先の話”だよね、実際は」
「ビックリしたよ。ビデオゲーム事業部にやって来てさ、全ての進行中のタイトルのラインナップを確認したらさ、何本もオリジナル企画をやってるじゃない?驚きだよね」
「おもちゃ屋のバンダイがさ、何やってんだって話だよ。クソゲーしか作ってきてない会社がさ、いっちょ前にプロデューサーを名乗って“この企画は素晴らしいんです!イケると思います”ってフザけんなって部下に怒ったよ。どこの誰がそんな言葉を信用するんだって話だよ」
「商品ってのは“信頼と実績”で作るんだよ」
「なんでゲームソフトだけはアイデアだけで勝負できると思ってんの?」
「ダメダメ、売れないから。だから『.hack』は開発中止、ね?」
1999年当時のウノさんの言葉を思い出しながら言われたことをほぼ原文ママで書いてみました。
弊社のこと(過去)に詳しい方であれば結果的に私はこのウノさんの提案を突っぱねて口説いて『.hack』の開発に改めて着手することになる……ということをご存知かもしれませんが、それはまた別のお話ということで。
*その『.hack』誕生までのやりとりが赤裸々にこちらの書籍にまとめられていますので興味がある方はどうぞこちらの本を読んでください。
今回の記事で伝えたいことはこの時のウノさんの
「まだ何者でもないでしょ?君たち」
って言葉に込められた意味の話です。
私はウノさんが言ってることが“全て”だと思います。というか言葉で全部言ってくれています。“商品は信頼と実績が全てだ”って。(めっちゃ優しい人です。だから大好きです)
「やりたいことをやるのは、“やれるように”なってから」
ということです。
さて、実は今回ちょっと思う所があってこの記事を書いています。
最近気になっているのがよくネットとかで話題になる“無料で仕事を受けるな”という話についてです。
“著名なイラストレーターの元にわけのわからない会社から驚くほど単価の安いオファーが来た”というタイプの話のことではありません。(これは何も調べずに失礼なオファーの仕方をしたバカの話なので今回のテーマとはズレています)
たぶん結構過激な意見になってしまうので、早々と有料部分に突入させていただきます。(すいません)
私が考える=感じるエンターテインメント業界の実態とその攻略法について(私なりの)意見を述べさせていただきます。
それではハリきっていきましょう。
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