バカのドミノ倒しかよ③
「モチベーションが下がった時はどうしたらいいですか?」
全国のゲーム系専門学校や大学で年間100回ほど講演をやっていると必ず後半の質疑応答コーナーでいろんな質問が飛び出してきます。
その中でも私が最も困るというかグッと一度こぶしを握って深呼吸して落ち着いてから答えるようにしている質問のタイプが冒頭のものです。
まぁ書き方でわかると思いますが、というか私のことをとっくにご存知な隣人のような皆様であればこの手の質問はだいたい私をヒートアップさせるというか、もっとわかりやすい表現で言うと「怒らせる質問」だってことが想像ついていたのではないでしょうか。
あ、いや、けど、それも昔の話ですよ?
今は怒りません。
怒らないようにしています。
そもそも若い学生さんを導いて学んで育ってもらって真っすぐにゲーム業界に進んで欲しくて講演をやっているのに、出てきた質問によっては頭ごなしに怒ってしまっているようでは「何しに行ったんだ?」って話になってしまいますからね。
なので今は怒りません。
ええ、逆の言い方をすると「以前は怒っていた」ということですね。
そうなんです、怒ってたんですよ、私。昔は。駄目ですね。
若かったんでしょうね。(便利な言葉)
講演をやるたびにこの手の質問が飛び出すたびにわりとストレートに怒ってましたね。
「はー、うん、なるほど。モチベーションですか。モチベーションってなんだろう?英語ですよね?日本語で言うと?なんて言います?言い換えると『やる気』ってことですかね。うん、やる気が無いんならやめちまえ!今すぐ去れ!ここは戦場なんだよ、なんの準備も覚悟も持ち合わせていない人間がいていい場所じゃあないんだよ!」
「そもそもモチベーションって言葉はマイナスでしょ?基本的に下がった時にしか使わない言葉でしょうが!いくら上げたところでモチベーションはマイナスをゼロに戻すための言葉なの!わかる?」
「プラスの言葉を使うならテンションって言って!それだとゼロからどんどん加算されていくから。だからモチベーションって言葉使うのやめて!」
てな感じでしたよ。本当に。我ながら酷いですね。まったく、なんのための講演なんでしょうね。あ、昔の話ですからね?だから現在は反省して以下のような言葉をちゃんと使って伝わるように丁寧に話すようにしています。
「この世界ってのは決められた座席の取り合いの椅子取りゲームなんですよ。みんなが虎視眈々と座席を狙って奪い合い世界なんです。それをモチベーションが下がった?やる気が無い?なら今すぐその席から降りてください、そしてその席を私にくださいよ、座るから。そう思っている人間だらけの世界なんですよ。だから相手に付け入る隙を与えないためにもこの呪われた言葉『モチベーション』だけは使わない方がいいですね」
もちろん学生さん自身が別にそこまでのつもりがあって聞いてるわけでも無くて「ちょっと気分が乗らない時とかなんかショックなことがあって元気が出ない時はどうしてますか?どうしたらいいですか?」というニュアンスで聞いただけだってことは理解していますよ。
けどね。
この世界では、この世界で生きていく上で絶対に口にしてはいけない「言っちゃあオシマイなこと」ってあると思うんです。
きっと私にとっての禁忌の言葉が『モチベーション』ってことなんでしょうね、どうしても即座に反射的に「じゃあ辞めればいいんじゃない?サヨナラおつかれ」と言ってしまいます。
いや、今は言わないようにしてますよ。
けどやっぱり嫌いな言葉というか概念のひとつですね、モチベーションって。ホントにいったい誰が言い出したんでしょうね。
私は仕事でも日常でも使ったことが無い言葉なのでまったく理解が出来ないのですよ。
けどね、それでも「元気が出ない時や落ち込んだりしてショックを受けてなんか力が出ない時はどうしたらいいですか?」と聞かれた時にいつも答えている魔法の言葉を(お詫びとして)プレゼントしますね。
「少年ジャンプを読めば?嫌なこと全部忘れて元気になれますよ」
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さて、ここからはせっかくなので『もう一つの禁忌の言葉』について紹介しておこうと思います。
もちろんこの言葉も現在では決していきなり怒鳴ったり怒ったりもしない心穏やかな私ではありますが、心の底から忌み嫌う呪いのような言葉だと思っているので特に関係者の皆さまには「絶対にこの手の話は振ってこないでくださいね」という意味も込めて話しておこうと思います。
では怒らないように張り切らずにいきましょう。
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